【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ

文字の大きさ
39 / 58
冷たい廊下に融ける

2

しおりを挟む
 十二月に入った。寒さはずいぶんと厳しくなってきて、寝起きのフローリングの床につま先は丸くなる。

 土曜日の九時過ぎ。昨夜もずっとギターを触っては歌詞を作って、としていたら、いつの間にか外が明るくなっていた。休日だから、たまにはたっぷり寝ようかと思いはしたのだが。夢の中でも楽曲制作をしていて、気が焦ったのか目は覚めてしまった。結局三時間ほどしか眠れていない。

 喉が乾燥している感覚がする。水を飲もうと部屋を出ると、桜輔と出くわしてしまった。桜輔も隣の自室から出てきたところのようで、あまりの近さについのけ反った。

「モモ。おはよう」
「……はよ」

 しまった、と思う。こんなに真正面から顔を合わせるのは久しぶりだ。親のいるところでしか会わないで済むよう、気を張ってきたのに。寝起きだからか、つい無防備に扉を開けてしまった。

 起きてしまったことはもう仕方がない。さっさと喉を潤して、戻ってこよう。そう思ったのだが、

「モモ」

 と引き止められてしまう。

「……なんだよ」
「目の下、隈がひどいよ」
「……ああ、うん。平気」
「平気じゃないよね。ここ最近ずっとじゃん。寝れてないの?」
「そんなんじゃねえよ、ほっとけって」

 お節介を焼いてくるのが鬱陶しい。適当にあしらって、下に降りようとしたのに。歩き出そうとしたら、今度は桜輔に手首を掴まれた。思わず目を見開いて振り向く。桜輔がこんな風に強硬な態度に出てくることは、ひどく珍しい。

「え、なに」
「はあ、もう限界」
「は? なにが……」
「ほっとけってなんだよ! ……ほっとけるわけないだろ、大事な兄弟だぞ」
「っ、桜輔……」

 日頃温厚な桜輔が怒っているところなんて、ほとんど見たことがない。語気もずいぶんと荒っぽくなっている。

 こんな桜輔を最後に見たのは確か、小学校に上がったばかりの頃だったか。桜輔の注意にも構わず道路を走って、転んで怪我をした時。モモくんが痛いの嫌だ、と大泣きしながら怒られたことがあった。

 まるであの時みたいだなと、必死な顔をしている桜輔を見て思い出す。

「……はっ、大事とか。ウケる」

 でも今はもう、小さな子どもじゃない。過保護に心配をされても、と苦笑が零れる。だが桜輔の怒りは、ちっとも収まらないようだ。

「はあ……モモは本当になにも分かってない」
「なにがだよ」
「モモはさ、自分と俺を比べて劣等感を抱いてるみたいだけど」
「…………!」

 図星を突かれ、思わず睨みつけた。それを桜輔に言われるのは、なによりも腹が立つ。だが桜輔は、ちっとも怯まない。

「自分が人にどう想われてて、本当はその手になにを持ってるのか。目を背けてばっかりだよな」
「……は? 意味分かんねえ」
「…………」

 歯痒いとでも言わんばかりに、桜輔は自身の髪をくしゃりと握りこむ。視線を少し彷徨わせて、口を開いては噤んで。なにかを言うのを躊躇っているように見える。

「なんだよ、言えよ」
「……俺が勝手に色々言っていいことじゃないんだよ。でも……このままでいいの?」
「だからなにが」
「水沢くんのこと」
「……っ! お前……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき
BL
 凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。  二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。  それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。 「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」  人前でそんな発言をして爽やかに笑う。  発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

処理中です...