【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ

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君を唄うブルージー

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 愛されている、大事にされている。そんな風に心から信じられる日がくるなんて、思ってもいなかった。

 例えばこんな風にキスをすることで、恋人の気分を上げられると分かるようになった。自惚れもいいところだ。思った通りに受け取ってくれる、そう自負しているということだから。

 信じられるくらいの想いをもらっていて、それくらいの想いをきっと捧げられている。バカップルと誰かに呼ばれても、言い訳ひとつできない。

「じゃあ、モモ先輩」
「うん」
「卒業しないでください」
「……え?」
「学校に来ても明日から先輩がいないの、すげー寂しい」

 まさか、そんなことを言われるとは思わなかった。そろそろと指が絡んで、ぎゅっと力が込められる。

 卒業したって、これからだって外で、家で、いろんなところで会える。けれど、そういう意味じゃないのだろう。瀬名の考えていることが、繋いでいる手から滾々と流れこんでくるみたいだ。

「瀬名……あの公園で見つけてくれて、この学校に入ってくれてありがとな。瀬名のおかげで、俺すげー変わったなって思うよ。俺ってこんなに、色んな感情持ってたんだなーって。そんなことも知らなかった。瀬名に出逢うまで、どう生きてきたのかもう覚えてないくらい。大袈裟に聞こえるかもだけど、マジだよ」
「先輩……」
「ここでの最後の一年、瀬名といて本当に楽しかった。瀬名もそう思ってくれてて、惜しんでもらえるのってすげーことだよな。だから……瀬名を置いてくみたいで、俺もめちゃくちゃ寂しい。瀬名の高校での思い出全部に、俺もいたかった。あー……はは、クラスでも別に泣かなかったのに。瀬名のことだと俺ダメだわ」

 照れ隠しに鼻を啜ると、涙をいっぱい瞳に溜めた瀬名が抱きついてきた。勢いのあまりか、気がつくと床に背が付いていた。見上げると、瀬名の涙がひとつぶ落ちてくる。冷えた床、ぬるい指先に熱い頬。ああ好きだなあ、と吐息がこぼれる。

「オレも、モモ先輩に会えて本当によかった。モモ先輩が音楽を好きで、唄ってくれて、それを世界に見せてくれて……どれかひとつなかっただけで出逢えなかったのかなって思うと、怖いくらい。寂しいけど、すげー寂しいけど。先輩に出逢えた今があるから、頑張るよ」
「うん、応援してる。瀬名がくれる心強さを、俺もあげられるように頑張るよ」
「もうもらってるっすよ、いっぱい」

 階段へ投げ出された足に、瀬名のそれが絡まる。瀬名の顔がゆっくりと近づいてきて、頬にくちびるにとキスが落ちてくる。それからまつ毛を濡らす涙を吸われて、お返しにと瀬名の涙にもキスをした。ひとしきりそうしたら、満たされた心が笑顔を連れてくる。

「……ふ」
「はは。瀬名、かーわいい」
「モモ先輩もだいぶかわいいっすよ。あと、かっこいい」
「瀬名もな。かっこいいよ、すげーかっこいい。なあ、俺のいないとこであんまモテんなよ。まあ今更だろうけど」
「それなら平気っす。最近はオレ、付き合ってる人いるって宣言してるんで」
「え、そうなん?」
「っす。それより、先輩こそっすよ。応援してるけど、あんまり人気者になったら妬けるかも」
「マジか。ちなみにアンミツ的には?」
「古参として自慢しまくりっすね。momoは最初っから最高だったんだよなーとか、コメントでマウントする」
「あはは! 即答!」
「cherryにも絶対に負けないんで」
「ふはっ、分かった、分かったから」

 なあ瀬名、本当に色んな感情に出逢えた日々だった。泣き笑いが似合うこの恋は、なによりの宝ものだ。

「今日はクラスの打ち上げとかあるんすよね……」
「だなあ」

 離れがたいといった顔をする瀬名の背中に、腕を回す。引き寄せて、抱きしめ合って。ああ、やっぱり宝ものなのは瀬名自身だな、なんて思う。探し当てられたのはこちらでも、今この手に自分こそが宝を抱いているのだ。

「瀬名~」
「はは、なんすか。モモ先輩~」

 両想いになれたから、彼氏だから大切にするんじゃない。最初からずっと大切だった瀬名に、この一生をかけてそう伝られたらいい。まずは手始めにその名前を。愛しくて口の中で転がしたら、似た笑顔の愛が返ってきた。
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