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秘密をあげる
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「ねえ桃真、ここまでで大丈夫だって」
「だーめ。ちゃんと送らせてよ」
「でも、さすがに遅くなるし」
「ここまで来たら、ちょっとくらい別に変わんないだろ」
「そうかもだけど……」
オレの家の最寄り駅に着いた。今は改札を出たところで、桃真と押し問答中だ。もう21時を過ぎている。桃真だって高校生なのだから、これ以上遅くなるのは絶対によくないのに。オレの家の前まで送ると言ってきかない。
「希色、頼む。もうちょっと希色と歩きたい」
「う……それはオレも、だけど」
「じゃあ決まり。家はどっち? こっち?」
「もー……うん、そっち」
「はは、当たった。な、また手繋いでいい?」
「……ん、いいよ」
こちらへ差し出してくれる手に、オレも手を重ねる。言いくるめられた気もするけれど、もうオレの負けでいい。だって、好きだから。もっと一緒にいたいのはオレのほうこそだ。
同じ電車から降りた人たちは、もう辺りにはいない。静かな夜道に、桃真とふたりきりだ。
「桃真、ありがとう」
「ん? なにが?」
「さっき、帰ったほうがいいって言ったけど。こういうの初めてで、本当は楽しいんだ」
「こういうの?」
「友だちと夜にご飯食べて、こうやって一緒に帰ってるの」
「そっか」
「うん」
こんなこと、同世代の人たちには些細な日常なのかもしれない。でも、オレにとってはひとつひとつが新鮮だ。噛みしめながら、桃真の手の温度を感じながら歩く。
「オレの家、この先曲がったとこ」
5分ほど歩いたところで立ち止まり、すぐそこの角を指差す。名残惜しさにため息をそっとつきながら、隣の桃真を見上げる。するとそこには、眉間をぎゅっと寄せた桃真の顔があった。
「……桃真?」
オレは思わず息を飲んだ。どうしたのだろう。なにか憂うことがあるのなら、一秒でも早くオレがどうにかしてあげたい。理由も分かっていないのに、半ば無意識に桃真の頬へと手を伸ばした。すると、オレの手を覆うように桃真が手を重ねてきた。目を閉じて、甘えるみたいにオレの手に頬をすり寄せてくる。ああ、好きだな。こんな時でも、恋はひとつひとつに鼓動する。
「あのさ、希色」
「なあに?」
「俺さ、秘密があるって言ったじゃん?」
「うん。翠くんのことだったんだね」
「それもそうなんだけどさ。もうひとつ、あって」
「もうひとつ……あ、そっか。ふたつある、って言ってたよね。保健室に連れていってくれた時」
「うん。あの時にさ、俺が秘密を明かせる時はきっと、希色ともっと仲よくなれた時……って言ったのも覚えてる?」
「あ……」
そうだ、たしかに桃真はそう言っていた。仲のいい友だちに秘密があると言われたら、落ちこむことだってありそうなのに。そんな言葉を添えてくれたから、桃真の隣で前を向いていられたように思う。
「うん、覚えてるよ」
「ん……それさ、今、言わせて。希色」
オレの両手を、桃真がきゅっと握った。深く息を吸ったかと思ったら、吐かれるそれは震えていて。その秘密を明かすために、大きな勇気がいるのだと理解するのには十分だ。
「希色」
「うん」
「俺さ……希色が好き」
「……え?」
「昨日もちょっと言ったんだけどさ。あの時、希色は友だちとしての好きだって思ったのかもしれないけど、違うからな? その……恋のほうの、好き」
「…………」
今、桃真はなんと言ったのだろう。いや、ちゃんと聞こえたのだけれど。途端にこの瞬間が現実なのかすら分からなくなる。
好きだと言ってくれた? 桃真がオレを? 本当に?
「だーめ。ちゃんと送らせてよ」
「でも、さすがに遅くなるし」
「ここまで来たら、ちょっとくらい別に変わんないだろ」
「そうかもだけど……」
オレの家の最寄り駅に着いた。今は改札を出たところで、桃真と押し問答中だ。もう21時を過ぎている。桃真だって高校生なのだから、これ以上遅くなるのは絶対によくないのに。オレの家の前まで送ると言ってきかない。
「希色、頼む。もうちょっと希色と歩きたい」
「う……それはオレも、だけど」
「じゃあ決まり。家はどっち? こっち?」
「もー……うん、そっち」
「はは、当たった。な、また手繋いでいい?」
「……ん、いいよ」
こちらへ差し出してくれる手に、オレも手を重ねる。言いくるめられた気もするけれど、もうオレの負けでいい。だって、好きだから。もっと一緒にいたいのはオレのほうこそだ。
同じ電車から降りた人たちは、もう辺りにはいない。静かな夜道に、桃真とふたりきりだ。
「桃真、ありがとう」
「ん? なにが?」
「さっき、帰ったほうがいいって言ったけど。こういうの初めてで、本当は楽しいんだ」
「こういうの?」
「友だちと夜にご飯食べて、こうやって一緒に帰ってるの」
「そっか」
「うん」
こんなこと、同世代の人たちには些細な日常なのかもしれない。でも、オレにとってはひとつひとつが新鮮だ。噛みしめながら、桃真の手の温度を感じながら歩く。
「オレの家、この先曲がったとこ」
5分ほど歩いたところで立ち止まり、すぐそこの角を指差す。名残惜しさにため息をそっとつきながら、隣の桃真を見上げる。するとそこには、眉間をぎゅっと寄せた桃真の顔があった。
「……桃真?」
オレは思わず息を飲んだ。どうしたのだろう。なにか憂うことがあるのなら、一秒でも早くオレがどうにかしてあげたい。理由も分かっていないのに、半ば無意識に桃真の頬へと手を伸ばした。すると、オレの手を覆うように桃真が手を重ねてきた。目を閉じて、甘えるみたいにオレの手に頬をすり寄せてくる。ああ、好きだな。こんな時でも、恋はひとつひとつに鼓動する。
「あのさ、希色」
「なあに?」
「俺さ、秘密があるって言ったじゃん?」
「うん。翠くんのことだったんだね」
「それもそうなんだけどさ。もうひとつ、あって」
「もうひとつ……あ、そっか。ふたつある、って言ってたよね。保健室に連れていってくれた時」
「うん。あの時にさ、俺が秘密を明かせる時はきっと、希色ともっと仲よくなれた時……って言ったのも覚えてる?」
「あ……」
そうだ、たしかに桃真はそう言っていた。仲のいい友だちに秘密があると言われたら、落ちこむことだってありそうなのに。そんな言葉を添えてくれたから、桃真の隣で前を向いていられたように思う。
「うん、覚えてるよ」
「ん……それさ、今、言わせて。希色」
オレの両手を、桃真がきゅっと握った。深く息を吸ったかと思ったら、吐かれるそれは震えていて。その秘密を明かすために、大きな勇気がいるのだと理解するのには十分だ。
「希色」
「うん」
「俺さ……希色が好き」
「……え?」
「昨日もちょっと言ったんだけどさ。あの時、希色は友だちとしての好きだって思ったのかもしれないけど、違うからな? その……恋のほうの、好き」
「…………」
今、桃真はなんと言ったのだろう。いや、ちゃんと聞こえたのだけれど。途端にこの瞬間が現実なのかすら分からなくなる。
好きだと言ってくれた? 桃真がオレを? 本当に?
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