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第6章 使用人とメイドさんと大切な約束
60. メイドさんと大切な約束
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60. メイドさんと大切な約束
そして時間はあっという間に過ぎていって今日はエルナリア様が魔法学園に戻る日になった。私はブライアンの手綱を引いて港街ルスタミラに向かう。
今日でお別れだと思うとたった1ヶ月の専属メイドだったけど、なんだか寂しい気持ちになる。だけどより成長できたよね。そして港に着き、私とカイル君はエルナリア様に最後の挨拶をする。
「色々ありがとう。助かったわカイル、マリア」
「いえこちらこそ、ありがとうございました。魔法特訓は……まぁいい思い出です」
「貴重な経験ができました。毎日楽しかったです。ありがとうございましたエルナリア様」
私とカイル君は深々とお辞儀をする。本当に感謝しても感謝しきれないくらいだよ。しかしこんな時でもエルナリア様は凛とした態度をとっている。さすがは貴族令嬢だよね。……なんか私が泣きそうかも。
「まぁ私も色々勉強になったわ。どうせまた半年後に戻ってくるわよ。その時もお願いするかもしれないわ。カイルは分からないけど?」
「ええ!?オレだけ仲間はずれですか!?」
「だってあなた仕事できないじゃない?せいぜいできることと言ったら魔法特訓の相手くらいでしょうに。」
といつものようなやり取りが行われる。最後まで明るい雰囲気の2人を見ていて、私はつい笑顔になる。そして別れの時間がくる。
「そろそろ行くわね。2人とも元気でね」
「エルナリア様!」
「ん?なに?」
カイル君はエルナリア様を呼び止めて、あの時に買ったテディベアを渡す。
「これ受け取ってください!マリアさんと選んだんです。」
「それは私とカイル君とエルナリア様でお揃いなんですよ。みんなに似ている子を選んだんですよ?」
2人でお揃いのテディベアを手渡す。その白い目付きの悪いテディベアを見て、エルナリア様は微妙そうな顔をして私とカイル君に言った。
でも私には分かった。『最後までいつも通り』そうしようとするエルナリア様の優しさが。
「……この白い目付きの悪いテディベアは私なのかしら?」
「どう見てもエルナリア様ですよ?」
「ふふ。似てますよエルナリア様」
「ちょっとマリアまで……失礼ねあなたたちは……」
そう言ってエルナリア様は笑顔になる。そしてその瞳からは涙が溢れていた。
「あーもう!泣くつもりなんてなかったのに!」
「エルナリア様。頑張ってください。次会うときまでには、オレもスーパー使用人になってますから」
スーパー使用人か……なんか格好いいかも。それなら私はパーフェクトメイド?なんちゃって。カイル君みたいに宣言するのは恥ずかしいから、私の心の中だけに秘めておくことにする。
「そうです。私とカイル君はエルナリア様の帰りをリンスレット家で待ってますからね。専属なので」
「ええ。本当にありがとう。行ってくるわ。カイル、私が戻るまでせいぜいクビにならないようにね?」
「エルナリア様!お元気で!帰ってきたらまた専属にしてくださいね!約束ですよ!」
エルナリア様はそのまま振り返らず手を振り船に乗り込む。船はゆっくりと港から離れていく。私とカイル君はその姿が見えなくなるまでずっと見送っていた。
こうして長いようで短いエルナリア様専属のお付きの仕事は終わりを告げたのでした。
◇◇◇
あれから、エルナリア様が魔法学園に戻って1週間がたった。私とカイル君はいつも通りの仕事に戻っていた。毎日朝礼で胸をガン見されるいつも通りのね。やる仕事はほとんど変わらないけど、やっぱりどこか寂しい気持ちになってしまう。
「……いけないいけない。私はパーフェクトメイドになるんだから。それにこんな姿見られたら、カイル君みたいにエルナリア様に怒られるよね」
私は棚に飾ってある、私たちに似た3体のテディベアを見る。そして、目を瞑るとあの時の光景が鮮明に浮かぶ。
(こらカイル!仕事は集中しなさい!)
(すっすいません!エルナリア様!)
(ふふ。カイル君また怒られてる。本当に期待を裏切らないなぁ)
それを思い出すと何だか元気が出てくる。エルナリア様も同じように思っていてくれるかな?
「あ。次に戻ってくる時にスーパー使用人やパーフェクトメイドになってたら、エルナリア様驚くんだろうなぁ。うん。頑張らないとね!」
そしてそのまま眠りにつく。その私の姿を白い目付きの悪いテディベアはじっと見つめて応援してくれているのでした。
そして時間はあっという間に過ぎていって今日はエルナリア様が魔法学園に戻る日になった。私はブライアンの手綱を引いて港街ルスタミラに向かう。
今日でお別れだと思うとたった1ヶ月の専属メイドだったけど、なんだか寂しい気持ちになる。だけどより成長できたよね。そして港に着き、私とカイル君はエルナリア様に最後の挨拶をする。
「色々ありがとう。助かったわカイル、マリア」
「いえこちらこそ、ありがとうございました。魔法特訓は……まぁいい思い出です」
「貴重な経験ができました。毎日楽しかったです。ありがとうございましたエルナリア様」
私とカイル君は深々とお辞儀をする。本当に感謝しても感謝しきれないくらいだよ。しかしこんな時でもエルナリア様は凛とした態度をとっている。さすがは貴族令嬢だよね。……なんか私が泣きそうかも。
「まぁ私も色々勉強になったわ。どうせまた半年後に戻ってくるわよ。その時もお願いするかもしれないわ。カイルは分からないけど?」
「ええ!?オレだけ仲間はずれですか!?」
「だってあなた仕事できないじゃない?せいぜいできることと言ったら魔法特訓の相手くらいでしょうに。」
といつものようなやり取りが行われる。最後まで明るい雰囲気の2人を見ていて、私はつい笑顔になる。そして別れの時間がくる。
「そろそろ行くわね。2人とも元気でね」
「エルナリア様!」
「ん?なに?」
カイル君はエルナリア様を呼び止めて、あの時に買ったテディベアを渡す。
「これ受け取ってください!マリアさんと選んだんです。」
「それは私とカイル君とエルナリア様でお揃いなんですよ。みんなに似ている子を選んだんですよ?」
2人でお揃いのテディベアを手渡す。その白い目付きの悪いテディベアを見て、エルナリア様は微妙そうな顔をして私とカイル君に言った。
でも私には分かった。『最後までいつも通り』そうしようとするエルナリア様の優しさが。
「……この白い目付きの悪いテディベアは私なのかしら?」
「どう見てもエルナリア様ですよ?」
「ふふ。似てますよエルナリア様」
「ちょっとマリアまで……失礼ねあなたたちは……」
そう言ってエルナリア様は笑顔になる。そしてその瞳からは涙が溢れていた。
「あーもう!泣くつもりなんてなかったのに!」
「エルナリア様。頑張ってください。次会うときまでには、オレもスーパー使用人になってますから」
スーパー使用人か……なんか格好いいかも。それなら私はパーフェクトメイド?なんちゃって。カイル君みたいに宣言するのは恥ずかしいから、私の心の中だけに秘めておくことにする。
「そうです。私とカイル君はエルナリア様の帰りをリンスレット家で待ってますからね。専属なので」
「ええ。本当にありがとう。行ってくるわ。カイル、私が戻るまでせいぜいクビにならないようにね?」
「エルナリア様!お元気で!帰ってきたらまた専属にしてくださいね!約束ですよ!」
エルナリア様はそのまま振り返らず手を振り船に乗り込む。船はゆっくりと港から離れていく。私とカイル君はその姿が見えなくなるまでずっと見送っていた。
こうして長いようで短いエルナリア様専属のお付きの仕事は終わりを告げたのでした。
◇◇◇
あれから、エルナリア様が魔法学園に戻って1週間がたった。私とカイル君はいつも通りの仕事に戻っていた。毎日朝礼で胸をガン見されるいつも通りのね。やる仕事はほとんど変わらないけど、やっぱりどこか寂しい気持ちになってしまう。
「……いけないいけない。私はパーフェクトメイドになるんだから。それにこんな姿見られたら、カイル君みたいにエルナリア様に怒られるよね」
私は棚に飾ってある、私たちに似た3体のテディベアを見る。そして、目を瞑るとあの時の光景が鮮明に浮かぶ。
(こらカイル!仕事は集中しなさい!)
(すっすいません!エルナリア様!)
(ふふ。カイル君また怒られてる。本当に期待を裏切らないなぁ)
それを思い出すと何だか元気が出てくる。エルナリア様も同じように思っていてくれるかな?
「あ。次に戻ってくる時にスーパー使用人やパーフェクトメイドになってたら、エルナリア様驚くんだろうなぁ。うん。頑張らないとね!」
そしてそのまま眠りにつく。その私の姿を白い目付きの悪いテディベアはじっと見つめて応援してくれているのでした。
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