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僕の家族構成

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 ルミナは僕の家でメイドをしている『デュラハン』と呼ばれる種族である。
 雇っているというか、父さんが10年程前に転がっていた頭を拾ったところ、体が後からやってきて「拾ってくれてありがとうございます!命の恩人です!」と言った感じでメイドになったそうだ。


「ルミナって首に頭くっつかないの?」
 僕は意を決して聞いてみることにした。
「くっつかないんですよねーそれどころか磁石の同じ極くっつけたみたいに離れちゃうんです」
「本当?僕にも試させて」
 そう言うと、ルミナの頭を首の上に乗せた。が、反発してうまく乗らない。
「本当だ。乗らないね、でも首を抑えたら・・・」
 頭を乗せて首の辺りを固定する。
「やっ、やめてくだひゃい。首、弱いんです・・・」
「おいおいリヒト。メイドさんにセクハラしちゃダメだろー」
 いきなり登場したのは父さんだった。
「ルミナちゃん今日も胸大きいねー」
 こいつのほうがセクハラ野郎である。
「えっ、あう」毎日のようにセクハラをされているがいまだに慣れていないようで、返事に困っていた。
「セクハラ親父、ルミナが返事に困ってるだろ。そろそろやめろよ」
「あっははールミナちゃんの反応が可愛いからさ、しょうがないよね」
「お父さん、いい加減にしましょうね~」
 母さんはセクハラ野郎の肩の骨を砕く勢いで握ると、引きずってあっちに行ってしまった。
「仲悪いように見えて、あの二人とっても仲がいいんですよね・・・」
「・・・うん」
 どれくらい仲がいいかというと、夜しか起きない父をむりやり自分の部屋に連れて行き・・・これ以上はやめておこうと思う。
 一言言わせてもらうなら壁が薄い。


「リヒト君、お腹空いてる?夜食でも作ろうか?」
 時計を見れば午後11時半、寝るには早いし小腹が減った頃合いだ。が。
「あっ、大丈夫大丈夫!逆に僕が作るよ!」
 掃除や洗濯などの家事は完璧にこなすルミナだが、料理だけは絶望的だ。目玉焼きを作ろうとして黒い物体を作るレベルで。
「でも一応メイドだし・・・」
「僕も料理の練習したくってさ。いいでしょ?」
「そうですか!じゃあアドバイスなどをさせていただきます!」
 君にもらうアドバイスはない。と言いかけたのは内緒だ。


 作る描写は省かせてもらうが、作ったのはお手軽な卵雑炊だった。
「私、味にはうるさいですよ?」
「まあ食べてみてよ」
 ルミナは一口、口に入れる。そしてスプーンを落とした。
「ど、どうかした?」
「こ、これおいしすぎます・・・」
「へ?」
「調味料の配分が素晴らしく、そんなに多くの種類を使っているわけではないはずなのに口の中で交響曲が奏でられているようです!このご飯も、残り物のはずなのに、なんといえばいいんですかね?まあとってもおいしいってことです。」

 まぁ、喜んでくれてよかった。
 そのあと僕も一緒に食べ、自分の部屋に帰るのだった。

 という事で、僕の家は四人家族―――
 いきなり部屋の扉が開く。
「お前には兄ちゃんが一人いるぞ」
「は?」
「今は吸血鬼ハンターとしてこの世の全ての吸血鬼を根絶やしにしようとしてるらしい」
 あまりの衝撃に声が出ない。
「そして最近はこの辺りに来てるらしい。一応リヒトも吸血鬼の端くれ、出会ったら殺されるかもしれないから気を付けろよ」

 この時、本当に出会うことになると僕は思っていなかった―――
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