【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ

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推しがクラスメイト?

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 桃真が指し示したのは、オレのリュックについているペンギンくんのキーホルダーだ。仕事の時のボディバッグにつけているものとは、また別のペンギンくんだけど。まずい、と咄嗟に思った。コーヒーショップに行く時、注文以外で唯一、彼と会話する内容だからだ。

 桃真がKEYキーを知っているのかは分からない。でももしも知っていて、顔を隠さず店に行くオレを、KEYだと認識していたとして。今ここにいるオレが、その客だと桃真に気づかれたら――高校の人間にモデルをしているとバレてしまう、ということだ。それだけは絶対に避けたい。

 たかがキーホルダーひとつでバレるはずがない、と思いつつ身構える。そんなオレをよそに、桃真は自分の席に腰を下ろした。膝に頬杖をつきながら「触っていい?」と断りを入れて、ペンギンくんに触れてくる。

「これ、かわいいよな」
「……うん、かわいいよね」
「好きなんだ?」
「……うん」
「そっか。ペンギンくん好きな人に会ったの、2回目」

 桃真の瞳が、まっすぐにオレを映す。前髪で顔は見えていないはずなのに、なぜか全てを見られている気がしてくる。心臓がドクンと大きく拍を打つ。

「へ、へえ。そうなんだ。友だち?」
「ううん、友だちではない」
「……そっか」

 桃真が知るペンギンくんを好きなもうひとりは、間違いなく客の時のオレのことだろう。でも、同一人物だとは気づかれていないようだ。桃真に聞こえないように、そっと安堵の息をつく。

 ひと安心したところで、推しがクラスメイトでしかも隣の席に現れたことに改めて驚く。少なくともこの学校の生徒であるオレは、他の同級生たちからの扱いがそうであるように、疎ましく思われる可能性が高い。だとすれば、出逢いたくなかった。

 俯いて考えこんでいると、担任の教師が入ってきて自己紹介を始めた。さっそくだけど、と配られたのは進路調査の紙だ。あちこちでブーイングが起こる中、名前だけでも書いておこうとリュックを開く。でもそこに、ペンケースはなかった。しまった、家に忘れてきてしまったようだ。

 今日は授業はないし、まあいいか。家で書けばいいのだし。紙を折ってリュックにしまおうとすると、肩をツンツンとつつかれた。桃真だ。推しを目に入れる覚悟をしながら、隣の席に視線を向ける。

「もしかして、ペン忘れた?」
「あ……うん」

 口元に手を添えて、ちいさな声で尋ねられる。嘘をついても仕方ないと頷くと、桃真は自身のペンケースから一本のペンを取り出した。

「これ、使って」
「え……いいの?」
「もちろん」
「ありがとう……」

 クラスメイトと筆記具を貸し借りすることすら、オレにとっては今や全くないことだ。優しさにうろたえつつ、ペンを受け取る。紙を再度広げ、名前を書きこもうとした時。そのペンのデザインに、静かに目を見張った。見覚えがある。エメラルドグリーンのボディには、“Midori Hibiya 1st photobook”と白文字で刻印してある。

 事務所の先輩である日比谷ひびやみどりくんの、写真集発売時に行われた握手会のノベルティだ。余ってるからあげる、と本人からもらい、オレも1本持っている。本来は、握手会に参加した人しか入手できないレアものだ。
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