異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています

日夏

文字の大きさ
341 / 486
本編

-341- 心の自由と感謝の気持ち

しおりを挟む
考えた結果、シャツのボタンを外して袖を通したまま、背中側のシャツをセオが捲ってくれることで落ち着いた。
前は開けたままの状態で聴診器を当てて貰う。
それなら、セオの目の届くところで、極力肌は見せない配慮は出来てると思ったからだ。

「はい、よろしいですよ。では、前を失礼します」
「……はい」

イーサン先生は、僕にたくさんついてるキスマークを目にして、眉毛の下に隠れそうになってる瞳をぱっちり見開いたのが見えた。
それでも、セオの言ったように『なんじゃこりゃ』とか『いやいやお若いですなあ』なんて言ってこなかった。
それは、極力見ない、というのもあるんだと思う。
イーサン先生は、聴診器を当てる時だけ僕の方を見て、心音を聞くときには視線を外してくれていた。
律儀な先生だ。

「はい、おしまいです。服を正してくださってけっこうです」
「はい」

セオの手を借りながらシャツのボタンを留めて、シャツもしっかりとズボンの中に入れる。
僕が服を直している間に、イーサン先生は聴診器をかばんに閉まって、代わりに輪っかのついた棒を取り出した。
元の世界にあるものだと、空港の入り口で、金属探知機に引っ掛かった後に検査されるときに使われているような大きさだ。
でも、流石異世界。
見た目はもっとファンタジーというか、変身できそうなくらいに文様が刻まれてるし、宝石……魔石かな?よくわからないけれど、輪っかの真ん中に浮かぶようについてる。

「それは何ですか?」
「これは、身体を詳しく診るのに使う補助ステッキでございます」
「ほじょすてっき」

補助ステッキか。
変身は出来ないけれど、魔道具なのは確かなようだ。

「さようでございます。こちらを通しますと身体の状態をより深層まで知ることが出来るのです。痛くもなんともございません。そのまま楽にしていてくだされ」

そう言って、そっと僕の頭の上にそのステッキをかざしてきた。
つい、上をちらっと見上げてみると、真ん中についてた石が、鈍い緑色だったのに澄んだ緑色になってるし、くるくるとゆっくり回ってる。
とっても不思議な光景だ。

「では、目を閉じて───はい、開けて結構です。では立ち上がってください」
「はい」

そういって、全身にそのステッキを体に沿うようにかざしていくけれど、澄んだ緑色のままだし、変わらずくるくるとゆっくり回ってるだけだった。
良いのか悪いのかの基準が分からない。

「はい、おしまいです。どうぞおかけください」
「はい」
「これでおしまいです。ご心配されずともレン様はとっても健康そのものです。どこも悪いところはございません」
「よかった」

先生はステッキを仕舞ってかばんを閉じ、僕の対面に座ってじっと僕を見る。
なんだろう?何か気になることがあるのかな?

「気を付けることはございますから、聞いてくだされ」
「はい」
「レン様はとても魔力が高うございますから、毎日たくさんアレックス様からの魔力を貰ってください。
貰いすぎくらいが丁度良いですな」
「え……」

魔力をたくさん?貰いすぎくらいが丁度いい?
口付けだけじゃ足りないよね、それ。
毎日たくさんえっちしてくださいって言ってるようなものだ。

瞬時に顔が熱くなる。
きっと僕は真っ赤になってるに違いない。

「神器様は、神殿から授かる魔道具でお体を調整される方が多いですが、レン様は外されておりますね」
「はい。来てすぐにアレックスが外してくれました。……あれは、付けたほうがいいんですか?」

もしイーサン先生がつけたほうが良いと言われても、もう絶対つけたくない。

「いいえ、あれは外すべきだと思います。ああ、あくまで一個人の私の考えです」
「はい」
「魔道具によって無理矢理産道を開いている状態を保つものですから、少なからずお身体には負担があるものです。
ですが、お相手の魔力譲渡も魔法具によって少しばかり調整されておりますし、繋がりやすうございます。
房事の際には、毎回きちんと産道を開いてから行ってください、時間がかかってもです」
「はい。アレックスはいつもそうしてくれています」

イーサン先生が揶揄ったりしない上に真剣に話してくれるから、僕の顔も徐々に熱が冷めてきた。
僕の答えに、イーサン先生はうんうんと頷いてくれたよ。

にしても、時間がかかっても、か。
一番最初の時よりは、後ろが濡れるのに時間がかからなくなってきた気がする。
でも、何もしないで濡れるわけじゃないし、アレックスはあれからもナイトポーションを一度口に含んでから後ろを解してくれてる。

「アレックス様の魔力を常に満たしていれば、小さな不安が大きくなることも減るでしょう。
通常、恋人同士や夫婦であっても、お相手の魔力が満たされないと情緒不安定になる方もおられます。
神器様であられるレン様は、その傾向が強く出られます。
あとは、小さな不安や蟠りはそのままにせず、出来る限り無くすことも大切ですぞ」
「……はい」

心当たりはある。
いまでもちょっともやもやしてるくらいだ。

「話されますかな?神器さまの出産もいくつも経験ございますゆえ、安心してご相談くだされ」
「レン様、もしアレックス様に直接言えないことでも、俺が聞きますからね?遠慮しないでなんでも言ってください。
もし、解決しないことでも、言えば少し楽になることってあると思いますから」
「うん……じゃあ、イーサン先生が診た神器様は、みんな所有者を好きになってましたか?所有者の人は、神器様を愛していましたか?」

「ふむ……」
「僕は今、神器様に関する本を読んでます。そこに、所有者と神器様は互いに惹かれ合うって書いてありました。
神器様になったからこそアレックスに出会えたのだけれど、もし、僕が神器様でない状態でアレックスに会っていたら、違ったのかなって思って。
ちょっと、もやもやしてるんです。
アレックスは僕を愛してくれてるし、僕もアレックスを、愛してます。でも、それはもしかしたら神様にそうなるように作られたのかなって、僕の身体が変わったように、心までそうなるように作られたのなら、本物じゃないのかなって思っちゃって。
アレックスのことは信じてますし、僕の気持ちも嘘じゃないって思うんですけど、ちょっと、まとまってないですけど……それが、もやもやしてます」

イーサン先生は、時折頷きながら僕の話を聞いてくれた。

「その本は、なんていう本ですかな?」
「あ、ちょっと待ってください───ありがと、セオ。これです」

セオが僕の読んでいる本を取ってくれた。
それをイーサン先生に渡すと、挟まれてる栞を目にして小さく頷いた。

「まだ前半、途中ですな」
「はい」
「私もこの本は読んだことがございます。ネタばらしになりますが、よろしいですかな?今、お話した方が良いかと思いました」
「はい」

「この本には“所有者と神器様は互いに惹かれ合う、そう言われているが、必ずしもそうではないのだ”と後々書かれております」
「え……」

そうなの?とセオを見上げると、セオも申し訳なさそうな顔をして頷いてくれる。

「俺も爺さまも一気に読んじゃったのがいけなかったですね。その本は体験談ですから、結論が後から書かれてるものがいくつかあります」
「そっか……そうなんだ」
「レン様、この本は良い本ではありますが、一つの体験談、お話ですぞ」
「ん?」
「本当にあった話ではございますが、人は皆それぞれ違った思いを持ち、違った行動を起こすものです。同じ境遇においても、人が違えばまた、それは行動も心境も変わってくるものです。物語として楽しむのが良いかと思われます。身体の構造においては、参考にすると良いでしょう。でも、お心は別ですぞ」
「あ……」

イーサン先生の言う通りだった。
僕はこの本に出てくる神器様じゃないし、アレックスもこの本の作者じゃない。

「レン様はとても感受性が高いようですな」
「元の世界では、役者をしていました」
「そうですか……心残りが、おありですか?」
「ない、と言ったら嘘になります。やっと売れて、父と母、それから支えてくれた人たちに恩返しが出来る、そう思っていたときでしたから。
急にこちらに落とされたし、凄く、心配されてると思います。
もう会うことが出来ないと思うと……寂しい気持ちもあります」

元の世界のことを、全く忘れたわけじゃない。
考えないようにしていた、というのはある。
戻れないっていうのがわかってるからだ。
この世界で、前を向いてやっていくしかない、そう思ってるからだ。
やりたいことも、僕に出来ることも、支えてくれる人も支えたい人もある。
必要にされてる、大事にされてる、そう思う。

「それでも、戻れない以上、前を向いて、やってくしかないって思います。
やれることもやりたいこともたくさん出来たし、周りにいるみんな、優しくていい人たちでとても歓迎してくれています。
なによりアレックスに出会えてよかったです。
初めて人を好きになることが出来たので。
僕にとっては本当に、それこそ人生の中で一番良いことだったと思えるくらい」

うんうん、とイーサン先生は頷いて聞いてくれた。

「レン様は愛されて育っておいでですな。私がお会いした神器さまは、元の世界で境遇が悪う方が多いようでした。
ですが、やはり、お心は人それぞれ。
所有者の方へお心まで許されていない方も、ご夫人と相愛な方も、勿論、所有者であられる方を愛する方も。
お心は、自由でございますぞ。
ご自身のお心を一番に信じて、大切にされると良いでしょう。
そして心の中で、ご両親や大切な方へ、今ご自身が幸せだと感じていることや感謝をお伝えすると良いでしょう」
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。 「お前との婚約は破棄だ」  ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!? ※他の投稿サイトにも掲載しています。 ※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

処理中です...