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プロローグ:暗殺直前、絶体絶命の王子
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王座の間に、通された。一人だけで。
レイニー・ローウッズは、周囲を見回した。
まだ、誰もいない。
だが、気配は感じる。多くの人間の気配だ。
しかも、殺気がこもっている。
まずい状況だ。
突然、号令が聞こえた。
兵士の足音と共に、多数の槍兵が現れた。
あっという間に、包囲された。前後左右に二個百人隊ずつなので、計八百名だ。
二階席を見上げた。
弓兵の配置が、完了していた。左右の二階席に、五十名ずつ。
とても、まずい。弓兵は。特に、二階席からだと。狙い撃ちにされてしまう。遮蔽物は、何もない。
金属音が聞こえた。鉄の鎧がガチャガチャ鳴る音だ。
現れた。重装歩兵一個百人隊が。
これも、とてもまずい。重装歩兵の鉄の鎧は、とても分厚い。ふつうの剣や槍や弓矢は、通用しない。
重装歩兵一個百人隊は、王座の前に展開した。レイニーから見ると、正面の槍兵隊の向こう側だ。
登場した。ローウッズ国王が。中年婦人に支えられて。
彼女は、サマンサ・バレリー伯爵令嬢。国王の愛人だ。自分が産んだ息子を王位継承者とするために、レイニーの命を狙い続けている。レイニーが生まれた直後から。
ローウッズ国王が、王座に着席した。サマンサ・バレリーが、その脇に立った。
深呼吸してから、レイニーが尋ねた。朗々と響き渡る大きな声で。
「父上! これは、どういうことですか?」
だが、国王は答えない。
レイニーが、言葉を続けた。
「父上が、母上と私を愛していないことは、最初から分かっています。政略結婚ですから、愛情がなくても、しかたありません。しかし!」
声を張りあげた。レイニーが。
「私が暗殺されたら、ブライトウッズ王国との関係は破綻します。有事において支援を受けられなくなり、外交的に孤立します。それを承知で、父上までもが、私を殺そうとするのですか?」
サマンサ・バレリーが、叫んだ。レイニーに向かって。
「あなたの悪運も、ここまでよ! 最精鋭の千人隊に囲まれて、あなたは、ひとりぼっち。いくら叫んでも、誰も助けに来ないわよ!」
憮然とした表情で、レイニーが答えた。
「十二歳の少年相手に、千人隊を使うとは。非道と言うより、外道ですね。外道と言えば、私が赤んぼうの時に刺客を送り込んだのは、あなたですか? それとも、あなたの父上ですかね」
「父よ。父も、兄も、失敗した。あなたの暗殺に。それは、あなたが一人じゃなかったから」
彼女が、表情をゆがめた。笑っているのか、それとも、すでに勝ったと思って愉悦に浸っているのか。
「しょせんあなたは、一人では何もできない無能な子ども。たった一人で、武器も持たずにノコノコと出てくるなんて。おばかさんね」
さらに、彼女が言葉を続けた。
「泣いて命乞いをするなら、命だけは助けてあげるかもしれないわよ」
「嘘ですね」
即答した。レイニーが。
視線を、彼女から国王に向けた。
「父上! 父上は、私を殺すつもりですか? 本当にそれで、いいのですか?」
だが、答えなかった。国王は。
サマンサ・バレリーが、千人隊長に呼びかけた。
「殺しなさい! あの腹ただしい外国女の息子を!」
千人隊長は、黄金の装飾をあしらった鎧兜に身を固めている。一目で、上級貴族の一族であることが分かる。
「姉上、本当に、いいんですか。殺すと外交問題になるのでは?」
どうやら千人隊長は、サマンサの弟のようだ。となると、サマー・バレリーだ。バレリー伯爵家の次男だ。
「だいじょうぶよ。対外的には、山賊討伐に失敗して討ち死にしたことにするから」
サマンサが、弟に呼びかけた。
「さあ、殺しなさい! あの女の悔しがる顔が、目に浮かぶわ」
それから、視線をレイニーに向けた。毒々しげな表情で、叫んだ。
「性悪な外国女の息子よ! 生まれてきたことを後悔しながら、絶望にうちひしがれて死になさい!」
重武装の千人隊に囲まれて、絶体絶命の窮地。
味方なし。武器なし。鎧兜も盾もない。
だが、きっぱりと宣言した。レイニーは。
「後悔しながら死ぬのは、あなたたちです。さあ、終止符を打ちましょう。十二年間の因縁に」
レイニー・ローウッズは、周囲を見回した。
まだ、誰もいない。
だが、気配は感じる。多くの人間の気配だ。
しかも、殺気がこもっている。
まずい状況だ。
突然、号令が聞こえた。
兵士の足音と共に、多数の槍兵が現れた。
あっという間に、包囲された。前後左右に二個百人隊ずつなので、計八百名だ。
二階席を見上げた。
弓兵の配置が、完了していた。左右の二階席に、五十名ずつ。
とても、まずい。弓兵は。特に、二階席からだと。狙い撃ちにされてしまう。遮蔽物は、何もない。
金属音が聞こえた。鉄の鎧がガチャガチャ鳴る音だ。
現れた。重装歩兵一個百人隊が。
これも、とてもまずい。重装歩兵の鉄の鎧は、とても分厚い。ふつうの剣や槍や弓矢は、通用しない。
重装歩兵一個百人隊は、王座の前に展開した。レイニーから見ると、正面の槍兵隊の向こう側だ。
登場した。ローウッズ国王が。中年婦人に支えられて。
彼女は、サマンサ・バレリー伯爵令嬢。国王の愛人だ。自分が産んだ息子を王位継承者とするために、レイニーの命を狙い続けている。レイニーが生まれた直後から。
ローウッズ国王が、王座に着席した。サマンサ・バレリーが、その脇に立った。
深呼吸してから、レイニーが尋ねた。朗々と響き渡る大きな声で。
「父上! これは、どういうことですか?」
だが、国王は答えない。
レイニーが、言葉を続けた。
「父上が、母上と私を愛していないことは、最初から分かっています。政略結婚ですから、愛情がなくても、しかたありません。しかし!」
声を張りあげた。レイニーが。
「私が暗殺されたら、ブライトウッズ王国との関係は破綻します。有事において支援を受けられなくなり、外交的に孤立します。それを承知で、父上までもが、私を殺そうとするのですか?」
サマンサ・バレリーが、叫んだ。レイニーに向かって。
「あなたの悪運も、ここまでよ! 最精鋭の千人隊に囲まれて、あなたは、ひとりぼっち。いくら叫んでも、誰も助けに来ないわよ!」
憮然とした表情で、レイニーが答えた。
「十二歳の少年相手に、千人隊を使うとは。非道と言うより、外道ですね。外道と言えば、私が赤んぼうの時に刺客を送り込んだのは、あなたですか? それとも、あなたの父上ですかね」
「父よ。父も、兄も、失敗した。あなたの暗殺に。それは、あなたが一人じゃなかったから」
彼女が、表情をゆがめた。笑っているのか、それとも、すでに勝ったと思って愉悦に浸っているのか。
「しょせんあなたは、一人では何もできない無能な子ども。たった一人で、武器も持たずにノコノコと出てくるなんて。おばかさんね」
さらに、彼女が言葉を続けた。
「泣いて命乞いをするなら、命だけは助けてあげるかもしれないわよ」
「嘘ですね」
即答した。レイニーが。
視線を、彼女から国王に向けた。
「父上! 父上は、私を殺すつもりですか? 本当にそれで、いいのですか?」
だが、答えなかった。国王は。
サマンサ・バレリーが、千人隊長に呼びかけた。
「殺しなさい! あの腹ただしい外国女の息子を!」
千人隊長は、黄金の装飾をあしらった鎧兜に身を固めている。一目で、上級貴族の一族であることが分かる。
「姉上、本当に、いいんですか。殺すと外交問題になるのでは?」
どうやら千人隊長は、サマンサの弟のようだ。となると、サマー・バレリーだ。バレリー伯爵家の次男だ。
「だいじょうぶよ。対外的には、山賊討伐に失敗して討ち死にしたことにするから」
サマンサが、弟に呼びかけた。
「さあ、殺しなさい! あの女の悔しがる顔が、目に浮かぶわ」
それから、視線をレイニーに向けた。毒々しげな表情で、叫んだ。
「性悪な外国女の息子よ! 生まれてきたことを後悔しながら、絶望にうちひしがれて死になさい!」
重武装の千人隊に囲まれて、絶体絶命の窮地。
味方なし。武器なし。鎧兜も盾もない。
だが、きっぱりと宣言した。レイニーは。
「後悔しながら死ぬのは、あなたたちです。さあ、終止符を打ちましょう。十二年間の因縁に」
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