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答えはこの胸に
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用意されていた衣装は発売時期に合わせ、秋を彷彿とさせるブラウンを基調としたものだった。テーラードジャケットの襟やポケットなどがチェック模様になっていて、きちんとした印象にかわいらしさが混じる。それぞれに違ったアクセントがあしらわれているが、ふたりお揃いのものだ。
オレの前髪はセンターパートに分けられ、全体的にヘアアイロンで巻き緩くウェーブがかかっている。翠くんの鮮やかな髪は無造作にセットされることが多いが、今日は流す程度にシックに整えられている。
「そろそろ始めようか」
「はい!」
カメラマンから声がかかり、大きく返事をする。黄色のカラーバックの中心にはソファが置かれていて、翠くんと並んで腰を下ろす。
「じゃあまずは、いつもみたいにイチャイチャしてもらおうかな」
「い、いつもみたいにイチャイチャ?」
「はは、KEYめっちゃびっくりしてる」
「だって、オレたちそんなだった?」
「そんなだったってことなんじゃん?」
「マジか……」
カメラマンの言葉につい目を丸くすると、翠くんがけらけらと笑った。イチャイチャなんてした覚えはないのに。日頃からそんな風に見えているのだろうか。釈然としないが、翠くんとの会話に多くのスタッフたちが笑い、空気が和んだのが分かる。
このあたたかい人たちに、ここに立つことを選んでもらえたのだ。改めて背筋が伸びる。望まれているものを、いや、それ以上のものを表現したい。
ひとつ深呼吸をして、翠くんと目を合わせる。すると翠くんがにやりと笑って、それこそいつものように肩に手を回してきた。翠くんの纏う空気が、一瞬で変わった。見惚れているだけではダメだ。シャッターが次々と切られるのを耳に、ポーズを少しずつ変えてゆく。
「どう? 緊張とけてきた?」
「うん、大分」
オレにだけ聞こえるボリュームで、翠くんが声をかけてくれる。
「よかったじゃん」
「でも、ちゃんとBLに見えてるかな」
「見えてるんじゃない? いつもイチャイチャしてるらしいし?」
「それ、本当に身に覚えがないんだよね」
「俺たちにとっては普通のことだもんな。んー、じゃあどうせだしもっと近づくか」
「え?」
もっとだなんて、これ以上どうやって? そう疑問に思うほど、密着していたのだけれど。翠くんの指先がオレの顎をとらえ、グッと顔を寄せてきた。もう片手では、腰を抱かれる。角度によってはキスをしているように見えるかもしれない。突然のことに思わず体が強張ると、妖しく笑んだ翠くんがささやく。
「俺のこと、今は希色の恋人にしてくれる?」
「恋人?」
「難しい?」
「付き合ったことないから、どうしたらいいのかなって」
「じゃあ、好きな人は?」
「……だから、いないってば」
「今頭に浮かんだ人もいない?」
「それは……」
好きな人というワードに、本当はすぐ桃真の顔が浮かんだ。瞬間、頬がじわりと熱くなる。それが功を奏したのか、
「ふたりとも、そのままこっち視線ちょうだい! うん、すごくいいね」
と、カメラマンが興奮したように声を張り上げた。誘われるままにカメラを見た後、また翠くんと見つめ合う。
「希色、すごくいい顔してる。さっき浮かんだ人のこと、俺に重ねていいから。その調子」
「翠くん……」
翠くんの妖艶な瞳に射抜かれている。思わずその頬に手を伸ばし、さらに顔を近づける。本当に恋人だったら、翠くんのこんな表情、きっと誰にも見せたくないだろうな。そんな想いが胸を過ぎる。
ああ、オレは、この感覚を知っている。そうか、この心が――
感じたままに、オレたちを切り取ろうとする第三者であるカメラを睨みつける。意図が通じたのか、「それいいね」とつぶやいて翠くんも鋭い視線をカメラに向ける。このシチュエーションにのめり込んでいくほどに、シャッター音の後ろで上がるスタッフたちの歓声がどんどん遠くなるようだった。
オレの前髪はセンターパートに分けられ、全体的にヘアアイロンで巻き緩くウェーブがかかっている。翠くんの鮮やかな髪は無造作にセットされることが多いが、今日は流す程度にシックに整えられている。
「そろそろ始めようか」
「はい!」
カメラマンから声がかかり、大きく返事をする。黄色のカラーバックの中心にはソファが置かれていて、翠くんと並んで腰を下ろす。
「じゃあまずは、いつもみたいにイチャイチャしてもらおうかな」
「い、いつもみたいにイチャイチャ?」
「はは、KEYめっちゃびっくりしてる」
「だって、オレたちそんなだった?」
「そんなだったってことなんじゃん?」
「マジか……」
カメラマンの言葉につい目を丸くすると、翠くんがけらけらと笑った。イチャイチャなんてした覚えはないのに。日頃からそんな風に見えているのだろうか。釈然としないが、翠くんとの会話に多くのスタッフたちが笑い、空気が和んだのが分かる。
このあたたかい人たちに、ここに立つことを選んでもらえたのだ。改めて背筋が伸びる。望まれているものを、いや、それ以上のものを表現したい。
ひとつ深呼吸をして、翠くんと目を合わせる。すると翠くんがにやりと笑って、それこそいつものように肩に手を回してきた。翠くんの纏う空気が、一瞬で変わった。見惚れているだけではダメだ。シャッターが次々と切られるのを耳に、ポーズを少しずつ変えてゆく。
「どう? 緊張とけてきた?」
「うん、大分」
オレにだけ聞こえるボリュームで、翠くんが声をかけてくれる。
「よかったじゃん」
「でも、ちゃんとBLに見えてるかな」
「見えてるんじゃない? いつもイチャイチャしてるらしいし?」
「それ、本当に身に覚えがないんだよね」
「俺たちにとっては普通のことだもんな。んー、じゃあどうせだしもっと近づくか」
「え?」
もっとだなんて、これ以上どうやって? そう疑問に思うほど、密着していたのだけれど。翠くんの指先がオレの顎をとらえ、グッと顔を寄せてきた。もう片手では、腰を抱かれる。角度によってはキスをしているように見えるかもしれない。突然のことに思わず体が強張ると、妖しく笑んだ翠くんがささやく。
「俺のこと、今は希色の恋人にしてくれる?」
「恋人?」
「難しい?」
「付き合ったことないから、どうしたらいいのかなって」
「じゃあ、好きな人は?」
「……だから、いないってば」
「今頭に浮かんだ人もいない?」
「それは……」
好きな人というワードに、本当はすぐ桃真の顔が浮かんだ。瞬間、頬がじわりと熱くなる。それが功を奏したのか、
「ふたりとも、そのままこっち視線ちょうだい! うん、すごくいいね」
と、カメラマンが興奮したように声を張り上げた。誘われるままにカメラを見た後、また翠くんと見つめ合う。
「希色、すごくいい顔してる。さっき浮かんだ人のこと、俺に重ねていいから。その調子」
「翠くん……」
翠くんの妖艶な瞳に射抜かれている。思わずその頬に手を伸ばし、さらに顔を近づける。本当に恋人だったら、翠くんのこんな表情、きっと誰にも見せたくないだろうな。そんな想いが胸を過ぎる。
ああ、オレは、この感覚を知っている。そうか、この心が――
感じたままに、オレたちを切り取ろうとする第三者であるカメラを睨みつける。意図が通じたのか、「それいいね」とつぶやいて翠くんも鋭い視線をカメラに向ける。このシチュエーションにのめり込んでいくほどに、シャッター音の後ろで上がるスタッフたちの歓声がどんどん遠くなるようだった。
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