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22. 自分の気持ち
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22. 自分の気持ち
私はディアナにガナードにある廃墟に連れていかれた。ここに来るまで昨日と同じでずっと無言だった。
「なによ、こんなところにまた来て?」
「私は嘘は許さないと言いましたよ」
「は?嘘?」
「みんなに昨日のことを適当に話しましたね?なぜですか?」
なぜって……本当のことを話したらみんなが心配するからに決まってるじゃない。まったく聞くんじゃないわよ無表情聖女。とか思ったけど、面倒だから答えることにする。
「みんなを不安にさせてどうするのよ。あんたのワガママで迷惑するのは私だけで充分よ」
「ワガママではありません。私は……」
そう言うディアナに向かって私は頬にビンタした。
「いい加減にしなさい!それが迷惑だって言ってんのよ!」
ディアナは叩かれた頬に手を当てながら俯いている。ざまあみろだ。これで少しは自分の行動の意味を考えればいい。するとディアナも負けじと私の頬を叩いてくる。
「痛っ!?なにするのよ!!」
「それはこっちのセリフです!!あなたこそ人の気持ちを考えたことがあるんですか!?私は聖女としての使命で……」
「はぁ!?知らないわよ!あんたの聖女としての使命なんて!」
それからしばらく私たちは取っ組み合いになった。どのくらい時間がたったか分からない。そしてお互い肩で息をしながら睨み合う。本当にこいつはムカつく。何考えてるかわからないし、私間違ってませんよねみたいな顔してるし。でも……
「なんでそんなに悲しそうな顔してるのよ……」
「え?」
「あんたが何を思ってるかは知らないけど、そんな顔をされてたら何も言えないじゃない」
私がそういうとディアナは涙目になってきて私を見つめてくる。その目には今まで感じなかった感情が込められているような気がした。
「私は聖女として……みんなを守りたい。だから……」
その言葉を聞いて私はディアナを自然と抱き締めてしまう。こいつはきっと正義感が強いんだと思う。『聖女』として生きることが当たり前すぎて周りからの期待に応えようと努力する。だから自分が本当はどうしたいのかも分からないのだと思う。
「もっと私たちを信じなさいよ。『聖女』としてじゃなくて、『仲間』として行動しなさいよ。もうあんた一人の問題じゃないでしょ?」
「ロゼッタさん……」
「ふん。それに攻撃魔法は私の専売特許なんだから、あんたがしゃしゃり出てこなくても充分よ」
私はディアナから離れると背中を向けたまま手を差し出す。正直まだディアナのことは好きになれないけど、このまま放っておくことなんか出来ない。
「ほら。さっさと帰るわよ。早くしないとみんなが心配するわ」
「はい……少しだけ楽になった気がします」
「あっそ。」
帰り道の間、ディアナは無言だったけど、それでも心なしかさっきより表情が柔らかくなったように思えた。宿屋に戻るとルナとギル坊がギルドの依頼を終えて待っていた。
「あー!やっと帰ってきた!どこに行ってたの2人とも!」
「ごめんごめん。ちょっと散歩しててね」
「全くもう!ちゃんと出かけるなら書き置きくらいしてくださいよ!ロゼッタ様。あとディアナ様も!」
「すみませんでした。これから気を付けます」
ふぅ。なんとか誤魔化せたかな?それにしてもディアナが素直に謝ったことにびっくりした。こいつ謝ったりするのね……。
「なんですか?」
「別に?」
やっぱりまだ気に食わないやつだけど、少しはマシになってくれたかしら。
「あのところで、ロゼッタ様とディアナ様?なんでそんなに傷だらけなんですか?もしかして秘密の特訓とかしてました?」
「え?あー。こいつがさ」
「ロゼッタさんがいきなり私にビンタをして、襲ってきたんです。なので返り討ちにしました」
「ちょっ!変なこと言わないでよ!」
「……事実ですが?」
ぐぬぬ!確かにそうだけどさ!こいつ!今すぐボコボコにしてやりたい!でもここで喧嘩したらまたみんなに迷惑がかかる。ここは我ながら大人だわ。我慢しよう。
「あー!もう分かったわよ!ほら!ご飯食べに行くわよ!」
「えぇ!この空気で食べるんですか!?」
「じゃあギル坊はご飯抜きね!」
「そっそんなぁ~」
強い信念のディアナの気持ちも分かる。私はきっとこの先、ディアナの言う通りになったとしたら……同じように、止めることが出来るのかしら。
本来、魔女と聖女は違う世界で生きている者同士だ。交わるはずのない運命が交差してしまった。それが良いことだったのか悪いことだったかなんて私には分からない。
ただ、これだけは言える。
今できる最善の事をする。それがどんな結果になろうとも後悔だけはしない。そう私は心に刻むのだった。
私はディアナにガナードにある廃墟に連れていかれた。ここに来るまで昨日と同じでずっと無言だった。
「なによ、こんなところにまた来て?」
「私は嘘は許さないと言いましたよ」
「は?嘘?」
「みんなに昨日のことを適当に話しましたね?なぜですか?」
なぜって……本当のことを話したらみんなが心配するからに決まってるじゃない。まったく聞くんじゃないわよ無表情聖女。とか思ったけど、面倒だから答えることにする。
「みんなを不安にさせてどうするのよ。あんたのワガママで迷惑するのは私だけで充分よ」
「ワガママではありません。私は……」
そう言うディアナに向かって私は頬にビンタした。
「いい加減にしなさい!それが迷惑だって言ってんのよ!」
ディアナは叩かれた頬に手を当てながら俯いている。ざまあみろだ。これで少しは自分の行動の意味を考えればいい。するとディアナも負けじと私の頬を叩いてくる。
「痛っ!?なにするのよ!!」
「それはこっちのセリフです!!あなたこそ人の気持ちを考えたことがあるんですか!?私は聖女としての使命で……」
「はぁ!?知らないわよ!あんたの聖女としての使命なんて!」
それからしばらく私たちは取っ組み合いになった。どのくらい時間がたったか分からない。そしてお互い肩で息をしながら睨み合う。本当にこいつはムカつく。何考えてるかわからないし、私間違ってませんよねみたいな顔してるし。でも……
「なんでそんなに悲しそうな顔してるのよ……」
「え?」
「あんたが何を思ってるかは知らないけど、そんな顔をされてたら何も言えないじゃない」
私がそういうとディアナは涙目になってきて私を見つめてくる。その目には今まで感じなかった感情が込められているような気がした。
「私は聖女として……みんなを守りたい。だから……」
その言葉を聞いて私はディアナを自然と抱き締めてしまう。こいつはきっと正義感が強いんだと思う。『聖女』として生きることが当たり前すぎて周りからの期待に応えようと努力する。だから自分が本当はどうしたいのかも分からないのだと思う。
「もっと私たちを信じなさいよ。『聖女』としてじゃなくて、『仲間』として行動しなさいよ。もうあんた一人の問題じゃないでしょ?」
「ロゼッタさん……」
「ふん。それに攻撃魔法は私の専売特許なんだから、あんたがしゃしゃり出てこなくても充分よ」
私はディアナから離れると背中を向けたまま手を差し出す。正直まだディアナのことは好きになれないけど、このまま放っておくことなんか出来ない。
「ほら。さっさと帰るわよ。早くしないとみんなが心配するわ」
「はい……少しだけ楽になった気がします」
「あっそ。」
帰り道の間、ディアナは無言だったけど、それでも心なしかさっきより表情が柔らかくなったように思えた。宿屋に戻るとルナとギル坊がギルドの依頼を終えて待っていた。
「あー!やっと帰ってきた!どこに行ってたの2人とも!」
「ごめんごめん。ちょっと散歩しててね」
「全くもう!ちゃんと出かけるなら書き置きくらいしてくださいよ!ロゼッタ様。あとディアナ様も!」
「すみませんでした。これから気を付けます」
ふぅ。なんとか誤魔化せたかな?それにしてもディアナが素直に謝ったことにびっくりした。こいつ謝ったりするのね……。
「なんですか?」
「別に?」
やっぱりまだ気に食わないやつだけど、少しはマシになってくれたかしら。
「あのところで、ロゼッタ様とディアナ様?なんでそんなに傷だらけなんですか?もしかして秘密の特訓とかしてました?」
「え?あー。こいつがさ」
「ロゼッタさんがいきなり私にビンタをして、襲ってきたんです。なので返り討ちにしました」
「ちょっ!変なこと言わないでよ!」
「……事実ですが?」
ぐぬぬ!確かにそうだけどさ!こいつ!今すぐボコボコにしてやりたい!でもここで喧嘩したらまたみんなに迷惑がかかる。ここは我ながら大人だわ。我慢しよう。
「あー!もう分かったわよ!ほら!ご飯食べに行くわよ!」
「えぇ!この空気で食べるんですか!?」
「じゃあギル坊はご飯抜きね!」
「そっそんなぁ~」
強い信念のディアナの気持ちも分かる。私はきっとこの先、ディアナの言う通りになったとしたら……同じように、止めることが出来るのかしら。
本来、魔女と聖女は違う世界で生きている者同士だ。交わるはずのない運命が交差してしまった。それが良いことだったのか悪いことだったかなんて私には分からない。
ただ、これだけは言える。
今できる最善の事をする。それがどんな結果になろうとも後悔だけはしない。そう私は心に刻むのだった。
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