72 / 73
第72壊 究極の切り札②
しおりを挟む
「壊し屋のぉー! 戻ったぞぉー!」
街の方からドスドスと猛スピードで走りながらガリアが帰ってきた。
「早速始めるぞ」
「何を!?」
説明も無しに何かされるのは怖いよ!? 動けないんだもん!
「説明はやりながらする! いくぞ!!」
ガリアはそう言うと、俺の背中に手を当てた。
――――なんだこれ!? 身体が熱い!?
「なんだこれ......!? 頭ん中に声が入ってくる!!?」
「俺の象徴は“希望”と言ってな......希望を自分に集めて一気に解放、与えることができる!」
象徴って......思い出した! ヴィフラムが使ってたやつ!
この世界の人は選ばれた人しか持ってないけど、異世界から来た人はみんな持ってるチートスキル的なやつか!
え、じゃあ、ガリアって俺の想像以上に凄い人なんじゃねぇの!?
てか、もっと早くそれ使ってれば良かったんじゃねぇの!?
俺の疑問は、すぐにガリアより解消された。
「俺の象徴は凄まじく使い勝手が悪くてな! 集めた希望は自分じゃ使えない上に与えられる人間も能力自信が選ぶんだ!! 今までに使った事だって一度しかない!」
「施術記録の少なさが不安すぎる!!」
俺の他にも能力を使われた人がいるなら、多少安全だとは思うのだが......
「そもそも、希望で俺はどうなるんだ? 強くはなりそうだが......」
「希望は自分の魔力......壊し屋の場合は闘気だな。それと融合して限界を超えた力が出せるようになる」
「上がり幅はまちまちだがな」とガリアは続け、豪快に笑った。
希望の注入(?)開始から一分が経過した。目に見えて変化が出始める。
対ジン式格闘術の反動が完璧に消え去ったのだ。
これで闘気をもう一度使う事が出来る。
「――――なぁ壊し屋......お前さっき、自分が何の為に頑張ってるのか分からない......って顔してたよな」
「なんだよ突然......俺は俺が真の壊し屋だって証明する為に――」
「確かにそれもあるだろうな。だが、それだけじゃ足りないんだろ? 人間は理由無く頑張る事は難しいからな......それは異世界人でも同じだろう?」
ガリアは俺の中身を全て見透かしたように、俺にしか聞こえない静かな声で話した。
この世界に来て、色んな奴と闘った。勝って、相討ちで、逃げられて......魔王を最強に育てるという野望も出来た。
だからその野望を邪魔する奴は何であろうと等しく俺の敵......な訳だが、俺は知ってしまった。いや、最初から知っていたが知らないフリをしていた。
俺一人が最強な訳じゃないと。
ガリア風に言うなら、その事実が理由をかき消す程にどうしようもなく受け入れ難いものだった。
最強とは常に一人だ。俺は少なくともそう思っている。
だから迷っている。最強じゃない俺が、魔王を最強になんて出来るのかを。
「――――お前の事は街の殆どの奴らが知らなかったぞ」
「急になんのカミングアウト!?」
「だが、“この街を守る為に戦ってくれている”という事実で、俺に希望を託してくれた」
そうか......この俺の中に溢れる声はファストレアに住む人達の声か......
「俺はお前が何に迷っているのかの深いところは知らん!......だが、今回だけはお前に希望を託した街のみんなの為に頑張ってみるのもアリじゃないか?」
全ての希望を与え終わったのか、ガリアは背中をバシンと叩いた。振り向けば、豪快な笑顔を崩していなかった。
全身に満ちるエネルギー......これが希望......
この世界を滅ぼす魔王を育ててるってのに、その張本人に希望を託すとか変な奴らだぜ!!
「もう迷いはないか?」
「ああ。暖かくて最高の気分だ」
もう気にする事は何も無い。
「いくぞお前らァァァ!!!!」
「「「おおっ!!!!」」」
時間もないんだったな。
じゃあ、一撃で決めるとするか。
街の方からドスドスと猛スピードで走りながらガリアが帰ってきた。
「早速始めるぞ」
「何を!?」
説明も無しに何かされるのは怖いよ!? 動けないんだもん!
「説明はやりながらする! いくぞ!!」
ガリアはそう言うと、俺の背中に手を当てた。
――――なんだこれ!? 身体が熱い!?
「なんだこれ......!? 頭ん中に声が入ってくる!!?」
「俺の象徴は“希望”と言ってな......希望を自分に集めて一気に解放、与えることができる!」
象徴って......思い出した! ヴィフラムが使ってたやつ!
この世界の人は選ばれた人しか持ってないけど、異世界から来た人はみんな持ってるチートスキル的なやつか!
え、じゃあ、ガリアって俺の想像以上に凄い人なんじゃねぇの!?
てか、もっと早くそれ使ってれば良かったんじゃねぇの!?
俺の疑問は、すぐにガリアより解消された。
「俺の象徴は凄まじく使い勝手が悪くてな! 集めた希望は自分じゃ使えない上に与えられる人間も能力自信が選ぶんだ!! 今までに使った事だって一度しかない!」
「施術記録の少なさが不安すぎる!!」
俺の他にも能力を使われた人がいるなら、多少安全だとは思うのだが......
「そもそも、希望で俺はどうなるんだ? 強くはなりそうだが......」
「希望は自分の魔力......壊し屋の場合は闘気だな。それと融合して限界を超えた力が出せるようになる」
「上がり幅はまちまちだがな」とガリアは続け、豪快に笑った。
希望の注入(?)開始から一分が経過した。目に見えて変化が出始める。
対ジン式格闘術の反動が完璧に消え去ったのだ。
これで闘気をもう一度使う事が出来る。
「――――なぁ壊し屋......お前さっき、自分が何の為に頑張ってるのか分からない......って顔してたよな」
「なんだよ突然......俺は俺が真の壊し屋だって証明する為に――」
「確かにそれもあるだろうな。だが、それだけじゃ足りないんだろ? 人間は理由無く頑張る事は難しいからな......それは異世界人でも同じだろう?」
ガリアは俺の中身を全て見透かしたように、俺にしか聞こえない静かな声で話した。
この世界に来て、色んな奴と闘った。勝って、相討ちで、逃げられて......魔王を最強に育てるという野望も出来た。
だからその野望を邪魔する奴は何であろうと等しく俺の敵......な訳だが、俺は知ってしまった。いや、最初から知っていたが知らないフリをしていた。
俺一人が最強な訳じゃないと。
ガリア風に言うなら、その事実が理由をかき消す程にどうしようもなく受け入れ難いものだった。
最強とは常に一人だ。俺は少なくともそう思っている。
だから迷っている。最強じゃない俺が、魔王を最強になんて出来るのかを。
「――――お前の事は街の殆どの奴らが知らなかったぞ」
「急になんのカミングアウト!?」
「だが、“この街を守る為に戦ってくれている”という事実で、俺に希望を託してくれた」
そうか......この俺の中に溢れる声はファストレアに住む人達の声か......
「俺はお前が何に迷っているのかの深いところは知らん!......だが、今回だけはお前に希望を託した街のみんなの為に頑張ってみるのもアリじゃないか?」
全ての希望を与え終わったのか、ガリアは背中をバシンと叩いた。振り向けば、豪快な笑顔を崩していなかった。
全身に満ちるエネルギー......これが希望......
この世界を滅ぼす魔王を育ててるってのに、その張本人に希望を託すとか変な奴らだぜ!!
「もう迷いはないか?」
「ああ。暖かくて最高の気分だ」
もう気にする事は何も無い。
「いくぞお前らァァァ!!!!」
「「「おおっ!!!!」」」
時間もないんだったな。
じゃあ、一撃で決めるとするか。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる