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16. 意思
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16. 意思
学園から帰宅した私は、自室のベッドに身体を横たえ、魔導書をパラパラと気のない手つきでめくっていた。頭の中を占めているのは、数日後に迫った実技訓練のこと。
「はぁ……次の実技訓練、どうしよう」
実技訓練とは、学園の広大な敷地内にあるダンジョンで行われる、実戦形式の授業だ。生徒たちはそこで、己の実力を測ると同時に、実戦における戦い方を学ぶ。模擬戦とは異なり、そこには危険も伴う。どれだけ綿密に役割分担を考えたパーティーを組めるかが、良い成績を収める鍵となるらしい。
「フレデリカ姫様とオリビア……きっと、私が前衛を任されることになるんだろうな。剣なんて、あんなところで使ってしまったばかりに……はぁ……」
そんなことを考えながら、私は重いため息をついた。すると、部屋の扉をノックする音が聞こえ、続いてお母様の声がした。
「イデア。ご飯ができたわよ?」
「お母様。うん。今行く」
私はベッドから身体を起こし、部屋を出てリビングへと向かった。騎士の仕事でお父様は不在。お母様と二人きりの夕食だが、特に寂しいとは感じなかった。今日のメニューは、ミートパイとコーンスープ。食卓に並んだ温かい料理を見て、私は自然と笑みがこぼれた。
「どう?学園生活にはもう慣れたかしら?何か困ったことはない?」
「大丈夫だよ。みんな良くしてくれるし、それに友達もいるから。勉強は難しいけど、楽しいかな。授業中、たまに寝ちゃうこともあるけどね?」
「ふふふ。イデアは頑張り屋さんですものね?でも、無理はしないでね?辛かったらいつでも言ってちょうだい」
「うん」
私は、お母様に笑顔を向けた。この人はいつも私のことを心から心配してくれている。その優しさに、私は心から感謝していた。
「ねえ、イデア?今日は、お母様と一緒にお風呂に入らない?その後は、一緒に寝ましょう」
「ええ?どうしたの、急に?別に良いけど……」
「たまには、親子水入らずも良いじゃない。それとも……嫌かしら?」
「ううん。嬉しい。私も、久しぶりにお母様と入りたい」
「うふふ。じゃあ、決まりね」
お母様は、私の悩みに気づいているのだろう。何も言わないけれど、その優しさが身に染みる。家族だからというのもあるけれど、私にとってお母様はかけがえのない存在だ。もちろんお父様も。だからこそ、今回の人生は、前世とは全く違う、幸せなものにしたいと強く願う。
それから数日後、私は1人で学園内の森を訪れていた。腰には、先生から借りた木刀。
「違うのよ……今回ばかりは、仕方ないから……剣を使うつもりはないし、これが最後だから」
私は誰もいない森の中で、まるで言い訳をするかのように呟いた。実技訓練本番では、木刀を使うわけにはいかないし。ある程度、剣を振れるようになっておかなければ。
「よしっ!やるか」
私は、覚悟を決めて木刀を構え、素振りを始めた。前世でも、こうやって練習したことがあったな。木刀を振るたびに、心地よい風切り音が鳴り響く。その音を聞いていると、不思議と時間が経つのを忘れてしまう。
どれくらいの時間、木刀を振っていただろうか。ふと気づくと、辺りは夕日に染まり始めていた。その時、私の目の前に飲み物が差し出された。顔を上げると、そこにはフレデリカ姫様が立っていた。
「お疲れ様ですわ」
「フレデリカ姫様……ありがとう」
「あなたを待っていたんですのよ?少し、お話しません?」
「えっ?あっ、うん」
そう言って、フレデリカ姫様は私の隣に腰を下ろした。夕日に照らされた彼女の横顔は、息をのむほど美しかった。夕日に照らされた薄紅色の髪が、サラリと風になびいて揺れる。その光景に、私は思わず見惚れてしまった。
同時に、私は今まで感じたことのない感情が胸の中に湧き上がるのを感じていた。
学園から帰宅した私は、自室のベッドに身体を横たえ、魔導書をパラパラと気のない手つきでめくっていた。頭の中を占めているのは、数日後に迫った実技訓練のこと。
「はぁ……次の実技訓練、どうしよう」
実技訓練とは、学園の広大な敷地内にあるダンジョンで行われる、実戦形式の授業だ。生徒たちはそこで、己の実力を測ると同時に、実戦における戦い方を学ぶ。模擬戦とは異なり、そこには危険も伴う。どれだけ綿密に役割分担を考えたパーティーを組めるかが、良い成績を収める鍵となるらしい。
「フレデリカ姫様とオリビア……きっと、私が前衛を任されることになるんだろうな。剣なんて、あんなところで使ってしまったばかりに……はぁ……」
そんなことを考えながら、私は重いため息をついた。すると、部屋の扉をノックする音が聞こえ、続いてお母様の声がした。
「イデア。ご飯ができたわよ?」
「お母様。うん。今行く」
私はベッドから身体を起こし、部屋を出てリビングへと向かった。騎士の仕事でお父様は不在。お母様と二人きりの夕食だが、特に寂しいとは感じなかった。今日のメニューは、ミートパイとコーンスープ。食卓に並んだ温かい料理を見て、私は自然と笑みがこぼれた。
「どう?学園生活にはもう慣れたかしら?何か困ったことはない?」
「大丈夫だよ。みんな良くしてくれるし、それに友達もいるから。勉強は難しいけど、楽しいかな。授業中、たまに寝ちゃうこともあるけどね?」
「ふふふ。イデアは頑張り屋さんですものね?でも、無理はしないでね?辛かったらいつでも言ってちょうだい」
「うん」
私は、お母様に笑顔を向けた。この人はいつも私のことを心から心配してくれている。その優しさに、私は心から感謝していた。
「ねえ、イデア?今日は、お母様と一緒にお風呂に入らない?その後は、一緒に寝ましょう」
「ええ?どうしたの、急に?別に良いけど……」
「たまには、親子水入らずも良いじゃない。それとも……嫌かしら?」
「ううん。嬉しい。私も、久しぶりにお母様と入りたい」
「うふふ。じゃあ、決まりね」
お母様は、私の悩みに気づいているのだろう。何も言わないけれど、その優しさが身に染みる。家族だからというのもあるけれど、私にとってお母様はかけがえのない存在だ。もちろんお父様も。だからこそ、今回の人生は、前世とは全く違う、幸せなものにしたいと強く願う。
それから数日後、私は1人で学園内の森を訪れていた。腰には、先生から借りた木刀。
「違うのよ……今回ばかりは、仕方ないから……剣を使うつもりはないし、これが最後だから」
私は誰もいない森の中で、まるで言い訳をするかのように呟いた。実技訓練本番では、木刀を使うわけにはいかないし。ある程度、剣を振れるようになっておかなければ。
「よしっ!やるか」
私は、覚悟を決めて木刀を構え、素振りを始めた。前世でも、こうやって練習したことがあったな。木刀を振るたびに、心地よい風切り音が鳴り響く。その音を聞いていると、不思議と時間が経つのを忘れてしまう。
どれくらいの時間、木刀を振っていただろうか。ふと気づくと、辺りは夕日に染まり始めていた。その時、私の目の前に飲み物が差し出された。顔を上げると、そこにはフレデリカ姫様が立っていた。
「お疲れ様ですわ」
「フレデリカ姫様……ありがとう」
「あなたを待っていたんですのよ?少し、お話しません?」
「えっ?あっ、うん」
そう言って、フレデリカ姫様は私の隣に腰を下ろした。夕日に照らされた彼女の横顔は、息をのむほど美しかった。夕日に照らされた薄紅色の髪が、サラリと風になびいて揺れる。その光景に、私は思わず見惚れてしまった。
同時に、私は今まで感じたことのない感情が胸の中に湧き上がるのを感じていた。
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