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第12壊 異世界の強者①

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「その坊主、マジに魔王なのか! カッカッカ! いやぁさっき尋常じゃ無いオーラを放ってたからまさかとは思ったが、本当にそうだとは思わなかったよ!」

 何も本気にすんじゃねえぞ? とばかりにサイリスは笑った。

「なんだよ、急に怖気付いたのか?」

「別に、もし売れていたらいくらになったか考えちまった――だけだよ!!」

 煙草の煙が一瞬揺れた。

 首筋を冷たい刃物の様な何かが伝う感覚が襲う。

「――――ッ!!」

 咄嗟にサイリスとの距離を置き首に手を当ててみる。

 すると俺の手の平からは、俺の首が斬れかかった事で流れ出たであろう血液がぬるりと手首を伝った。

「――あら、確かに首を刎ね飛ばしたと思ったんだけどなぁ......兄ちゃん、勘がいいな」

「俺、目は良い方だと思うんだけどな......何をした?」

「え、ヤだよ。言ったらおじさんの切り札なんかす~ぐ対策してきそうだし」

 とぼけた顔をしながら頭の上で両手をヒラヒラとサイリスは振る。

 何が攻撃の合図だ!? 俺の首を斬った時とどの行動が一致している?

 あの時は左手人差し指と中指で煙草を挟み、目線もそっちを向いていた。右手はコートのポケットに突っ込んでいた......今のサイリスと一致している行動は無い。

 そして予備動作が必要では無い可能性もある! 

 有効射程は? 範囲は? 攻撃力は? そもそも本当に不可視の斬撃なのか? 

 分からないからこそ! 次の行動で全てを見極める!!

「シッ――――ッ!!!!」

 短く息を吐き、サイリスとの距離を詰める。

 サイリスとの距離、目測5メートル。

 ここがさっき俺の首を斬った攻撃を受けた位置。サイリスは俺の行動をしっかりと見てはいるが何かをしてくる様子は無い。

 あと2メートル。

 俺が知る限り本物の刀剣で、踏み込み無しで攻撃が届くであろう限界の距離。
 
 まだサイリスに動きは無い。

 1メートル。

 ここまで来てしまえば俺の拳の方が早く届く! 一撃で決着を付ける――――

「――この動きだと、兄ちゃんはおじさんの切り札が“不可視の斬撃”だと考えた状態で向かって来てると見えるなぁ......」

「何が言いたい!?」

「まぁ、兄ちゃんの考える“可視の斬撃”は、所詮剣筋が見えてるに過ぎないって事だな」

 身体の前面に乱雑な切り傷が刻まれた。一つ一つの傷はそこまで深い物では無いが、それが百を超えると痛みは焦げのように俺の身体にこびり付く。

「グッ......あァ!!」

 身体の表面しか斬れていないとは言え、傷が多過ぎる......

「分かったかい? おじさんの切り札」

 息を荒くする俺を見て、サイリスは御満悦だ。

「ああ......コレがお前の切り札なら、余裕でぶっ飛ばせるって事は分かった!」
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