おれより先に死んでください

星寝むぎ

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おれより先に、

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 いくよ、とささやいて、うしろに猛ったそれを宛がわれる。その途端、食べるみたいにそこがひくついた。欲しい欲しいと吸いつくみたいだ。薄いゴムが憎らしいが、涙が出そうなほど恥ずかしくて、気がおかしくなりそうなほどそれだけで気持ちがいい。

「恭兄? 痛い?」
「痛くない、全然。朝陽、ぎゅってして。そんで、入れて。大丈夫だから」
「……うん」

 ゆっくりと掻き分けるように朝陽が入ってくる。指で触れられてよかったところは、もっと大きくて熱いもので抉られれば腰が跳ねた。奥は解れきっていないのか、狭くなると朝陽が止まる。違う、まだもっと奥に来てほしい。だがねだる前に、朝陽が少し腰を引いてそっと穿つ。その度に、甘ったるい声が喉から溢れてしまう。朝陽は歯を食いしばりながら、「ごめん」とくり返す。傷つけてしまうと憂いて、本能と戦っているのだろう。でもその本能が恭生の胸を満たして、瞳に涙を浮かばせる。

「いい、嬉しい、朝陽、もっと」
「くっ、恭兄……は、あ、入ったよ」
「うんっ、うん」
「っ、恭兄? 泣いてるの?」
「だって……こんな幸せだと思わなかった」
「恭兄……」

 頭を撫でると、朝陽がくちびるをきゅっと噛むのが見える。我慢しなくていいのに。指をそこに滑らせると、ぐすんと鼻を啜るのがかわいい。

「はは、朝陽も泣いてんじゃん」
「うん。俺も最高に幸せだから」

 自分の中に朝陽がいる。圧迫感はつよく、苦しさも正直ある。だがそれ以上に、驚くほどの幸福感が体中を駆け巡っている。自分の体では容量オーバーで、涙になってしまうのだろうか。

 奥まで埋めたまま、朝陽が体を折り曲げ抱きしめてくる。体内も、肌も朝陽でいっぱいだ。静かに溢れ続ける涙や、首筋や耳、体中にキスが降ってくる。朝陽を愛しく想う度、きゅうと腹が蠢いて朝陽のそれを味わってしまう。

「は、恭兄……そんな締めたら、やばい」
「うん、でも、勝手になる。ん……なあ、朝陽」
「ん?」

 朝陽が中にいるだけで気持ちがいい。ずっとこうしていたい。それでも、朝陽に揺さぶられてもっともっと高みを見たくなる。こんな欲が自分の中にあるなんて知らなかった。

 初めての自分に戸惑うのに、それを他の誰でもない朝陽に見せるなんて。そうも思うけれど、朝陽だからこそ見てほしくなる。

「動いて」
「……いや、もうちょっと待ったほうが」
「うん、でも……朝陽に、されたい。さっき奥まで来る時、ぐっぐってされたの、気持ちよかった」
「っ、もう、恭兄、やばいって。イきそうになった」

 恭生の首を食みながらしばらく呻いた後、朝陽は体を起こした。足を抱え上げられ、恭生は思わず喉を鳴らす。
 見下ろしてくる男らしさ、それでいて潤んだ瞳には幼気がある。どちらの朝陽もどうしようもなく好きだ。

「ゆっくり動くから」
「うん……あっ」
「気持ちいいところ当たる? ここ?」
「んっ、そこ、やばい」
「ん……じゃあここ、いっぱいする」

 持ち上げている足に口づけながら、朝陽は恭生の反応を逐一見逃さない。つい声が漏れればそこばかり責め立ててくるのに、スローな動きがじっくりと朝陽の熱を伝えてくる。

「朝陽、あさひ……っ、は、好き」
「っ、うん、俺も好き、恭兄、好きだよ」
「あ、奥! 奥も、きてほし」
「ん……いくよ」
「あっ、ああっ」

 抜け落ちそうなほど一旦腰を引き、それから奥まで突きこまれる。中をじっくりと味わわれているようなストローク。感じ入った声を漏らす朝陽が、きゅっと眉間を寄せている。それに気づいた瞬間、恭生の体は打ち震え、白濁したものがとろとろと力なく零れた。

 中の感覚も、視界も、全てが気持ちいい。五感全てを朝陽に明け渡しているのだ。涙が溢れて仕方なく、それを朝陽が吸い上げる。

「あー、あさひ、きもちいい、あさひ」
「はあっ、恭兄、俺も、すごい」
「奥、もっとして、あさひ」
「んっ、ここ?」
「ひっ、うう、あさひぃ」

 奥に留まって、そこをぐにぐにと押しこまれる。狂ったように熱い中が、朝陽を離すまいとしているのが分かる。ひどく恥ずかしくて、頭を振り乱したくなる快感が襲ってくる。

「あ、なんで、さっきイッたばっか、なのに! あさひ、まって」
「でも、恭兄も自分でしてるよ」
「……へ?」
「腰浮かせて、はあ……俺のにぐりぐりってこすりつけてる」
「うそ……あ、はずかし、あさひ、見るなぁ」
「だめ。見る。だって嬉しい。あー……恭兄、俺もまたイく」

 知らず知らずのうちに浮いていた腰を這って、朝陽の手が背骨を昇っていく。触れられて初めて、ひどく汗をかいていることに気づく。もう体の中も外もどろどろだ。
 このまま溶けて、一緒になったっていい。いや、もうなっているのかもしれない。そう思うほどに、境界線は曖昧で。深くつながっている事実に改めて気づき、脳天までしびれるような快感が走る。

「あ、あさひ、あさひ、イ……っ!」
「はっ、恭兄、恭兄!」

 果てる瞬間に腰を掴まれ、朝陽は今まででいちばん奥を穿った。歯を食いしばりながら天を仰ぎ、余韻を味わうようにゆったりと腰を送ってくる。その姿にまた、恭生の中はきゅうと疼く。

「朝陽……」
「恭兄……」

 両手を上げると、腕の中に朝陽が落ちてくる。抱きしめ合うと、荒い息に弾む胸がぶつかる。喋るのも億劫なくらい体はくたくたで。それでも愛しさのほうが大きく勝り、朝陽の髪を撫でながら頬に口づける。

「やばかった……」
「ん、オレも」
「恭兄がこんなえっちだなんて知らなかった」
「ちょ、お前なあ……でも、オレも知らなかった。こんなにしたいって思ったのも、気持ちいいのも、なかったから」
「え。マジ?」

 体を少し起こし、恭生の頭の横に手をつき瞳の中を覗いてくる。羞恥心はもう弾けてしまったので、そのくらいでは恭生も物怖じしない。見つめ返し、朝陽の両頬を挟んでぽかんと開いたくちびるを舐める。

「マジだよ。その、今までは全然したいってならなくて……それで呆れられたところもあったんだろうな」
「恭兄がえっちになるの、俺だけ……ってこと?」
「うう、言い方……でも、うん。そういうこと」

 ああ、また泣きそうな顔をしている。眉をくしゅっと下げて、くちびるを噛みしめる朝陽がかわいい。キスでくちびるをほどいてやると、愛しさにまた腹の奥がきゅうと狭くなる。すると、まだ中にいた朝陽が困ったように唸る。

「ちょ、だめだって恭兄……またしたくなる」
「うん。する?」
「……っ、したい」
「じゃあ、しよ?」

 ゴムを代えると言って、朝陽が体内から抜けていく。その状態が通常なのに、自分の一部を失ったみたいでひどく寂しい。

 ああ、どうして自分たちは同じ人間じゃないのだろう。同じじゃないから、四六時中一緒にいることは叶わない。
 だが、別の人間だからこんな風に触れて愛し合うことができる。好きで好きで仕方ないほど愛したら、その分だけ切なさも強くなってしまうようだ。

 愛ってものは厄介だなとぼんやり思いながら、恭生は朝陽の名前を呼ぶ。

「朝陽、早く」
「うん、待って。これ結ぶの難しい」
「待てない。ここ、寂しいから。なあ、早く」
「……っ、恭兄~」

 自分のお腹を撫でながらねだると、急いだ朝陽が見下ろしてくる。目を見つめながら、また中へと入ってくる。ゆっくりと満たされていく感覚に、はくりとくちびるが瞬く。そのまま顎を上げて、キスをして。また泣きそうだと朝陽が言うから、共鳴してツンと冷えた鼻を恭生も啜った。
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