追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

文字の大きさ
11 / 158
第1章 聖魔法?そんなの知らないのです!

10. 追い出した弊害 ~マルセナside~

しおりを挟む
10. 追い出した弊害 ~マルセナside~




 アリーゼが破門にあってから2日後。カトリーナ教会では「巡礼祭」が行われていた。「巡礼祭」とは聖女の奇跡を体現するため、選ばれた人々の傷や病を治すための「聖魔法」を披露する場でもある。夕方には教会の祭壇での聖火を崇めるミサ、そして夜には盛大な晩餐会が開かれる教会にとっても大きなイベントなのだ。

「はい。これでもう大丈夫ですわ」

「ありがとうございます!聖女マルセナ様」

「いえいえ。神の御加護がありますように」

 しかしマルセナは心の中で思っている、一体あと何人いるのか。と。正直朝からほとんど休みなく「聖魔法」を使い続けている。疲れているのが本音だ。だがそんなことを言えるはずもない。なぜなら聖女だからだ。聖女は人々を救う象徴。弱音は吐いていられない。

 なぜなら。あのムカつくアリーゼですら文句一つどころか疲れなんか感じさせていなかったからだ。そんな時いつものようにあの2人がマルセナを介抱する。

「マルセナ様。お飲み物をどうぞ」

「肩をお揉みしましょう」

 見習い修道士のラピスとエルミンだ。この2人はアリーゼを教会から追い出せたことで聖女付きになれた。だから修道士の中でも優遇されるようになったのだ。

 教会にいた時にアリーゼには何故か修道士が付くことはなかった。いやそれをアリーゼが断っていたのだろう。だってアリーゼには必要がなかったから。

 その時ミサの準備をしていた司教様が部屋に来る。

「聖女マルセナ様。頼んでいた「聖火」は?」

「もう教会の祭壇においておきましたわよ?確認してませんの?」

「いや……2本だけですか?いつもなら祭壇の中全体に広がるように20本は用意しているのに……仕方ない移し火で対応します。では失礼します」

「は?」

 あれは移し火で対応していたのではないの?そうマルセナは混乱する。それは「聖火」を作るには聖魔法を1時間は火に込め続けなければいけないからだ。どれだけ全力でやっても30分はかかる。

 それなのにあのアリーゼはマルセナの10倍は「聖火」を作っていたのだ。

 実はアリーゼは「聖火」を毎回同じ量ではなく変えて作っていた。一番明るくする場所を考えて、そして自分で設置までしていた。それは錯覚を利用したものだ。もちろんこれも本の知識に他ならない。

「そっそんなのありえませんわ!?私の10倍の量の「聖火」など……」

 まだまだアリーゼを追い出した弊害は続く。次に来たのは晩餐会のための料理を作る料理長だ。

「聖女様!大変です!ご用意いただいたベステラ魚が腐っております。これじゃ晩餐会のメインディッシュが……」

「はぁ!?一体なぜ!」

「わかりません。でもいつもならちゃんと切り身を買っていただいているのに。今回は一匹丸ごと……」

 ベステラ魚は開いてしまうとすぐに腐ってしまう魚だ。切り身での保存の方が難しい鮮魚なのに……それはアリーゼが綺麗に余計なところを傷つけず切り身にし、元々毒のあるベステラ魚の解毒を聖魔法でおこなっていたからだった。あとは優しいアリーゼが、料理長たちが簡単にできるようにと配慮していたのだ。

 とりあえず代用の魚をラピスが急いで買いに行くことになる。

 ただこれでは終わらなかった。アリーゼを追い出した弊害は続く。次に来たのはオイゲン大司教様だ。

「聖女マルセナ!!一体どういう事だ!?」

「今度はなんですの!?」

「今日の巡礼祭のための生花が萎れ始めておるぞ!どうしてくれるのだ!」

 確かにアリーゼがいた時はいつも豪華で鮮やかな花が巡礼祭の最後まで咲いていた。しかし今は違う。全て萎れかけている。

 さすがのマルセナもこれはおかしいと思うが理由はわからない。

 結局エルミンに買いに行かせることになる。実はアリーゼは礼拝の時に使う花の手入れもやっていた。

 プレーンウッドと呼ばれる木材を煮だして汁をとりそれを巡礼祭の花にかけることで防腐剤の役割になる、そしてそれを一旦凍結させて、解凍することで長持ちさせることができるのだ。もちろんこれも本の知識。

 だがマルセナはそんなことは知らない。なのでアリーゼがいなくなってから今まで誰も知らなかった知識が一気に出始めたのだ。

 教会にとってこの事態は由々しき問題であった。だからマルセナは一日中ずっと誰かに指示を出し続けるしかなかったのである。

「アリーゼ……もう……何なんですの!!きぃ~!!」

 そしてこの後もアリーゼの弊害はまだまだ続いていった。カトリーナ教会は初めて暗い祭壇のミサと味気ない晩餐会を開くことになるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ、教会から追放された聖女候補生、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。王子様とゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
 無能扱いされ、教会から追放された聖女候補――リディア。  居場所を失い、絶望の淵に立たされた彼女は、辺境の地で「光を繋ぐ」という唯一無二の力に目覚める。  だが、彼女を追放した教会の闇は、なお人々を蝕んでいた。  黒紋章、影の獣、そして狂気に染まった司祭たち。  幾度も絶望が迫る中、リディアは仲間と共に剣を取り、祈りを重ね、決して命を投げ捨てることなく光を繋ぎ続ける。  「私はもう、一人で闇に抗わない。皆と共に生きるために、光を灯す」  かつては「無能」と嘲られた少女は、辺境を救う“真の聖女”として人々の希望となっていく――。  スローライフと激闘の果てに紡がれる、聖女の再生と愛の物語。

無自覚人たらしマシュマロ令嬢、王宮で崇拝される ――見た目はぽっちゃり、中身は只者じゃない !

恋せよ恋
ファンタジー
 富豪にして美食家、オラニエ侯爵家の長女ステファニー。  もっちり体型から「マシュマロ令嬢」と陰口を叩かれる彼女だが、  本人は今日もご機嫌に美味しいものを食べている。  ――ただし、この令嬢、人のオーラが色で見える。  その力をひけらかすこともなく、ただ「気になるから」と忠告した結果、  不正商会が摘発され、運気が上がり、気づけば周囲には信奉者が増えていく。  十五歳で王妃に乞われ、王宮へ『なんでも顧問』として迎えられたステファニー。  美食を愛し、人を疑わず、誰にでも礼を尽くすその姿勢は、  いつの間にか貴族たちの心を掴み、王子たちまで惹きつけていく。  これは、  見た目はぽっちゃり、されど中身は只者ではないマシュマロ令嬢が、  無自覚のまま王宮を掌握していく、もっちり系・人たらし王宮譚。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 エール📣いいね❤️励みになります!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【古代召喚魔法】を悪霊だとよばれ魔法学園を追放されました。でもエルフの王女に溺愛されて幸せです。だから邪魔する奴らは排除していいよね?

里海慧
ファンタジー
「レオ・グライス。君は呪いの悪霊を呼び寄せ、危険極まりない! よって本日をもって退学に処す!!」  最終学年に上がったところで、魔法学園を退学になったレオ。  この世界では魔物が跋扈しており、危険から身を守るために魔法が発達している。  だが魔法が全く使えない者は、呪われた存在として忌み嫌われていた。  魔法が使えないレオは貴族だけが通う魔法学園で、はるか昔に失われた【古代召喚魔法】を必死に習得した。  しかし召喚魔法を見せても呪いの悪霊だと誤解され、危険人物と認定されてしまう。  学園を退学になり、家族からも見捨てられ居場所がなくなったレオは、ひとりで生きていく事を決意。  森の奥深くでエルフの王女シェリルを助けるが、深い傷を負ってしまう。だがシェリルに介抱されるうちに心を救われ、王女の護衛として雇ってもらう。  そしてシェリルの次期女王になるための試練をクリアするべく、お互いに想いを寄せながら、二人は外の世界へと飛び出していくのだった。  一方レオを追い出した者たちは、次期女王の試練で人間界にやってきたシェリルに何とか取り入ろうとする。  そして邪魔なレオを排除しようと画策するが、悪事は暴かれて一気に転落していくのだった。 ※きゅんきゅんするハイファンタジー、きゅんファン目指してます。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

処理中です...