異世界に召喚された二世俳優、うっかり本性晒しましたが精悍な侯爵様に溺愛されています

日夏

文字の大きさ
364 / 486
本編

-364- 学校の問題

しおりを挟む
改善したい主な内容は、以下の5つだった。

その一、教師のなり手が少ない上に入れ替わりが数度あったこと。
その一、不登校の子供たちへの対応。
その一、子供たちの学力の差について。
その一、教師の指導力の差について。
その一、学習内容について。

ワグナー子爵家では、学校のことについては夫人であるシャーロット様に一任されているらしい。
学園長がワグナー子爵の親戚筋なこともあって、アレックスに相談する前にシャーロット様に相談しているようだ。
学校はエリソン侯爵家管轄、と聞いていたけれど、全てに目を配るのは無理だから、何か問題があったら解決するのは勿論だけれど、その前に
各領地を任されている傘下の貴族たちが相談に乗って解決できることは解決しているようだ。

それと、親への理解。
殆どの親は子供に学校を通わせているけれど、中には必要ないと家の仕事を手伝わせている親がほんの僅かいるらしい。
学校が嫌いだからとか、いじめにあっていきたくないからではなく、行く必要がないと言われて来ないのだそう。
“学校に通わなければならない”という規則じゃなくて、“すべての領民の7歳から15歳までの子供は学校に通うことが出来る”というのが仇になっているようだ。

というのも、お金があるお家は、学校に通うことも出来るけれど住み込みの家庭教師を雇うのが一般的だからだ。
アレックスも家庭教師で学んだ後に、帝都にある帝国立学園に通ったらしいし、そこの入学基準は到底学校の学びだけじゃ追い付かない。
魔力がけた外れに大きいとか、なにか特殊なスキルを持っているとか、そういった魔法特化の枠もあるみたいだから一概にとは言えないのだけれど。
だから、“通わなければならない”じゃなくて、“通うことが出来る”という内容になってる。

この世界、圧倒的に情報収集がしにくい。
元の世界であれば、ネットでなんでも調べられる時代だし、欲しい情報がすぐに入る。
親の言うことが全て正しいことじゃない、って言うのは割と早い段階で気が付けるし、自分の家の状態や親からの扱いが特殊だっていうことも気が付ける。
けれど、この世界は関わる大人が少なければ、それが全てだと思ってしまうかもしれない。
読み書き計算が出来なくても問題ない、と感じるのは、農民だ。
まあ、商人にはいないっていうのは当然だよね。

教師を辞めたものは、元々家庭教師として働いていた者だった。
家庭教師とは違い、子供たちの年齢で契約が切れることはないことを理由に教師になったものの、想像以上に大変で辞めていった、と。
そりゃあ、元からきちんとしつけられて育った裕福な子供一人を教えるのと、自由にのびのび育った子供たちを大勢教えるのとは、後者の方が圧倒的に難しい。
教鞭に立つというのは、そういうことだ。
食い扶持潰れないという理由だけで務まるものじゃない。

「先生たちの実習期間はどのくらいあるの?」
「……といいますと?」
「教師になる前のお試し期間だよ」
「なる前の……」
「ないの?」
「はい、ございません」

学園長に聞くと、前の世界みたいな教育実習生というのは受け入れしていないみたいだ。
というか、そういう制度自体がないらしい。

「子供たちが学校に慣れた6月頃から、一カ月くらい実習生として受け入れたらどうかな?
お給料は出ないけれど……うーん、こっちの世界だとちょっぴりでも出してもいいのかな……そこは、要相談で。
先生たちの協力が必要だけれど、実際に教鞭に立つ期間があれば現実と理想の違いも少しは埋まるかもしれないよ?
学校の先生になる試験は筆記だけ?」
「面談もございます」
「なら、実習を受けた人は受けなかった人より大きく加点することにしたらいいかなあ。
実習生が条件にすると時間を縛っちゃうし。
子供たちも、全く知らない先生より一カ月でも教えてくれた先生の方が馴染みやすいと思うんだ」


「なるほどね!」
学園長が目を丸くして僕を見る代わりにエリー先生が声を上げた。

「まだ半年以上あるから十分体制を整える期間はあるね。
これは、僕のところも検討したい……というか、領全体で受け入れ態勢を整えたほうが良いね」
「わかりました。アレックスにレポートを出して、可能なら僕の方で動きます。
一度預からせてもらえる?」
「勿論でございます」

「学校に薬師を置くことを検討して、薬師ギルドの方でも話が進んでいるようなのだけれど、もしかしてそれもレン様が?」

シャーロット様が驚きを隠せない様子で僕に聞いてくる。

「はい。元は、『領内に薬師を増やすには何が出来るか?』というのが課題でした。
家令にレポートにしてアレックスに提出することを勧められて。
今実際動いているのはアレックスですが、僕も少しずつ侯爵夫人としての仕事が出来たらと思ってます」

ちらりと左後ろのセオに目を向けるとセオは良い笑顔で一度頷いてくれた。
思わずつられて僕も笑顔になる。
駄目なら、セオはこの状況でも口を挟んでくれるはずだ。
セオの表情が明るいなら、選択として間違っていないと思う。

「授業参観はある?」
「授業サンカン……と、いいますと?」
「子供たちが勉強している様子を親が見に来ることだよ」
「ない……ですね」
「保護者面談、親と教師とが面談することはある?」
「いいえ」
「因みに、家庭訪問は?」
「不登校の子供たちや学びが遅い子供たちに対しては、受け持ちの教師に訪問を任せています」
「なるほど」

だとしたら、当たってしまった先生の負担が大きい。

「子供たちの親だと、学校に通っていない人も多いでしょう?
だから、一年に一回は、自分の子供が勉強をしている様子を見学出来る、“授業参観”と、担任の先生と話が出来る保護者面談を設けたらどうかな?
孤児院の子供たちは、先生が孤児院に行く家庭訪問に変えるのが良いと思う。
先生たちの負担は増えるかもしれないけれど、親への理解は深まると思うんだ」

「確かにそうですね。必要だと学校に通わせている者より、『学校にいてくれれば安心だ』とか『昼食の心配がいならない』だとかの理由で通わせている親の方がまだ多いようですし」
「そっか……子供たちが外で学習する機会はある?」
「外で?いいえ」
「外部から、一日講師を呼ぶことは?」
「ございません」

「なら、一年に一度、子供たちの校外学習として、工房やギルドの見学をするのはどうかな?」
「ですが、7歳の子供たちのあの数を教師が連れ出すには、教師の負担が大きいと思われます」
「そこは、高学年の子供たちと一緒に行けばいいんじゃないかな?
お姉さんお兄さんに、一人ずつ一緒に歩いてもらうのはどう?」
「学園長、各ギルドと工房に打診し自衛団の協力を仰ぎますので、来年からでもすぐに実施しましょう?
逆に学校に招いて子供たちへ話をしてもらう機会も設けましょう」
「それはいいね!私も早速持ち帰るよ。あー……各子爵宛に連名で手紙を出しちゃおう、そうしようそうしよう」

「それと、学校の卒業生で見習いの後に本職になった子たちが母校の生徒に話をする機会もあると良いと思います」

僕の発言に、学園長だけじゃなくて、エリー先生とシャーロット様も目を丸くしてくる。

「私は定年した暇なご老人を集めようと思っていたけれど……そっか、そうだね、やー盲点だったよ」
「私もその道に長い者をと考えていましたが……学校の必要性を考えると重要ですわね」
「学校の体制が整っていないところはそっちが先の課題になると思います。
ですが、ある程度整っているところは……こちらの学校はとても設備が整っていますから、先駆けて新しいことを始めていくのが良いんじゃないかと」

「そうね……平民の子供たちへの教育に力を入れていない方々も、重い腰を上げてくれるかもしれません。
領内の人の流れも変わるかもしれませんね」
「確かにねえ」

聞けば、若い人は帝都や活気ある街に流れがちだという。
帝都はちょっと……と思っている人たちも、領都なら、あるいは、フィーテルなら、と環境が良い方に流れていく。
エリソン侯爵領は領内なら難しい手続きとかは必要なく住む場所を変えられるみたいだ。
お金はある程度必要みたいだけれど、それだって家や店を持たない住み込みや、宿屋での長期滞在ならより安くすむ。
都会に人が流れるのは、元の世界とあまり変わらないのかもしれないなあ。

「ここ最近人が多くなってきましたし、畑と森はそのままに、街の開発と整備を進めています。
あの新しい学校に子供を通わせたいと思う人も出てきました。
子供の将来を考えて、と移り住む方もいますわ。
平民の学校というのは、力を注ぐべきところです」
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

騎士団長様、クビだけは勘弁してくださいっ!

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。 「お前との婚約は破棄だ」  ある日王城で開かれたガーデンパーティーの警備中婚約者に婚約破棄を言い出された。テレシアは承諾したが、それを目撃していた先輩方が見かねて城下町に連れていきお酒を奢った。そのせいでテレシアはべろんべろんに酔っ払い、次の日ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服では……!? ※他の投稿サイトにも掲載しています。 ※この作品は短編を新たに作り直しました。設定などが変わっている部分があります。(旧題:無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜)

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る

桜城 寧
BL
【第1部完結しました。第2部更新予定です!】 処刑された記憶とともに、BLゲームの悪役会計に転生したことに気付いた主人公・カイル。 処刑されないために、チャラ男の仮面を被り、生徒会長に媚びを売り、能力を駆使して必死に立ち回る。 だが、愛された経験がない彼は、正しい人との距離感を知らない。 無意識の危うい言動は、生徒会長や攻略対象、さらには本来関わらないはずの人物たちまで惹きつけ、過剰な心配と執着、独占欲を向けられていく。 ——ただ生き残りたいだけなのに。 気づけば彼は、逃げ場を失うほど深く、甘く囲われていた。 *カクヨム様でも同時掲載中です。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

処理中です...