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20. 忘れていた

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20. 忘れていた




 私たちは魔法鍛冶屋のメルトを仲間に加え北にある魔法都市に向かうことにした。地図を広げ、魔法都市へは山を越える必要があるため、麓の街『ガナード』に一度寄ることにした。

「ねぇ、ガナードってどんな街なの?」

 馬車での移動中、隣に座るルナが私に聞いてくる。

「えっと……確か魔法研究が盛んに行われてる街だったと思うわ」

「ふーん……」

 自分で聞いたくせに興味なさそうにしてるし……。まぁいいけどさ……。

 それからしばらくすると、街が見えてきた。山に囲まれた街で、至る所から煙が立ち上っている。

「あれがガナードよ」

「なんかすごいね……」

 初めて見る街に興奮気味のルナ。そんな彼女を見て、私は微笑ましく思った。ガナードの入り口には門番がおり、通行証を見せなければ街の中に入ることはできない。するとここぞとばかりにディアナが対応する。

「私は聖女ディアナです。私の従者なので、一緒に入らせてください」

 門番たちは一瞬顔を見合わせた後、「わかりました」と言って通してくれた。そして私たちは無事に街へと入ることが出来た。その時のディアナの勝ち誇った顔が気に入らなかったけど。

「わぁ!見て見て!」

「ちょっ、危ないから走らないの!」

「あっ待ってくださいルナさん」

 初めて来た街の街並みにテンションが上がったのか、ルナは走り回ってあちこちを眺めている。まずは宿屋を探さないとね。魔法都市に向かうには山越えが必要だからここを拠点として準備をしないと。

「すみません。この街で一番おすすめの宿を教えていただけますか?」

 ディアナが道行く人に聞くと、一人の女性が答えてくれた。

「それならこの道を真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲がればありますよ」

「ありがとうございます」

 言われた通りに進むと、確かに大きな建物が見えた。中に入り部屋を確認すると2人用、4人用の2部屋しか空いていなかった。私はまたギル坊と同じ部屋になった。私はまたギル坊と同じ部屋になった。もう別になれたからいいけどさ……。

「あのロゼッタ様?」

「なに?」

「またボクと同じ部屋でいいんですか?」

「ははーん。なるほど。ルナと2人が良かったのね?でもごめんなさい。今回も我慢してちょうだい。一応なんかあると嫌だし?」

「そ、そういうわけじゃないですよ!?ただロゼッタ様に迷惑がかかると思ってですね……しかもなんかあるってなんですか!」

 顔を赤くしながら慌てふためくギル坊を見て少し笑ってしまった。相変わらず可愛いやつだな~。

 とりあえず、このガナードを拠点に魔法都市に向かうために備えて色々準備をすることにする。この街にもギルドがあるらしく、そこで冒険者登録をして依頼を受けることにした。メルトは路上で魔法道具などを販売して資金を稼ぐみたい。

 魔法都市までの道のりはかなり長いらしいから、ここでしっかり稼がないとね。

 そして夜。私がお風呂から出るとギル坊が珍しく起きていた。

「ギル坊。まだ起きてたの?明日早いんだし早く寝ないとダメよ?」

「いえその……ちょっと聞きたいことがありまして……」

 なんだろ?改まって話なんて珍しい。いつもはすぐに眠くなるくせに。

「ロゼッタ様は……魔法都市に着いたらどうするんですか?」

「え?」

「ボクもルナさんも魔法都市に住み、強くなりたい。でもロゼッタ様は……」

 そっか。ギル坊なりに私を心配してくれてるんだ。でも私は大魔女になるための巡礼の旅の途中。魔力を集めればまた違う土地に行く。だから……。

「言ったでしょ?魔女はきまぐれなの。魔力を集めればまた違う土地に行くだけよ。ギル坊はギル坊の目的がある。だから私なんか心配しなくていいわ。」

「ボクは……」

「ギル坊は自分の心配をしなさい。ルナを支えてあげるんでしょ?」

「はい……」

「じゃあもう寝なさい」

 そう言うとギル坊は渋々と自分のベッドに戻っていった。全く世話の焼ける子だわ。でもそんなところが可愛くてつい甘やかしちゃうんだけどね。

 魔法都市に着いたらか……。この短い間に、当たり前のように過ごしてきたから忘れていたわ。私は元々一人旅だったんだ。目的を果たしたら次へ行かないと。それが私のやるべきこと。

 だから今はギル坊やルナを一人前にするために私が出来ることをしてあげなくちゃね。
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