世界中が殺しに来る

蛇崩 通

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<第二章 第3話 封印せしもの、その名は……>

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  <第二章 第3話>
 サトルが、思わずうめいた。
 ミコが、ささやくように尋ねた。
 「あなたには、なにが見える?」
 ミコが、うながした。
 「見えたものを、正直に答えて」
 サトルが声を、絞り出した。
 「顔が、見える」
 「誰の顔?」
 苦しそうにサトルが、答えた。
 「ボクの顔……」
 その瞬間、まくり上げていたセーラー服を、ミコが下ろした。
 暗黒の深淵は、黒いセーラー服の布地で、覆い隠された。
 姿勢をかがめていたサトルが、顔を離した。ミコの腹から。
 ミコを見ると、あやしげな笑みを浮かべていた。
 「半分だけ正解よ」
 「なぜボクの顔が、君のおなかの中に見えるの?」
 「ミコって呼んで」
 「えっ?」
 「君、なんて呼び方、他人行儀だわ」
 サトルは、内心思った。そんなことよりも重要なことがあるだろ、と。
 だが、口には出さなかった。
 「ミコ、なぜ……」
 そこまで言ったところで、ミコがさえぎった。
 「あたしの胎内に封印しているのは、将門まさかどの首よ」
 衝撃を、受けた。サトルは。思わず、大きな声を出した。
 「将門って、あのたいらの将門まさかど?」
 「ええ、そうよ」
 「半分どころか、百パーセント不正解じゃん」
 「いいえ。半分正解よ」
 そこで、ミコはいったん、言葉を句切った。
 「なぜなら、あなたは将門の血を引いているから」
 強い衝撃を受けた。サトルは。
 「初めて聞いた。将門って、男系子孫は絶えたんじゃないの? 隠し子がいた、とか?」
 「そういう意味じゃないわ。霊的な意味の血よ」
 戸惑った。サトルは。意味がわからず。
 ミコが、淡々と説明を始めた。
 「将門と同じ霊力を帯びた血は、将門の多くの男系親族がもっていて、その子孫たちは、その霊力を帯びた血を受け継いでいるのよ」
 「関東の平氏の血を引く者って、たくさんいるんじゃない?」
 「ええ、そうよ。だけど、その血に強い霊力を宿す者は、そう多くはないの。その血に強い霊力を宿す者のうち、将門の首の再封印に必要な血の適格者は、適格者三名、準適格者五名の計八名。サトルは、そのうちの一人よ」
 「再封印?」
 「ええ。封印していた黒野神社が、破壊されたの。昨晩。敵の攻撃で。それで今は、非常時用封印祭器巫女であるあたしの胎内に、臨時で簡易封印しているの。だけど、あまり長くは、もたない。早く、正式に封印しないと。そのために必要なのが、サトルの血なの」
 戸惑いながらも、サトルが口を開いた。
 「それなら、早く採血しないと」
 「違うわ。必要なのは、たんなる血液じゃない。霊力を帯びた血。死ねば、その血から霊力は失われる。大幅に」
 言葉を続けた。ミコが。
 「だけど敵は、それを理解していない。あたしたちを殺して、あたしの死体と、サトルの血液を手に入れれば、将門の首の封印を解き、将門の怨霊を操れると思い込んでいる。サトルの血を使って、ね」
 「ボクの血は、封印と、操るほうの両方に必要、ということ?」
 「封印には、必要よ。だけど、操ることなんて、できないわ。将門の怨霊は。誰にも、ね」
 戸惑いながらも、サトルは理解し始めた。自分の置かれた状況を。充分にでは、ないが。
 敵の正体について、尋ねようとしたときだった。
 先に、ミコが口を開いた。
 「サトルは、あたしのこと、うらむ?」
 「えっ? なぜ?」
 「あたしが、サトル以外の適格者を選べば、あなたは、世界中から命を狙われることは、なかった」
 そう言って、ミコは見つめた。サトルの目を。真剣な面持ちで。
 「べつに、かまわない。ミコは、けたんだろ。ボクに。だったら、その賭け、勝とうぜ。共に、命を賭けて」
 ミコの顔に、みが広がった。
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