新宿プッシールーム

はなざんまい

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ロシアンブルーの正体(7)

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「最後の勤務はどうでしたか?」

重くならないように明るい声で聞いた

「うん、ほぼ常連だから安定してた。みんなオプションたくさんつけてくれたよ。あ、それから長谷川さんが来た」

リンの箸からチキン南蛮がこぼれ落ちた

「は?」

「だから、最後の最後が長谷川さんだったの。偽名で予約してあったけど、面接みたいなもんとか言って。どんなセクハラ面接だよっていうね」

リンは、こぼれた牛乳のような白いものが、頭の中に流れこんでくるような感覚に襲われた

頭の中は白いのに、視界が狭まって、目の前が真っ暗になった

ただ焦点の合わない小さな穴を通して、ミナミの顔が歪んで見えた


「リン?」

ミナミが、箸を持った手をリンの目の前で振った

「え?」

「大丈夫か?」

「はい」

「それでさ、なんと30万、ポンと置いてったの。さすがに怖かったわ」


リンは拳を握りしめた

割り箸がバキッと割れた


「…ソヤロー」

「なんて?」

リンは意を決して顔をあげた

「ミナミさん!」

いまはミナミの顔が、くっきりと見える

「もう、長谷川には近づかないでください!」

ミナミはリンの迫力に押されて、箸を動かす手を止めた

だが、すぐに「それはできない」ときっぱりと言った

「なんでですか?カフェのことなら俺が…」

ミナミは真剣な顔で、首を横に振った

「そういうんじゃない。俺が決めた俺の将来だ。長谷川さんがプッシールームに来て俺のオナニー見たからって、何も変わらねーよ」

「でも嫌なんだ!あいつ、自分のことをミナミさんに意識してもらいたいんだ。これからで見てもらえるように」

ミナミは顔をしかめて、
「考えすぎだって。プッシールームに来る客は、意外とそういうとこ割りきってる客のが多いぞ」

「じゃあミナミさんは、これから長谷川と一緒に働いても、昨日のことを思い出さないと言い切れますか?」

リンの真剣な表情に、冗談や軽口では済まされないと思ったミナミは、リンの目を見てはっきりと「言い切れる」と言った

リンはの迫力に気圧されそうになった

だが、引き下がるわけにはいかない


「その自信はどこから来るんですか?!」


いまはもう、悲痛な叫び声になっていた

このままでは、この流れのままでは、ミナミと長谷川を切り離せないー



リンが絶望しかけた時、ミナミの口から出た言葉は想像の斜め上をいっていて、どちらにしろ絶望することになった

「だって、俺、彼女いるもん」
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