追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫

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第5章 二人の聖女 

7. 協奏曲(コンチェルト) ~マルセナside~

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7. 協奏曲(コンチェルト) ~マルセナside~



 マルセナたちは処刑が行われる大広場に向かっている。自分が処刑を止められなければライアンやメリッサさん、エミリーや使用人のみんなの命はない。そんな重圧と不安を胸にマルセナは急ぐ。でももう覚悟はできているし、迷いはない。聖女としての務めをただ果たすだけなのだから。

 そして処刑が行われる大広場へと到着したマルセナが目にしたのは……。そこには処刑台に縛り付けられたライアンの姿があった。彼はすでに意識を失っており、首には斧が置かれている。その隣では拘束された他のみんなが見える。その周りには国王のゼロス=ランバートとそして兵士たちがいる。

 どうやらまだ処刑は行われていないらしい。よかった。間に合ったわ。

 住民たちからは不安の声が聞こえてくる。これから処刑が始まるのだ。まずはこの場を収めなくては。

 マルセナは拳を握りしめ、飛び出していく。もう覚悟は決めている。

「待ってください!」

 その声に反応して全員が振り向く。そして住民たちがざわつき始める。

「何者だ!貴様は」

「私は……マルセナ=アステリア。聖女です!!」

 マルセナの突然の登場に兵士も国王も驚きを隠せない様子だった。だがすぐに国王の顔色が変わる。何かに気付いたように。

 そう、この場に現れたのが聖女のマルセナ1人であるならば止めることは容易いはずだ。兵士たちはすぐにマルセナを取り囲み武器を向ける。それはまるで手負いの獣を取り囲むような光景で、まさに一触即発の状況になる。

 しかしマルセナは毅然とした態度で言い放つ。こんなところで怖気づいてなどいられない。みんなは私が救うのだから。そしてマルセナはゆっくりと口を開く。

「大聖女ディアナ様はおっしゃいました。罪なき者に罰を与えることなかれと。あなた方が犯している罪は何ですか?あなた方は私利私欲のために無実の人々を傷つけているのです。それを自覚なさい!」

「黙れ小娘!貴様に何ができるというのだ?」

「何もできません。でも、あなた方を止めます」

 その言葉と同時に兵士たちが一斉に襲いかかろうとするが隊長らしき人物がそれを慌てて止める。

「やめろ!全員武器を納めろ!動くと怪我じゃすまなくなるぞ!」

 その言葉を聞き兵士たちが武器をおろす。そう遠くからロゼッタ様やソフィアが魔法で狙っていたのだ。

「うむ。いい心がけじゃの?」

「私たちもいますからマルセナ様、頑張ってください。」

 マルセナはそれを見て微笑む。そして心の中で感謝し、国王に向かって話を続ける。

「私は聖女です。このようなことは見逃せません。ランバート王国の皆さん!どうか冷静になってください!このようなことは間違っています!」

「ええい!うるさい奴だ。貴様反逆者ライアンと関係を持ち、もう聖魔法が使えんはずだろう?それで聖女を語るか?皆のもの騙されるでない!この女はもう聖女でも何でもない!敵国セントリンの悪女だ!」

 そう言われて住民たちが騒ぎ出す。そうだ。私は聖魔法は失った。それなのにどうしてここに現れたのか?と言わんばかりの住民たちは疑念の目で見つめていた。

 やはり私の声は誰にも届かないの?

 しかしそんな中、1人の少女が大きな声で叫んだ。

「お姉ちゃんは聖女様だよ!!私のぬいぐるみ…探してくれた!!」

「オレは魔法鍛冶屋だ。聖女様に右手を治療してもらった!」

「私は病気の父を治していただきました!」

「聖魔法が使えなくてもその方は聖女様だ!みんなその笑顔に救われてるんだ!」

 その少女の言葉に次々と声が上がる。

 マルセナはその光景に涙が出そうになる。あぁ、やっぱり私は……聖女として頑張ってきたんだ。みんなの力になれていたんだ。ありがとう……。

 そして声はどんどん広がっていき、ついにその想いは処刑台を守る兵士たちにも伝わった。

 聖女マルセナは確かに聖魔法を失ったかもしれない。だが今まで彼女は自分のできることを精一杯やってきた。他国の聖女が自分たちのために尽くしてきた。それに報いることができるだろうか?答えは否だ。間違いは国王のほうだ。ここで立ち上がらなければ我々はなんのための王国軍なのか?と兵士の心にも火がついた。

 もうこの場には国王の味方は誰1人いない。そしてマルセナは言い放つ。

「もう諦めなさい!ゼロス=ランバート!これ以上の暴挙は許されません!今すぐみんなを解放しなさい!」

「くっ……」

 悔しそうな表情を浮かべながらゼロスは一歩下がる。その様子を見てマルセナはさらに畳み掛ける。

「まだわからないのですか!?私はあなたを決して許しません!あなたの行いは神への冒涜であり、民を力で制圧し続けたことです!この国をここまで腐らせたのはあなたの責任でもあるのですよ!」

「貴様……調子に乗るなよ?ワシは王だぞ?」

「それがどうしました?私は権力には屈しません。……ですから」

 マルセナはそう言って胸を張る。その姿には自信しかなかった。

 そんな彼女にゼロスの怒りは頂点に達する。置いてある斧を手に持ちこう叫ぶ。

「ふざけるな…いいか動くなよ?動けばライアン、そしてコイツらの首をはね飛ばすぞ!」

 その言葉を聞いた住民たちは再びざわつき始める。ライアンや仲間たちの首筋にはすでに刃が置かれていた。少しでも動けば彼らは殺されてしまう。

 マルセナはそれを見ても動揺することなく、毅然とした態度を変えなかった。

 さすがのマルセナも恐怖を感じなかったわけではない。だがそれよりも聖女としての自分を初めて心から信じることが出来たのだ。そしてその瞳は真っ直ぐと前を見据えていたのだった。
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