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お題:恋のお相手
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「先輩たち、ほんと仲良いっすね」
「まあな。こいつらのおかげで楽しくやれてるかも」
森本と尾方はいつもこうだ。騒がしいし、やたらと構ってくる。だがこの空気感が桃輔は好きだった。劣等感でいっぱいの自分がちゃんと高校を全うできそうなのは、ふたりがいてくれたからだと感じている。
「いいな、オレもモモ先輩と同い年に生まれたかった」
「え? 俺と瀬名が同い年?」
「はい、一緒に色んなこと経験したかったです」
正直なところ、そんな風に考えたことは一度もなかった。寂しそうに眉を下げる瀬名に、桃輔の胸まできゅうと狭くなる。
「なあ瀬名、俺はお前が後輩なの、結構気に入ってる」
「え?」
「俺、部活もやってないし、そもそもあんま人と関わんないし。だからモモ先輩って呼んでくれんのも、仲良いって言える後輩も瀬名だけでさ。それって、なんかよくね?」
自分で決めた瀬名と過ごすタイムリミットが迫っているからだろうか。素直な想いを伝えたくなった。気恥ずかしくて、なんだか顔が上げられないけれど。
俯いていると、瀬名が一歩こちらへと近づく。
「モモ先輩……」
『間もなく、体育祭の開会式を始めます。生徒の皆さんは、校庭に集まってください』
だが瀬名がなにかを言いかけたところで、集合を促す放送が入った。つられるように顔を上げると、そこには意外な光景が広がっていた。瀬名の顔が赤い。
「え、どうした?」
「あー、もしかしなくてもオレ顔赤いっすよね?」
「うん」
「うわー……」
他の生徒たちがぞろぞろと校庭に向かい、森本と尾方も「じゃあお先に」と行ってしまった。自分たちも行かないと、教師に叱られてしまう。
「瀬名、俺らも行かないと」
「っす。モモ先輩」
「ん?」
「体育祭、楽しみましょうね」
「まあ、ぼちぼち」
「はは。じゃあ行きますか」
「だな」
瀬名に拳を差し出すと、そこに瀬名の拳がコツンとぶつかる。もう一度「じゃあな」と言って校庭へ歩き出せば、だがまたすぐ瀬名に名前を呼ばれた。
「モモ先輩!」
「んー?」
振り返ると瀬名は、やけに必死な顔でそこに立っていた。
「オレも……やっぱり今のままがいいっす」
「ん?」
「先輩にとっての唯一の後輩ポジション、最高だなって」
「あ。うん、だろ?」
瀬名は満足そうに頷いて、自身のクラスの列へと向かっていった。赤くしていたのが嘘のようにすぐに澄ました顔をして、友人たちとなにかを話している。
本当は、不安な気持ちばかりで今日を迎えたと言ったほうが正しい。瀬名と桜輔ふたりして実行委員になる、なんて事態は避けられたけど。全校生徒が参加する体育祭中、ふたりが出くわす可能性は十分にあるからだ。せめて真実を打ち明けるまで、その瞬間は訪れないでほしいと気が気ではない。
けれどこんな風に笑い合って楽しもうと言われてしまえば、せっかくだからそうしたいなと思えるから不思議だ。
「おーいモモー! 早く来いよー!」
「今行く!」
離れたところで手招いてくる、森本と尾方に手を挙げて応える。こういったイベントごとは好きじゃないまま三年生になったけれど。今日はクラスのことも応援してみよう。高校最後の体育祭だという感慨もなかったが、そう思える。これも瀬名のおかげだ。
「まあな。こいつらのおかげで楽しくやれてるかも」
森本と尾方はいつもこうだ。騒がしいし、やたらと構ってくる。だがこの空気感が桃輔は好きだった。劣等感でいっぱいの自分がちゃんと高校を全うできそうなのは、ふたりがいてくれたからだと感じている。
「いいな、オレもモモ先輩と同い年に生まれたかった」
「え? 俺と瀬名が同い年?」
「はい、一緒に色んなこと経験したかったです」
正直なところ、そんな風に考えたことは一度もなかった。寂しそうに眉を下げる瀬名に、桃輔の胸まできゅうと狭くなる。
「なあ瀬名、俺はお前が後輩なの、結構気に入ってる」
「え?」
「俺、部活もやってないし、そもそもあんま人と関わんないし。だからモモ先輩って呼んでくれんのも、仲良いって言える後輩も瀬名だけでさ。それって、なんかよくね?」
自分で決めた瀬名と過ごすタイムリミットが迫っているからだろうか。素直な想いを伝えたくなった。気恥ずかしくて、なんだか顔が上げられないけれど。
俯いていると、瀬名が一歩こちらへと近づく。
「モモ先輩……」
『間もなく、体育祭の開会式を始めます。生徒の皆さんは、校庭に集まってください』
だが瀬名がなにかを言いかけたところで、集合を促す放送が入った。つられるように顔を上げると、そこには意外な光景が広がっていた。瀬名の顔が赤い。
「え、どうした?」
「あー、もしかしなくてもオレ顔赤いっすよね?」
「うん」
「うわー……」
他の生徒たちがぞろぞろと校庭に向かい、森本と尾方も「じゃあお先に」と行ってしまった。自分たちも行かないと、教師に叱られてしまう。
「瀬名、俺らも行かないと」
「っす。モモ先輩」
「ん?」
「体育祭、楽しみましょうね」
「まあ、ぼちぼち」
「はは。じゃあ行きますか」
「だな」
瀬名に拳を差し出すと、そこに瀬名の拳がコツンとぶつかる。もう一度「じゃあな」と言って校庭へ歩き出せば、だがまたすぐ瀬名に名前を呼ばれた。
「モモ先輩!」
「んー?」
振り返ると瀬名は、やけに必死な顔でそこに立っていた。
「オレも……やっぱり今のままがいいっす」
「ん?」
「先輩にとっての唯一の後輩ポジション、最高だなって」
「あ。うん、だろ?」
瀬名は満足そうに頷いて、自身のクラスの列へと向かっていった。赤くしていたのが嘘のようにすぐに澄ました顔をして、友人たちとなにかを話している。
本当は、不安な気持ちばかりで今日を迎えたと言ったほうが正しい。瀬名と桜輔ふたりして実行委員になる、なんて事態は避けられたけど。全校生徒が参加する体育祭中、ふたりが出くわす可能性は十分にあるからだ。せめて真実を打ち明けるまで、その瞬間は訪れないでほしいと気が気ではない。
けれどこんな風に笑い合って楽しもうと言われてしまえば、せっかくだからそうしたいなと思えるから不思議だ。
「おーいモモー! 早く来いよー!」
「今行く!」
離れたところで手招いてくる、森本と尾方に手を挙げて応える。こういったイベントごとは好きじゃないまま三年生になったけれど。今日はクラスのことも応援してみよう。高校最後の体育祭だという感慨もなかったが、そう思える。これも瀬名のおかげだ。
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