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ボス猫の影(1)
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二次会は招待客の立場を考えて、滋の事務所が選んだ、神楽坂にある専用のバーで開かれた
意外にも、モデルや芸能関係者が多く訪れ、滋の人望の厚さがうかがわれた
緑人は最初、二次会まで行くつもりはなかったが、プッシールームに興味を惹かれ、参加することにした
二次会は自由度が高く、主役の二人が来るまで、適当な人間と適当に話すスタイルで、結果的に芸能関係者の社交の場と化していた
緑人がカウンターでお酒を受け取っていると、入れ違いで【九】というモデルと着物姿の麗人がお酒を注文しに来た
「あ、君モデルの人…」
ちょうどいいタイミングとばかりに、緑人は二人に話しかけた
「そーです。お兄さんは俳優の…」
「諏訪緑人」
「知ってます。映画観たもん」
ずいぶんフランクなモデルだ
背の高さから見て、ショーモデルでないことは一目でわかる
だが、戸田山が知っているということは、ネットやSNSで若者に人気なのだろう
「名前聞いてもいい?」
緑人は九とタキを交互に見た
ゲイ専門の風俗店のスタッフとは聞いていたが、こんなにもきれいなものかと驚いた
「九です。【Tout】っていう雑誌で読モやってます」
九が手を差しだした
緑人はそれを握り返した
手首こそ華奢だが、普通に骨ばった男性の手だった
「そちらの方もお名前聞いていいですか?」
「タキと言います」
タキの手は薄くて、ひんやりと冷たかった
「そういえば、タキさんって何してる人なの?」
緑人を差し置いて、九が聞いた
「ナイショー」
「ずるい!」
二人はそう言うと、緑人と話していたことなど忘れたかのように、笑いながら仲間の方に戻っていこうとした
緑人はあわてて二人を引き留めた
自慢じゃないが、諏訪緑人と言えば、若手実力派ナンバー1の呼び声が高い、いま、ノリにノッている俳優の一人だ
露骨にすり寄られるのことには辟易しているが、こんな風に無関心と言っていいほど邪険に扱われるいわれもない
なんとしても食い込んでやる
緑人の心に火がついた
マサトと滋がセミフォーマルなドレスに着替えて二次会の会場にやってきたのは午後6時だった
正午から挙式、午後1時から披露宴、午後4時にお開きになり、いまから二次会
当人たちは朝から準備もあるだろうから、まさに1日がかりの大仕事
憧れはするが、自分は会食だけにしようと九は心に決めた
「遅れてすみません」
主役の登場に合わせてリンがやって来た
二次会はパートナーの同伴可ということで、ミナミはアイナ、コノエはアキラを連れていた
「トワさんは?」
エチゼンが九に聞いた
「トワは自粛中。滋さんに迷惑かけるからって」
確かに、何かの折に反社との付き合いがあったとバレれば、いくらプライベートの付き合いと言い張っても無理があるだろう
トワと付き合うということは、こういうことがままあるということだ
九はビッチの自覚はあるが、決まった相手がいるときは絶対に浮気はしない
トワもそれを信じているから、自分の立場をかんがみた上で、九が不利益を被らないように配慮してくれるのだ
「トワさんって、初めて見たとき怖いひとかと思ったんですけど、いい人だったんですね」
「相手が俺だからでしょ」
エチゼンは九の高度なノロケに口をつぐむしかなかった
「マサトさん、滋さん、おめでとうございます」
リンは二人にお祝いの言葉を述べて、手に持っていた化粧箱を滋に渡した
「何?」
滋が箱を開けると、白い花でできたリストブーケが入っていた
「うわっ!」
「リンさん、シャレオツ~」
「さっき、九さんのインスタの写真見たんですけど、リストブーケはしてなかったので…」
思いもよらない称賛を受けて、リンは照れ臭そうに目をそらした
滋はすぐにリストブーケをつけた
「リン君、ありがとう」
「リン、ありがとな」
マサトがリンの肩を叩いた
「いえ…」
リンの顔が翳ったのを、マサトは見逃さなかった
「ちょっとごめん」
マサトは滋に声をかけると、リンを伴って中座した
意外にも、モデルや芸能関係者が多く訪れ、滋の人望の厚さがうかがわれた
緑人は最初、二次会まで行くつもりはなかったが、プッシールームに興味を惹かれ、参加することにした
二次会は自由度が高く、主役の二人が来るまで、適当な人間と適当に話すスタイルで、結果的に芸能関係者の社交の場と化していた
緑人がカウンターでお酒を受け取っていると、入れ違いで【九】というモデルと着物姿の麗人がお酒を注文しに来た
「あ、君モデルの人…」
ちょうどいいタイミングとばかりに、緑人は二人に話しかけた
「そーです。お兄さんは俳優の…」
「諏訪緑人」
「知ってます。映画観たもん」
ずいぶんフランクなモデルだ
背の高さから見て、ショーモデルでないことは一目でわかる
だが、戸田山が知っているということは、ネットやSNSで若者に人気なのだろう
「名前聞いてもいい?」
緑人は九とタキを交互に見た
ゲイ専門の風俗店のスタッフとは聞いていたが、こんなにもきれいなものかと驚いた
「九です。【Tout】っていう雑誌で読モやってます」
九が手を差しだした
緑人はそれを握り返した
手首こそ華奢だが、普通に骨ばった男性の手だった
「そちらの方もお名前聞いていいですか?」
「タキと言います」
タキの手は薄くて、ひんやりと冷たかった
「そういえば、タキさんって何してる人なの?」
緑人を差し置いて、九が聞いた
「ナイショー」
「ずるい!」
二人はそう言うと、緑人と話していたことなど忘れたかのように、笑いながら仲間の方に戻っていこうとした
緑人はあわてて二人を引き留めた
自慢じゃないが、諏訪緑人と言えば、若手実力派ナンバー1の呼び声が高い、いま、ノリにノッている俳優の一人だ
露骨にすり寄られるのことには辟易しているが、こんな風に無関心と言っていいほど邪険に扱われるいわれもない
なんとしても食い込んでやる
緑人の心に火がついた
マサトと滋がセミフォーマルなドレスに着替えて二次会の会場にやってきたのは午後6時だった
正午から挙式、午後1時から披露宴、午後4時にお開きになり、いまから二次会
当人たちは朝から準備もあるだろうから、まさに1日がかりの大仕事
憧れはするが、自分は会食だけにしようと九は心に決めた
「遅れてすみません」
主役の登場に合わせてリンがやって来た
二次会はパートナーの同伴可ということで、ミナミはアイナ、コノエはアキラを連れていた
「トワさんは?」
エチゼンが九に聞いた
「トワは自粛中。滋さんに迷惑かけるからって」
確かに、何かの折に反社との付き合いがあったとバレれば、いくらプライベートの付き合いと言い張っても無理があるだろう
トワと付き合うということは、こういうことがままあるということだ
九はビッチの自覚はあるが、決まった相手がいるときは絶対に浮気はしない
トワもそれを信じているから、自分の立場をかんがみた上で、九が不利益を被らないように配慮してくれるのだ
「トワさんって、初めて見たとき怖いひとかと思ったんですけど、いい人だったんですね」
「相手が俺だからでしょ」
エチゼンは九の高度なノロケに口をつぐむしかなかった
「マサトさん、滋さん、おめでとうございます」
リンは二人にお祝いの言葉を述べて、手に持っていた化粧箱を滋に渡した
「何?」
滋が箱を開けると、白い花でできたリストブーケが入っていた
「うわっ!」
「リンさん、シャレオツ~」
「さっき、九さんのインスタの写真見たんですけど、リストブーケはしてなかったので…」
思いもよらない称賛を受けて、リンは照れ臭そうに目をそらした
滋はすぐにリストブーケをつけた
「リン君、ありがとう」
「リン、ありがとな」
マサトがリンの肩を叩いた
「いえ…」
リンの顔が翳ったのを、マサトは見逃さなかった
「ちょっとごめん」
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