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カラフルデイズ
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緊張した様子で、桃真が切り出してくれた。同じ気持ちだと知ってほしくて、何度もこくこくと頷く。桃真の親指が、オレの頬をやさしく撫でる。
「あー、めっちゃ嬉しい……し、すげー緊張する」
「ん、分かる。心臓壊れそう」
「うん」
肩を引き寄せられて、桃真の体とぎゅっとくっつく。ゆっくりと桃真の輪郭がぼやけたかと思うと、撫でられていた頬にやわらかなものが当たった。ああ、桃真のくちびるだ。思わずしがみつくと桃真のくちびるがまたたいて、吐息が頬を撫であげる。
「んっ」
反対の頬、鼻の先に、まぶたにおでこ。ひとつずつキスをして、
「希色……次は、ここ。いい?」
と桃真がささやく。ここ、と示されたのはくちびるだ。桃真の指先が、ふにふにと沈んでくる。
「……うん、して?」
「っ、希色……」
桃真が顔を傾けるのを見て、オレもそっと顎をあげる。触れる瞬間、くらくらして目をつむった。一瞬で離れて、だけどまたすぐにくっつく。2秒、また離れて3秒。頭の端っこで、初めてなのにこんなにたくさん、なんて慌てているオレもたしかにいる。だけど、やめられない。桃真のシャツを握りこむ。こんなに欲しがる自分を、オレは知らなかった。
キスに夢中になっていると、オレの下くちびるを桃真のくちびるが食んだ。
「んぁっ」
思わずこぼれた声が、本当に自分のものかと疑うほど甘ったるくて。今まさに恥ずかしいことをしているのに、顔がさらに熱くなる。ゆっくりキスが止まった。照れくさいとか、終わってしまってさみしいとか。様々な感情がぐるぐるして、忙しいけれど。桃真と目を合わせると、なぜだかお互いにくすくす笑いだしてしまった。抱きしめられて、そのままふたりして横になる。狭いシングルベッドの上で、ぎゅっと身を寄せ合う。
「あー、すげー夢中になっちゃった」
「うん、オレも」
「大事にするって言ったのに、このままじゃやばかったかも」
桃真の言うことが、オレにもよく分かる。あのまま止められずにいたら、もっともっと触れたくなった。キスだけじゃ足りないくらいに。まるでそれがよくないことのように桃真が言うから、オレの気持ちを伝えたくなる。
「でも、大事だから、だよね」
「ん?」
少しだけ体を起き上がらせて、両肘をベッドにつく。桃真に見上げられるこのアングルは、なんだか新鮮だ。
「大事だからしたくなるんだな、って思ったよ。桃真とキス、してて。桃真のこと好きだから、オレはその、こういうこと……したいんだなって」
「希色……」
「はは、ちょっと恥ずかしいね」
なんだかもう、ずっと心臓はうるさいし、新しい自分に出逢ってばかりで正直戸惑う。また体から力を抜いて、顔を伏せる。すると、大きな手が髪を何度も撫ではじめた。
「希色はやっぱすげーな」
「へ? なにが?」
「希色はさ、オレのおかげで変われた、って言ってくれるけどさ」
「……うん」
これはきっと、大切な話だ。もちろん、桃真が話してくれることは全部全部、大事だけれど。心を見逃さないようにと、顔を上げてその瞳を見つめる。
「希色と出逢って、俺もすげー変わったよ。川合と佐々木によくドライだとか、去る者追わずーとかって言われてんじゃん? 多分、両親のことが影響してるんだと思う。ちいさい頃から喧嘩ばっかしてるの見てて、別れて……また他の人と結婚して。子どもなりに、愛ってそんなもんか、って思ったんだろうな。だからさ、希色が初めてだったんだよ。自分から話してみたいとか、仲よくなりたいって思ったのとか」
「桃真……」
「おすすめのコーヒー聞いてくれたり、下手くそな絵喜んでくれたり。俺のすることとか中身まで見てくれる希色に救われて、好きでたまらなくなった。変わったっていうか、新しく生まれ変わった気さえする。平坦でモノクロだった毎日が、鮮やかになった。ありがとな、希色。希色に会えて、好きになってもらえて、俺すげー幸せだわ」
「っ、待、って。そんなん言われたら、泣く、って」
だってそれは、オレが桃真に感じているものそのままだ。桃真のおかげで前を向けて、仕事がいい方向に進んで、毎日が楽しくなって。今までが嘘みたいにカラフルになった。そう思えることがどれほど大きな力になるか、身を持って知っている。その心をオレからも、桃真にもたらしているだなんて。考えたこともなかった。
「はは、俺もなんか泣けてきた」
「桃真も? ほんとだ……一緒だね」
「な」
お互いの頬を両手で包みあって、ふたりして鼻をすすりながら笑う。桃真の光が、オレの中にまっすぐ落ちてくる。
ああ、オレなんか、なんて卑下することはもうできないな。だって桃真が、大好きな人がこんなに大事に想ってくれている。そんなの、胸を張るしかないじゃないか。
好きな人に好きだと言ってもらえることは、自分のことも大切にできるということなのかもしれない。きっとそれが、目の前の人に真摯に向き合うことだと思うから。
「ていうことでー」
「ていうことで?」
「もっかいキスしていい?」
「っ、もちろんいいけど……ていうことでって、どういうこと?」
「好きだから、大事だからしたくなるって希色が教えてくれたから。もうちょっと素直になろうかなって」
「あ……うん、そうだったね。えっと、オレもしたいです。桃真が好きなので」
「ん、希色」
「ん……っ」
うなじを撫でられて、オレは桃真の服をぎゅっと握って、またくり返しキスをする。感触だけで、桃真の気持ちが流れこんでくるみたいだ。オレの気持ちも、この手からくちびるから、桃真の中に入っていきますように。呼吸の合間に目が合うと、桃真が笑ってくれた。ああ、この願いはきっと叶っている。恋しい人が叶えてくれているのだと思ったら、どうしようもなくまた泣きそうになる。
大切にする、これからもずっとそばにいる。当たり前のように胸にあったそんなことを、やまないキスの合間にこっそり誓った。
「あー、めっちゃ嬉しい……し、すげー緊張する」
「ん、分かる。心臓壊れそう」
「うん」
肩を引き寄せられて、桃真の体とぎゅっとくっつく。ゆっくりと桃真の輪郭がぼやけたかと思うと、撫でられていた頬にやわらかなものが当たった。ああ、桃真のくちびるだ。思わずしがみつくと桃真のくちびるがまたたいて、吐息が頬を撫であげる。
「んっ」
反対の頬、鼻の先に、まぶたにおでこ。ひとつずつキスをして、
「希色……次は、ここ。いい?」
と桃真がささやく。ここ、と示されたのはくちびるだ。桃真の指先が、ふにふにと沈んでくる。
「……うん、して?」
「っ、希色……」
桃真が顔を傾けるのを見て、オレもそっと顎をあげる。触れる瞬間、くらくらして目をつむった。一瞬で離れて、だけどまたすぐにくっつく。2秒、また離れて3秒。頭の端っこで、初めてなのにこんなにたくさん、なんて慌てているオレもたしかにいる。だけど、やめられない。桃真のシャツを握りこむ。こんなに欲しがる自分を、オレは知らなかった。
キスに夢中になっていると、オレの下くちびるを桃真のくちびるが食んだ。
「んぁっ」
思わずこぼれた声が、本当に自分のものかと疑うほど甘ったるくて。今まさに恥ずかしいことをしているのに、顔がさらに熱くなる。ゆっくりキスが止まった。照れくさいとか、終わってしまってさみしいとか。様々な感情がぐるぐるして、忙しいけれど。桃真と目を合わせると、なぜだかお互いにくすくす笑いだしてしまった。抱きしめられて、そのままふたりして横になる。狭いシングルベッドの上で、ぎゅっと身を寄せ合う。
「あー、すげー夢中になっちゃった」
「うん、オレも」
「大事にするって言ったのに、このままじゃやばかったかも」
桃真の言うことが、オレにもよく分かる。あのまま止められずにいたら、もっともっと触れたくなった。キスだけじゃ足りないくらいに。まるでそれがよくないことのように桃真が言うから、オレの気持ちを伝えたくなる。
「でも、大事だから、だよね」
「ん?」
少しだけ体を起き上がらせて、両肘をベッドにつく。桃真に見上げられるこのアングルは、なんだか新鮮だ。
「大事だからしたくなるんだな、って思ったよ。桃真とキス、してて。桃真のこと好きだから、オレはその、こういうこと……したいんだなって」
「希色……」
「はは、ちょっと恥ずかしいね」
なんだかもう、ずっと心臓はうるさいし、新しい自分に出逢ってばかりで正直戸惑う。また体から力を抜いて、顔を伏せる。すると、大きな手が髪を何度も撫ではじめた。
「希色はやっぱすげーな」
「へ? なにが?」
「希色はさ、オレのおかげで変われた、って言ってくれるけどさ」
「……うん」
これはきっと、大切な話だ。もちろん、桃真が話してくれることは全部全部、大事だけれど。心を見逃さないようにと、顔を上げてその瞳を見つめる。
「希色と出逢って、俺もすげー変わったよ。川合と佐々木によくドライだとか、去る者追わずーとかって言われてんじゃん? 多分、両親のことが影響してるんだと思う。ちいさい頃から喧嘩ばっかしてるの見てて、別れて……また他の人と結婚して。子どもなりに、愛ってそんなもんか、って思ったんだろうな。だからさ、希色が初めてだったんだよ。自分から話してみたいとか、仲よくなりたいって思ったのとか」
「桃真……」
「おすすめのコーヒー聞いてくれたり、下手くそな絵喜んでくれたり。俺のすることとか中身まで見てくれる希色に救われて、好きでたまらなくなった。変わったっていうか、新しく生まれ変わった気さえする。平坦でモノクロだった毎日が、鮮やかになった。ありがとな、希色。希色に会えて、好きになってもらえて、俺すげー幸せだわ」
「っ、待、って。そんなん言われたら、泣く、って」
だってそれは、オレが桃真に感じているものそのままだ。桃真のおかげで前を向けて、仕事がいい方向に進んで、毎日が楽しくなって。今までが嘘みたいにカラフルになった。そう思えることがどれほど大きな力になるか、身を持って知っている。その心をオレからも、桃真にもたらしているだなんて。考えたこともなかった。
「はは、俺もなんか泣けてきた」
「桃真も? ほんとだ……一緒だね」
「な」
お互いの頬を両手で包みあって、ふたりして鼻をすすりながら笑う。桃真の光が、オレの中にまっすぐ落ちてくる。
ああ、オレなんか、なんて卑下することはもうできないな。だって桃真が、大好きな人がこんなに大事に想ってくれている。そんなの、胸を張るしかないじゃないか。
好きな人に好きだと言ってもらえることは、自分のことも大切にできるということなのかもしれない。きっとそれが、目の前の人に真摯に向き合うことだと思うから。
「ていうことでー」
「ていうことで?」
「もっかいキスしていい?」
「っ、もちろんいいけど……ていうことでって、どういうこと?」
「好きだから、大事だからしたくなるって希色が教えてくれたから。もうちょっと素直になろうかなって」
「あ……うん、そうだったね。えっと、オレもしたいです。桃真が好きなので」
「ん、希色」
「ん……っ」
うなじを撫でられて、オレは桃真の服をぎゅっと握って、またくり返しキスをする。感触だけで、桃真の気持ちが流れこんでくるみたいだ。オレの気持ちも、この手からくちびるから、桃真の中に入っていきますように。呼吸の合間に目が合うと、桃真が笑ってくれた。ああ、この願いはきっと叶っている。恋しい人が叶えてくれているのだと思ったら、どうしようもなくまた泣きそうになる。
大切にする、これからもずっとそばにいる。当たり前のように胸にあったそんなことを、やまないキスの合間にこっそり誓った。
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