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第50壊 賭け

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「腕が......再生しやがった......」

 コーガザスは新しい腕の感覚を確かめるように上下左右へ振り回す。

「無論、デメリットはある。少し疲れるんだ......だから、こうして魔力を解放した訳だが......どうする? まだやるか?」

 立ち昇り、全身に纏われた魔力......吹き出る量も圧力も今までの誰よりも桁違い! これがコーガザスの全力!!

「当然やるに決まってんだろ!! 俺だってようやく身体が慣れてきた所だ!」

 いや、正直ギリギリ? だが動きは目で追えるようになってきた! 後は馬鹿みたいな膂力さえ何とか出来れば......

「やはりそうだな......そうでなければ面白く無いぞ......トウヤよ」

 踏み込みで地面が爆発した!? いやそれより!! 速さが上がって――――

 動きを捉えきれない!!?

「ヴッ............!!?!?」

 蹴りのめり込んだ腹部から“ブチブチ”と聞いた事が無い音がする。内蔵でも破裂したのか、口から血が溢れ出た。

 パワーも上がってるのか!! 魔力を纏っているから!

「ヴッ......ガァァァァァ!!!!」

 無理矢理力を入れて殴っても、当然のように傷は付かない。

「闘気を纏ったオレの攻撃を、闘気での防御無しで受けて尚意識を保つとは......正直驚いたぞ」

「闘気......? なんだそりゃぁ......初めて聞いたな」

「闘気とは全身に魔力を纏わせ、直接攻撃や防御に転用する技術の事だ。達人になればソレをエネルギーの塊として飛ばす事も可能だと聞く。要は魔力を言い換えただけだ。本質は殆ど変わらん」

「なるほどねぇ......」

 つまり、俺の考えは当たってた訳だ。俺も使えるようにならねぇかなぁ......

 まぁ考えてもしょうがない。今はコーガザスとの闘いに集中!

「――――まだ構えるか。お喋りも存外楽しかったのだが......もう良いのか?」

「クッソ腹痛てぇから喋ってると痛みが増して困るんだよ。息は整えたし、今度はこっちから行かせて貰うぜ」

「......来い」

 勝つ為に俺ができる事。それは知ること。コーガザスの身体を......魔力を......闘気を! 

「オッ......ラアッ!!」

 俺のストレートがコーガザスの胸を穿つ......が!

「闘気を纏っていてもこれだけの衝撃......やはり凄まじいな」

「ノーダメージの奴に言われても嬉しかねぇよ!」

 今の拳が触れた時の違和感。鉄で編み込まれたネットの先にある外殻を殴っているような感覚......これが闘気!

......あれ、確か前世でも似たような感覚があったような......なんだっけ?

――――そうだ! 親父との組手だ!! 親父を殴ろうとするといつもそんな感じで弾かれてた!(殆ど攻撃が当たった覚えないけど)

 つまり、親父は闘気を使える......可能性がある! ならば魔力が無い俺も出来るはず!

 久しぶりに、俺も教えに忠実にやってみるか!

「雰囲気が変わった......何か掴んだな?」

「ああ。お前でぶっつけ実践編だ」

 俺の仮説が正しいなら、俺は......俺達は。

 何倍にも強くなれる。

「コーガザス! 思い出させてくれてありがとう」

 一か八か。ここに俺の全てを叩き込む。

四木ニニギ流対ジン式格闘術】“序”

 出来るか賭けだが......やってみるか......
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