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本編
-412- ピアス
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「互いにつけるなら、明日の朝の方が良いか……」
「え?」
アレックスがぼそりと呟く。
お父様がにやにやと見守る中でお帰りなさいの口づけをして、アレックスがピアスとブローチを持って帰ってきた。
お父様がさっき言ったように、貴族の家が数個買えちゃうようなピアスとブローチは、アレックスの瞳の色そっくりな濃く澄みきったエメラルドで、凄く綺麗だった。
本当に綺麗で目元が熱くなったら、泣かれるのかと思ったアレックスが抱きしめてくれたんだ。
でも、そのくらい感動した。
早速互いにつけられるかなって思ったのだけれど、アレックスが明日の朝の方が良いと言い出した。
今互いにあるんだし、お父様もいるし、僕は今すぐにでもつけたいし、つけて欲しい。
「今じゃ駄目なの?」
「……レンは、互いにあけ合うのは嫌か?」
「ん?互いにあけ合うの?別に───」
「アレックス様、ちょっと」
「なんだ」
別にいいよ、と言おうとしたところで、セバスが咎めるような口調で口を挟んできた。
互いにと言うか、どうやってつけるのか自体、僕はちゃんと聞いていなかった。
魔力であけるっていうのだけは聞いていたし、あける時にちゃんと説明するので安心してくださいって言われたくらいで。
このピアス、針もなければキャッチもない。
互いにつけ合うのはいいけれど、あけたことのない僕がアレックスにあけていいのかな、とは思う。
てっきり医者か、もしくはセバスとか、慣れた人があけるのかと思ってたんだけど、違うみたいだ。
アレックスとセバスは僕のことを考えてか、背中を向けてぼそぼそと言い合ってる。
ちょっと時間がかかりそうかな。
ピアスかあ。
ピアスは、元の世界だとファッションの一部だったから、あけている子も多かった。
母さんもあけていた。
僕は役でピアスをつけることはあったけれど、絶対穴はあけたくなかったから磁石のピアスもどきやならしたことがある。
あけたくなかった理由は、時代劇で良い役にあたりたい、と思ったからだ。
折角殺陣を習っているんだし、僕みたいな中世的な人間でもいつかその機会があるはずだ、と思っていた。
引きはともかく、アップでピアスの穴があったら、役としておかしい。
だからあけない、そう決めていた。
その役は、巡ってこない合間にこちらに来てしまった。
『蓮君はピアスあけてないんだね?』と聞かれたら、『時代劇に出たいんです』っていう主張はしてきたし、マネージャーも推してくれてたんだ。
縁を結ぶ目的で、時代劇の映画では単発で役を貰ったことがある。
出演時間は一分半くらいの端役だ。
台詞は三言。
でも、三言でも台詞があることがありがたいと思ったし、三言で裏も表も演じられる商人役で、印象に残れば次に繋がるかも知れない、と思った。
それに、殺陣を映像で披露することはなかったんだけど、師範のお弟子さんがたくさん出演していたから、休憩時間に相手をして貰えて、とても勉強になったんだ。
遊びで撮ってもらった映像は凄くかっこよかったんだけど、実際僕が上手いんじゃなくて、斬られ役のお弟子さんたちが上手ーく僕を魅せてくれているんだとわかった。
あーやっぱり殺陣も活かしたいな。
こっちじゃ無理かな?……って、いけない、今は殺陣じゃなくてピアスの話だよ。
正直ズボラな僕は、ピアスホールが完成する前のケアだとかが疎かになりそうだ。
ピアス自体、性格的にも向いていない。
でも、こっちの世界だと全部お任せですんじゃうから、早く互いにつけたいな、くらいにしか思ってなかったんだ。
明日の方が良い理由があるんだろうなあ。
前にセオに、『僕、ピアスの穴あけてないけど大丈夫かな?』と言ったら、『空いていた方がびっくりしちゃうので大丈夫です』って言われたし、ピアスって言っても、元の世界のものとは全く別物だと思った方が良いよね。
まだかな?と思って、セオを見上げると複雑そうな顔をしてる。
「セオ、互いにピアスをあけ合うのは普通しないの?」
「普通はしませんね、自分であけるものです」
「元の世界だと病院でお医者さんがあけてたけど、自分であけるのが普通なの?」
「ですね。つけた人にしか取れませんし、魔力の馴染みが悪いと酷い痛みが生じます。互いにあけ合うのは干渉が過ぎると危険視されていますね」
「そっか。明日の方が良いのはなんで?」
「明日の朝なら互いに魔力の馴染みが良く集中力にも欠けていない状態だからですよ。理由もいりますか?」
「ううん、いらない」
えっちした次の朝の方が良いってことか。
チラッとお父様を見やると、にやにやとした顔を向けてくる。
さっきからお父様は渚君の話、主に僕のつまり“最推し蓮君のここが良い”っていう話なんだけど、それをずっと傍で聞いてたはずなのに。
「ヤってきてもいいぞ?」
「流石に今はしないよ!」
「キスでもしてきたらどうだ?」
「それで変わる?」
「まあ変わるんじゃないか?」
「お父様はピアスを互いにあけ合うことは賛成なの?」
「本人同士がそれで良いなら良いんじゃないか?それに、あいつは兎も角、お前の方はその方が安定するだろう」
「そっか」
安定するっていうのは、神器としての僕の心、つまり、アレックスの魔力が満たせるってことだ。
「それに痛みが強く出るとしたら、お前じゃなく魔力が弱いあいつの方だ。それを承知で言ってるんだ、好きにさせてやればいい」
「セオはどう思う?」
セバスが引かないのに、セオが反対しないのが気になった。
「まあ、普通はしないですね。しないんですけど……」
「あ、そっか。ヴァンならきっと互いにあけたいって言うよね」
言うというか、もう言ってるかもしれない。
反対しないのはそれでか、と妙に納得しちゃったよ。
「え?」
アレックスがぼそりと呟く。
お父様がにやにやと見守る中でお帰りなさいの口づけをして、アレックスがピアスとブローチを持って帰ってきた。
お父様がさっき言ったように、貴族の家が数個買えちゃうようなピアスとブローチは、アレックスの瞳の色そっくりな濃く澄みきったエメラルドで、凄く綺麗だった。
本当に綺麗で目元が熱くなったら、泣かれるのかと思ったアレックスが抱きしめてくれたんだ。
でも、そのくらい感動した。
早速互いにつけられるかなって思ったのだけれど、アレックスが明日の朝の方が良いと言い出した。
今互いにあるんだし、お父様もいるし、僕は今すぐにでもつけたいし、つけて欲しい。
「今じゃ駄目なの?」
「……レンは、互いにあけ合うのは嫌か?」
「ん?互いにあけ合うの?別に───」
「アレックス様、ちょっと」
「なんだ」
別にいいよ、と言おうとしたところで、セバスが咎めるような口調で口を挟んできた。
互いにと言うか、どうやってつけるのか自体、僕はちゃんと聞いていなかった。
魔力であけるっていうのだけは聞いていたし、あける時にちゃんと説明するので安心してくださいって言われたくらいで。
このピアス、針もなければキャッチもない。
互いにつけ合うのはいいけれど、あけたことのない僕がアレックスにあけていいのかな、とは思う。
てっきり医者か、もしくはセバスとか、慣れた人があけるのかと思ってたんだけど、違うみたいだ。
アレックスとセバスは僕のことを考えてか、背中を向けてぼそぼそと言い合ってる。
ちょっと時間がかかりそうかな。
ピアスかあ。
ピアスは、元の世界だとファッションの一部だったから、あけている子も多かった。
母さんもあけていた。
僕は役でピアスをつけることはあったけれど、絶対穴はあけたくなかったから磁石のピアスもどきやならしたことがある。
あけたくなかった理由は、時代劇で良い役にあたりたい、と思ったからだ。
折角殺陣を習っているんだし、僕みたいな中世的な人間でもいつかその機会があるはずだ、と思っていた。
引きはともかく、アップでピアスの穴があったら、役としておかしい。
だからあけない、そう決めていた。
その役は、巡ってこない合間にこちらに来てしまった。
『蓮君はピアスあけてないんだね?』と聞かれたら、『時代劇に出たいんです』っていう主張はしてきたし、マネージャーも推してくれてたんだ。
縁を結ぶ目的で、時代劇の映画では単発で役を貰ったことがある。
出演時間は一分半くらいの端役だ。
台詞は三言。
でも、三言でも台詞があることがありがたいと思ったし、三言で裏も表も演じられる商人役で、印象に残れば次に繋がるかも知れない、と思った。
それに、殺陣を映像で披露することはなかったんだけど、師範のお弟子さんがたくさん出演していたから、休憩時間に相手をして貰えて、とても勉強になったんだ。
遊びで撮ってもらった映像は凄くかっこよかったんだけど、実際僕が上手いんじゃなくて、斬られ役のお弟子さんたちが上手ーく僕を魅せてくれているんだとわかった。
あーやっぱり殺陣も活かしたいな。
こっちじゃ無理かな?……って、いけない、今は殺陣じゃなくてピアスの話だよ。
正直ズボラな僕は、ピアスホールが完成する前のケアだとかが疎かになりそうだ。
ピアス自体、性格的にも向いていない。
でも、こっちの世界だと全部お任せですんじゃうから、早く互いにつけたいな、くらいにしか思ってなかったんだ。
明日の方が良い理由があるんだろうなあ。
前にセオに、『僕、ピアスの穴あけてないけど大丈夫かな?』と言ったら、『空いていた方がびっくりしちゃうので大丈夫です』って言われたし、ピアスって言っても、元の世界のものとは全く別物だと思った方が良いよね。
まだかな?と思って、セオを見上げると複雑そうな顔をしてる。
「セオ、互いにピアスをあけ合うのは普通しないの?」
「普通はしませんね、自分であけるものです」
「元の世界だと病院でお医者さんがあけてたけど、自分であけるのが普通なの?」
「ですね。つけた人にしか取れませんし、魔力の馴染みが悪いと酷い痛みが生じます。互いにあけ合うのは干渉が過ぎると危険視されていますね」
「そっか。明日の方が良いのはなんで?」
「明日の朝なら互いに魔力の馴染みが良く集中力にも欠けていない状態だからですよ。理由もいりますか?」
「ううん、いらない」
えっちした次の朝の方が良いってことか。
チラッとお父様を見やると、にやにやとした顔を向けてくる。
さっきからお父様は渚君の話、主に僕のつまり“最推し蓮君のここが良い”っていう話なんだけど、それをずっと傍で聞いてたはずなのに。
「ヤってきてもいいぞ?」
「流石に今はしないよ!」
「キスでもしてきたらどうだ?」
「それで変わる?」
「まあ変わるんじゃないか?」
「お父様はピアスを互いにあけ合うことは賛成なの?」
「本人同士がそれで良いなら良いんじゃないか?それに、あいつは兎も角、お前の方はその方が安定するだろう」
「そっか」
安定するっていうのは、神器としての僕の心、つまり、アレックスの魔力が満たせるってことだ。
「それに痛みが強く出るとしたら、お前じゃなく魔力が弱いあいつの方だ。それを承知で言ってるんだ、好きにさせてやればいい」
「セオはどう思う?」
セバスが引かないのに、セオが反対しないのが気になった。
「まあ、普通はしないですね。しないんですけど……」
「あ、そっか。ヴァンならきっと互いにあけたいって言うよね」
言うというか、もう言ってるかもしれない。
反対しないのはそれでか、と妙に納得しちゃったよ。
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