異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています

日夏

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本編

-288- お忍び訪問

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「レン様、僕らも養子先が決まるときは、僕らに選ぶ権利があるんです」

ギーが穏やかな笑顔で僕に告げてくる。
どっちが大人か分からない対応だ。
ギーの養子先は、エイミー店の店長、マリアンさんのところだと聞いてる。

「向こうにも僕らを選ぶ権利があるけれど、実際会って話しをしてみて、僕らがこの人たちならって思えたら成立するんです。
たくさん会っても駄目な時は駄目だし、一度会っただけでもこの人たちならって思える出会いもある。
それは、相手の人たちがいくら周りからいい人たちだからって言われても、僕らが思うところとは別だ。
養子先に選ばれる時点で、世間体や金銭面でも、いい人たちだろうからね。
でも、合わないときは合わない。
無理なら無理で良いんだよ、向こうもそれで納得する。
縁がなかったーーーそれだけです」
「そっか、そうだよね」

確かに、いくらいい人たちでも合う合わないはある。
僕にとっても相手にとっても断ることは互いに良いことなのかもしれない。
勤め先というのは、人生の一部だ。
それも住み込みで、長く働いてもらう前提なわけだから、本当に人生の大部分をしめる。
努めるか否かで道が大きく変わる。

でも、その道がその人にとって一番いい道で、正しいとは限らない。
エリソン侯爵邸に勤めることだけが人生じゃないからだ。

良い身分があるなら、もっと本人に合った良い別の働き口があるはずだ。
レナードに固執しなければ、宮廷の使用人だって目指せるだろうし、その方が出会いは多いはずだ。
高位貴族はエリソン侯爵領だけじゃない。
他にもたくさんあるし、うちよりも使用人は多いはず。
そうしたら出会いもあるはずだ。

女性の中で貴族出身の女性もいたけど、やっぱりと言おうか、魔力が少ない女性ばかりだった。それに、男性は次男以降が多かったから、皆、将来が不安になっていたのかもしれない。
ならば憧れの人の傍で働きたい、そう思ったのかも。
レナードの恋人という椅子取りゲームに参加せずとも、ただ、純粋に傍で働きたいと思った人も中にはいたかもしれないなあ。

だからといって、採用するかしないかは別だけれど。
でも、そう思えば少しだけ心が軽くなる。

「だいたいさあ、レン様は優しいから、レン様が駄目と判断したならお屋敷のみんな駄目なんじゃないか?
ジュードもセオも俺等には優しいけれど、仕事の目は厳しいと思うぜ?」

ジャックが半分あきれ顔で告げてくる。
そっかな?
僕は厳しい目線で選んでいると思っていたけれど……とセオに目を向ける。

「まあ、そうですねえ。
今日の人たちが採用されたら、レン様の目を疑うくらいには、俺の中には“ない”ですね。
昨日も一昨日もおんなじ感じです。
でも、レン様の気持ちもわかりますよ。
何が良いのか悪いのか、判断が揺らいじゃってもしかたないです」

僕より9年長く生きたセオがそう言うと、説得力がある。
だから、ここに来ることを許可してくれたんだろうなあ。

「レン様は優しすぎるよ。
落としたことにも責任を感じてるのかもしれないけれど、少なくともその責任はいらないよ。
でも、選んだときの責任は少なからずレン様にあると思うから、やっぱりちゃんと納得した人を選んだらいいと思う。
僕らも養子先を選ぶときはそうしてる」

ルカが僕にしっかりと目を向けて告げてくれる。
僕はどこかで、落とした相手に対して少しだけ罪悪感を感じていたのかもしれなかった。

「うん、レン様優しい!」
「レン様好きー!」
「僕もー!」

まだ意味がちゃんと分からない年少組の子たちは、僕が優しいというルカの言葉を拾ってにこにこ笑顔で次々に答えてくれる。
嬉しいなあ。
言霊って本当にあると思う。
すごく、自信が湧いてくる。

「ありがとう、みんな」
「解決した?」
「うん、みんなのおかげで解決した。明日からも頑張れるよ」
「レン様はあまり頑張らないくらいがちょうどいいんじゃないか?芋ほりであんなに泥だらけになるくらいだし」
「そうね、無理はいけないわ」
「私たちのことを思い出せば明日も明後日も大丈夫よ」
「自信を持ってください」

ああ、なんていい子たちだろう。
涙が出そうだ。

「ありがとう」
「レン様どうしたの?どっか痛いの?泣かないで」
「大変!痛いの飛んでけー」
「ふふっ……ありがと、モニカ、エミー。どこも痛くないよ、嬉しい」


「レン様ー、そろそろお時間です」
「えー?!」
「レン様もう帰っちゃうの?」

セオが、申し訳なさそうに告げてくると、この間と同じように“えー?!”の合唱だ。
応えられなくて困っちゃうけれど、嬉しい。

「レン、子どもたちも皆レンのことが大好きよ。また是非遊びに来てくれると嬉しいわ」
「はい。僕も皆のことが大好きです。今度はちゃんと公に来ます」
「私の紹介した子はまだ会っていないかしら?」
「はい、グレース様からのご紹介があった方は、まだ会ってません」
「そう。気に入らなかったら落として全然構わないわ。紹介できたのは一人だけだけれど、それでもちゃんとすぐにでも使える者を自信を持って紹介しているわ。だから、楽しみにしていて」
「はい、ありがとうございます」

グレース様からの紹介かあ、どんな人だろう。
でも、この状況下で自信を持ってと言われる、グレース様が凄い。
期待しちゃいけないかもしれないけれど、グレース様の言う通り、会えるのを楽しみにするくらいはいいかな。

事前の手紙は多すぎるから、僕は見なくていいとセバスとアニーに言われたんだよね。
当日本人が持ってくる身分経歴書だけでいいって。
身分経歴書っていうのは、元の世界の履歴書だ。
その人の身分と経歴とスキルなんかがまとめられてる書類。
でも、形式がないから書く人によって見やすかったり見にくかったりもする。


「それじゃ……あ!ルカ、ちょっと来て」

今度会ったら、手紙を読むって約束したんだっけ。
ルカの手を取って、グレース様とみんなの輪から少し離れる。


「次でいいよ」

ルカが仕方なさそうに笑う。
でも、じゃあ、腕輪の方だけでも伝えていいかな?

「なら、一つだけ」

ルカの耳元に口を寄せて、口元を手で覆う。
いかにも内緒のお話。

でも、これなら唇も読まれないはずだ。
みんなは静かにするどころか、わいわいと元気に声を上げてるし。
聞こえるのはセオくらいだろう。

「ルカの本当の名前は、リュカーシュ。“光”じゃなくて、“リュカトニアの星”って意味だよ」
「っ!?」

リュカトニアが何か僕にはわからないけれど、ルカはびっくりした顔で僕を見る。
セオに目を向けると、セオも一瞬驚いたように息を飲んだ。
けれど、セオはすぐに何も聞いていないような表情に戻る。
ってことは、セオはリュカトニアが何を意味するか知ってるんだろうな。

ルカは、大丈夫かな?
今言ってよかったんだろうか?

「……教えて大丈夫だった?」
「う、うん、もちろん。今聞けて良かった」
「なら良かった。次来るときは、約束の手紙を読むね?」
「うんーーーレン様、ありがとう」
「どういたしまして」
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