【完結】君とカラフル〜推しとクラスメイトになったと思ったらスキンシップ過多でドキドキします〜

星寝むぎ

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脚光

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 放課後になり、駅までの道を桃真と歩いた。改札前で別れ、自宅方面へ向かう電車に乗りこむ。窓の外を眺めながら思い出すのは、今日一日の桃真のことだ。

 朝以降、桃真の様子は一見するといつもと変わらなかった。でもいつもより、スキンシップが多かったように思う。先月の、表紙が公開された次の日を思い出した。頭を撫でられる時も、手に触れられる時も手つきがゆったりとして、まるで味わわれているような感覚。視線を感じて桃真のほうを向けば、眉をくしゅっと寄せた弱々しい笑顔だった。その表情に、オレも苦しくなった。

 きっと、翠くんのことを想っていたのだろう。もしかすると、そのさみしさをオレに甘えることで紛らわせていたのだろうか。でもなにもしてあげられなくて、むしろ自分がそんな顔をさせる理由なわけで。それでもこの手を離したくないと、何度も握り返した。


「おはようございます」

 自宅で着替えを済ませ、すぐに事務所へと向かった。挨拶をすると、あちこちから「表紙おめでとう!」と声が上がった。優しい人たちに恵まれていると、何度だって噛みしめる。ひとりひとりに丁寧にお礼を伝えていると、奥のほうから翠くんがやってきた。

「希色~奥で社長たち待ってんぞ」
「うん、今行く」

 翠くんはなぜかヘアワックスを手に持っていた。オレの歩くスピードに合わせ、後ずさりながらオレの前髪をいじり始める。事務所に来る時は、学校に通う姿とはなるべく変えるようにしている。髪も簡単にセットしてきたのだけど、翠くんの手によってしっかりセンターパートにされてしまった。翠くんはいたく満足げだ。

「よし、希色のかわいい顔見えた」
「日比谷くん、まるでKEYくんの専属ヘアメイクみたいだね」
「マジ? 副業でやってみようかな」

 親しいからこそのスタッフの冗談に、翠くんも調子よく返事をしている。

「KEYくん、待ってたよ! こっちこっち」
「前田さん、社長。おはようございます」
「おはようKEYくん」

 手招かれるままに、ソファへ腰を下ろす。向かいに社長と前田さん、隣には翠くん。自ずと背筋が伸びるオレに、社長が嬉しそうにほほ笑んだ。

「改めて、表紙デビューおめでとう。売れ行きも絶好調だそうだよ」
「ありがとうございます!」
「編集部のほうから連絡があってね、売り切れの書店も多いみたいで。雑誌では異例のことなんだけど、増刷が決まったらしい。これはすごいことだよ翠くん、KEYくん! 本当におめでとう!」 
「やったな希色~」
「うん……すごいね翠くん」

 増刷だなんて、まさかそんなことになっているとは考えもしなかった。翠くんが手をかかげてきて、ハイタッチをする。髪をくしゃくしゃと撫でられて、口元が緩む。

「今日ね、クラスの女の子たちもすごく話題にしてたんだ。翠くんのファンの子たちが、キャーキャー言ってたよ」
「マジ? さすが俺。で? KEYのことはなんて?」

 鼻高々といった様子のあと、柔らかな声のトーンで翠くんはオレのことを尋ねてきた。オレも話題になっていると確信している聞き方が、強い心をもたらしてくれる。

「表紙が公表された時、初めて女の子たちからKEYって名前が出て、すごくびっくりした。今日も褒めてもらえてて……嬉しかったよ」
「そっか。希色~よかったな!」
「うん」

 無事に発売日を迎えられた安堵と、喜びでいっぱいになる。すると前田さんが、意味深な視線を送ってきた。

「KEYくん、これで話は終わりじゃないんですよ」

 声もなにかを企んでいるような、今まで聞いたことのないトーンだ。

「そうなんですか?」
「そうなんです! 社長、お願いします」
「ああ。KEYくん、今日は大切な話があるんだ」
「……はい」

 翠くんのほうに向いていた体を、改めてきちんと正す。

 五十代らしい社長は、さすがモデル事務所の社長といったところか、端正な顔立ちをしている。その顔にまっすぐに見つめられると、つい緊張してしまう。ごくりと喉を鳴らし、続く言葉を待つ。
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