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出会い
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この学園には、食堂の他にカフェが併設されてる。生徒達の要望で、なんて阿蘇さんは言ってたけど私には本人の趣味としか思えないんだよね。
「恵ちゃんこっちこっちー!」
大きなテラス窓の傍らの席で、黒髪の女の子が手を振ってくる。それに気が付いた恵くんが足早にその子に駆け寄ると肩を抱き込んだ。
「ごめんね遅くなって。ありがとうゆかりちゃん席とっててくれて」
「もちろんだよ~。恵ちゃんのお願いだったらなんでも聞いちゃう」
「へぇ、ほんと? じゃあこの後一緒にお茶もお付き合いしてくれちゃったりなんかして?」
「それは無理~。ゆかりこの後撮影なんだぁ」
「え~残念。ゆかりんにあーんしてほしかったのにな」
…………なんなのこのやり取り。
眼前で交わされる男女の会話。いや、別にただの普通の会話、なんでしょこれは。でも恵くんの素を知ってる私としては……。
知らなけりゃ軟派な男だななんて思って終わるのに。
「ごめーん。また今度ね」
なんて内心でぼやいていると、話が終わったのか女の子が手を振りながら去っていく。その背中を見送ったあとポツリと
「相変わらずすごい代わり身」
「え、何が?」
「私の前ではオネエ全開のくせに女の子にはなんでまぁそんなホストみたいになるの?」
「え~だってあたし女の子の前ではイケメンでいたいんだもーん。昔からのくせよくせ。ほのかちゃんはねぇ、いいの。猫被る必要ないもの」
「ああ、そう」
その返答になんとなく納得いかない感を残しつつ、とりあえずせっかく来たんだしとケーキを食べる事に集中する事にした。
新作、と紹介されたのはバナナのシフォンケーキで1口口の中放り込み「う~ん」とそのうまさに身を悶えさせた。
「おいし~い! ここらって田んぼと山ばっかでおしゃれなカフェとかないんだもん。もう甘いの食べたい症候群が……」
頬に手をあて、はふぅと感動のため息をもらしてると、それを見た恵くんがウフフと嬉しそうな笑顔を返してくれた。
「そう言えば話は変わるけど見つかりそうなのパートナーは」
「パートナー?」
「タレントよタレント。担当タレント。マネージャー科の生徒は芸能学科から誰か一人を選んでマネージネントするのが決まりでしょ? 見つかったのその相手」
「あー……まだ」
苦笑いで返せば、恵くんが目をむいて「はぁ!?」と声を上げた。
「まだ? もうあんたこの学園に来て三ヶ月も経ったのよ。いい加減に見つけなきゃいい人材どんどんいなくなっちゃうんだから」
「わかってるって。今どの科の人にするかまよってるの」
「歌手か俳優か?」
「そうそう」
私が通うことになったマネージャー科では必須科目として高校卒業までの3年間のうち最低一人をプロデュースして1回でも企業のオーディションに合格させなきゃならないっていうなんともまぁウザ……いやいや、実力を試される科目がある。
その科目を受けるためには、タレント科やアイドル科、アーティスト科の生徒の1人とパートナーを組まなきゃならないんだけど……。
「そうねぇ。まぁ初めてならとりあえず自分の興味あるジャンルの子を選んでみたらいーんじゃない? あたしはスタイリスト科だからもちろんパートナーはモデル科の子にしたし」
「それ茶々さんにも言われた」
「副理事長?」
「そう……」
それは私がまだ学園に入って1週間も経たないくらいのある日。
「誰を選んだらいいのかわからない?」
「そうなんです。一口にタレントと言っても色んなジャンルの人間がいて誰が自分にあってるのかわからなくて……」
担任教師からその必須科目のパートナー制度の説明を受けたのはいいけど、いまいち理解が出来なかった私は茶々さんに相談しに来ていた。
最初阿蘇さんに聞きに行ったんだけど、職務机に折り重なる様に積まれた書類と青筋がたった殺人鬼みたいな顔の彼のツーショットを目に捉えるやいなや回れ右をしたのは言うまでもなく(あれが高校生がする顔かなんてツッコミはこの際しないでおこう)。
とりあえず横に澄まし顔でたっていた茶々さんを拉致ったわけ。
「それは自分に合う合わないで考えるのではなく、この人! と思う人を選ぶしかないですね」
「この人?」
「私が日和さんに仕える様に、山梨さんがパートナーとして力になりたい、とか有名になる手伝いをしたいと思える相手を探すしかない、という事です」
「力になりたいと思う人……」
私がこの人を育てたいって思うだけじゃなく?
「マネージャーというのは、担当するタレントの親だったり姉、または祖父母だと思えばいいと思いますよ」
「どういう意味ですか?」
首をかしげながら返せば「そうですねぇ」と茶々さんが腕を組む。
「育む、という意味合いでは親の気持ちが強いと思います。この子の為なら、と思う事が大事という事ですね」
「茶々さんにとって阿蘇さんがそうだということですか?」
「そう……なりますかね。彼の秘書は私でしかなりえないと思っています。マネージャーも同じ事。貴方がこのタレントには自分がいなければ、と思う人を探しなさい___」
なんて答えになってるのかなってないのかわからない返答を返された。その後また更に頭を悩ませたのは言うまでもなくなく。
「はぁ~んカッコイイ~。やっぱ見かけだけじゃなく中身もいい男だわぁ茶々副理事長」
あの人になら抱かれてもいいわキャーッなんて一人盛り上がってる目の前のオカマに冷めた視線を送りながら、ぬるくなったコーヒーを一口くちに含んだ時。
「恵ちゃんこっちこっちー!」
大きなテラス窓の傍らの席で、黒髪の女の子が手を振ってくる。それに気が付いた恵くんが足早にその子に駆け寄ると肩を抱き込んだ。
「ごめんね遅くなって。ありがとうゆかりちゃん席とっててくれて」
「もちろんだよ~。恵ちゃんのお願いだったらなんでも聞いちゃう」
「へぇ、ほんと? じゃあこの後一緒にお茶もお付き合いしてくれちゃったりなんかして?」
「それは無理~。ゆかりこの後撮影なんだぁ」
「え~残念。ゆかりんにあーんしてほしかったのにな」
…………なんなのこのやり取り。
眼前で交わされる男女の会話。いや、別にただの普通の会話、なんでしょこれは。でも恵くんの素を知ってる私としては……。
知らなけりゃ軟派な男だななんて思って終わるのに。
「ごめーん。また今度ね」
なんて内心でぼやいていると、話が終わったのか女の子が手を振りながら去っていく。その背中を見送ったあとポツリと
「相変わらずすごい代わり身」
「え、何が?」
「私の前ではオネエ全開のくせに女の子にはなんでまぁそんなホストみたいになるの?」
「え~だってあたし女の子の前ではイケメンでいたいんだもーん。昔からのくせよくせ。ほのかちゃんはねぇ、いいの。猫被る必要ないもの」
「ああ、そう」
その返答になんとなく納得いかない感を残しつつ、とりあえずせっかく来たんだしとケーキを食べる事に集中する事にした。
新作、と紹介されたのはバナナのシフォンケーキで1口口の中放り込み「う~ん」とそのうまさに身を悶えさせた。
「おいし~い! ここらって田んぼと山ばっかでおしゃれなカフェとかないんだもん。もう甘いの食べたい症候群が……」
頬に手をあて、はふぅと感動のため息をもらしてると、それを見た恵くんがウフフと嬉しそうな笑顔を返してくれた。
「そう言えば話は変わるけど見つかりそうなのパートナーは」
「パートナー?」
「タレントよタレント。担当タレント。マネージャー科の生徒は芸能学科から誰か一人を選んでマネージネントするのが決まりでしょ? 見つかったのその相手」
「あー……まだ」
苦笑いで返せば、恵くんが目をむいて「はぁ!?」と声を上げた。
「まだ? もうあんたこの学園に来て三ヶ月も経ったのよ。いい加減に見つけなきゃいい人材どんどんいなくなっちゃうんだから」
「わかってるって。今どの科の人にするかまよってるの」
「歌手か俳優か?」
「そうそう」
私が通うことになったマネージャー科では必須科目として高校卒業までの3年間のうち最低一人をプロデュースして1回でも企業のオーディションに合格させなきゃならないっていうなんともまぁウザ……いやいや、実力を試される科目がある。
その科目を受けるためには、タレント科やアイドル科、アーティスト科の生徒の1人とパートナーを組まなきゃならないんだけど……。
「そうねぇ。まぁ初めてならとりあえず自分の興味あるジャンルの子を選んでみたらいーんじゃない? あたしはスタイリスト科だからもちろんパートナーはモデル科の子にしたし」
「それ茶々さんにも言われた」
「副理事長?」
「そう……」
それは私がまだ学園に入って1週間も経たないくらいのある日。
「誰を選んだらいいのかわからない?」
「そうなんです。一口にタレントと言っても色んなジャンルの人間がいて誰が自分にあってるのかわからなくて……」
担任教師からその必須科目のパートナー制度の説明を受けたのはいいけど、いまいち理解が出来なかった私は茶々さんに相談しに来ていた。
最初阿蘇さんに聞きに行ったんだけど、職務机に折り重なる様に積まれた書類と青筋がたった殺人鬼みたいな顔の彼のツーショットを目に捉えるやいなや回れ右をしたのは言うまでもなく(あれが高校生がする顔かなんてツッコミはこの際しないでおこう)。
とりあえず横に澄まし顔でたっていた茶々さんを拉致ったわけ。
「それは自分に合う合わないで考えるのではなく、この人! と思う人を選ぶしかないですね」
「この人?」
「私が日和さんに仕える様に、山梨さんがパートナーとして力になりたい、とか有名になる手伝いをしたいと思える相手を探すしかない、という事です」
「力になりたいと思う人……」
私がこの人を育てたいって思うだけじゃなく?
「マネージャーというのは、担当するタレントの親だったり姉、または祖父母だと思えばいいと思いますよ」
「どういう意味ですか?」
首をかしげながら返せば「そうですねぇ」と茶々さんが腕を組む。
「育む、という意味合いでは親の気持ちが強いと思います。この子の為なら、と思う事が大事という事ですね」
「茶々さんにとって阿蘇さんがそうだということですか?」
「そう……なりますかね。彼の秘書は私でしかなりえないと思っています。マネージャーも同じ事。貴方がこのタレントには自分がいなければ、と思う人を探しなさい___」
なんて答えになってるのかなってないのかわからない返答を返された。その後また更に頭を悩ませたのは言うまでもなくなく。
「はぁ~んカッコイイ~。やっぱ見かけだけじゃなく中身もいい男だわぁ茶々副理事長」
あの人になら抱かれてもいいわキャーッなんて一人盛り上がってる目の前のオカマに冷めた視線を送りながら、ぬるくなったコーヒーを一口くちに含んだ時。
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