【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ

文字の大きさ
45 / 58
恋を憶えたメロディ

1

しおりを挟む
 訳も分からないまま、瀬名の家までの道を歩く。先ほどからずっと手は繋がれたままで、指摘したら離したくないと言われてしまった。

「俺、汗かくかも」
「全然平気っす」
「子どもじゃねぇんだから、ちゃんと瀬名についていけるし」
「ですね。でも、繋いでたくて」
「……男同士でなにやってんだって、変な目で見られるかもしんねぇぞ」
「全然平気。あ、モモ先輩は困る?」
「俺も別に、他人がどうとかは気にしないけど……」
「よかった。じゃあこのままで」

 なにを言っても納得してくれるどころか、駄々っ子みたいに力を込められてしまった。もう諦めて、されるがままになるしかない。

 だが桃輔だって本当は、こうしているのが嫌なわけじゃない。誰かの好奇の目が瀬名に向けられることとか、ドキドキと忙しい心臓が慣れなくて戸惑うだけだ。手を繋ぐなんてこの先ないかもしれないのだから、味わっていたい。 

 そっと握り返すと、瀬名の親指が桃輔の手の甲をそろそろと撫でた。白く逃げる息が、やけに熱くて困る。
 

「ただいまー」
「お邪魔します」
「あ、この時間は誰もいないっす」
「そっか」

 途中、以前よく行っていた公園の前を通りつつ、五分ほど歩いた。ここがオレんちです、と瀬名が立ち止まったのは、二階建ての一軒家の前。本当に学校のすぐそばだ。

 繋いだままの手を引かれ、リビングに入った。ソファに座ってと促され、離れた手がエアコンを起動する。それからすぐに、瀬名も隣に座った。

 瀬名の家族は不在だとは言え、なんだか落ち着かない。そわそわとしていると、なにかが足にぶつかった。足元を見下ろすと、猫がこちらを見上げていた。

「っ、猫だ……」

 そう言えば、結局写真すら見せてもらうことは叶わないままだった。桃輔にとっては幻だった水沢家の猫との対面に、つい気分が高揚する。

「瀬名、この子撫でていい?」
「抱っこしても大丈夫ですよ、懐っこい子なので」
「マジか……おいで、抱っこさせてな」

 毛並みは三毛の、日本猫。しっぽが長く、もうすっかり大人であろう大きさだ。そっと横抱きして、ゴロゴロと鳴いてくれる喉を撫でる。気持ちよさそうに目を眇めているのが、たまらなくかわいい。

「うわー、すげーかわいい……名前はなんていうんだ?」
「…………」
「瀬名、この子の名前……瀬名?」

 返事がないのを不思議に思い、隣に目を向けると。瀬名はなぜか困ったように眉を下げて、微笑んでいた。どうしたのだろう。首を傾げると、目が逸らされた。くちびるは薄く噛まれている。

「見覚えありませんか? モモ先輩はうちの子の名前、知ってるはずです」
「え……?」

 どういう意味だろう。今日の今日まで、写真を見せてもらったこともなかったのに。名前を知っている?

 不思議に思いながら、手の中で甘えてくれている猫を見つめる。グリーンがかった丸い瞳、足先は靴下みたいに柄が入っていて。そこまで観察して、「ん?」と声が漏れた。もう一度顔を見ると、ピンクの鼻の先にちょこんと入る黒色が、よくよく見るとハートの形に見える。

「え……アンミツ?」

 まさか、と思いながらも、思い浮かんだのはその名前だった。特徴が全てよく似ている。弾き語りの動画を投稿すると、いつもコメントやメッセージを送ってくれるアンミツ。そのアカウント名は、よく投稿している三毛猫の名前をそのまま付けられたものだ。

 いや、でもまさか。勢いよく隣を見ると、瀬名はどこか気まずそうに頷いた。

「正解です。その子の名前はアンミツで……先輩の動画にコメントしたりしてるアンミツは、オレです」
「……いやいや。え、マジ?」
「はい」
「……うそだろ。そんなわけ……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

魔法学校の城に囚われている想い人♡を救い出して結婚したい天才有能美形魔術師(強火執着)の話

ぱふぇ
BL
名門魔法学校を首席で卒業し、若くして国家機関のエースに上り詰めた天才魔術師パドリグ・ウインズロー(26歳)。顔よし、頭脳よし、キャリアよし! さぞかしおモテになるんでしょう? ええ、モテますとも。でも問題がある。十年越しの想い人に、いまだに振り向いてもらえないのだ。そんな片思い相手は学生時代の恩師・ハウベオル先生(48歳屈強男性)。無愛想で不器用、そしてある事情から、魔法学校の城から一歩も出られない身の上。先生を外の世界に連れ出すまで、全力求婚は止まらない! 26歳魔術師(元生徒)×48歳魔術師(元教師)

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき
BL
 凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。  二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。  それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。 「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」  人前でそんな発言をして爽やかに笑う。  発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。

【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐
BL
続編・番外編はTwitter(べったー)に載せていきますので、よかったらぜひ🤲 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 過保護なかわいい系美形の後輩。 たまに見せる甘い言動が受けの心を揺する♡ そんなお話。 ⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆ 【攻め】 雨宮千冬(あめみや・ちふゆ) 大学1年。法学部。 淡いピンク髪、甘い顔立ちの砂糖系イケメン。 甘く切ないラブソングが人気の、歌い手「フユ」として匿名活動中。 【受け】 睦月伊織(むつき・いおり) 大学2年。工学部。 黒髪黒目の平凡大学生。ぶっきらぼうな口調と態度で、ちょっとずぼら。恋愛は初心。

諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】

カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。 逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。 幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。 友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。 まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。 恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。 ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。 だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。 煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。 レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生 両片思いBL 《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作 ※商業化予定なし(出版権は作者に帰属) この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について

kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって…… ※ムーンライトノベルズでも投稿しています

処理中です...