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しおりを挟む「さて、まずは名前から聞こうかな」
事務所のソファに向かい合う形で座っている女の子に問いかける。
「…私の名前は、相崎穂乃果です」
不安そうに体を縮めている少女が答えた。
「そう、穂乃果ちゃんね。
で、早速だけど私に何の用?」
恋愛相談なんかしたらぶっ殺すわよ、とタバコに火をつけながら言う私に穂乃果ちゃんは怯えたように肩をすくめた。
「私がここへ来たのは祖母の敵をとって欲しいからです」
きゅっと私を見る目に少し興味が湧いた。
「敵?」
穂乃果ちゃんの話はこうだった。
穂乃果ちゃんの祖父は数年前に他界しており、祖母は田舎に1人で住んでいたそうだ。
そんな祖母の元にある人物が来た。
その人物は自分を学者だと名乗り、祖母の持っていたあるロボットを借りたいと言った。
そのロボットは、祖母が祖父から貰ったもので今の時代では珍しい初期の頃に作られた犬型ロボットであった。
動きも滑らかで言葉を喋る今の犬型ロボットとは違い、それは『ワン』の一言しか話さないし、機械音を鳴らしながらガシャガシャとごく簡単な動きしか出来ないような古いものであったが、とても貴重なものであった。
学者は、研究のためにそのロボットを貸して欲しいと言った。
しかし、祖母は断ったそうだ。
これは、主人と私とを繋ぐ唯一のものでとても大切なものだからお貸しすることはできない、と。
すると学者は、これからのロボット学が発展するために必要だ。絶対に傷つけたりしないし必ずお返しする、と言ったそうだ。
そこまで言うならと祖母はその学者に犬型ロボットを貸し出した。
が、それが間違いだったのだ。
いくら待てども待てども返ってこないどころか連絡すらこない。
不安になった祖母は穂乃果ちゃんに相談し、穂乃果ちゃんはその学者の研究所に連絡をした。
そうしたら、そんなことは知らないの一点張りだったそうだ。
それでも穂乃果ちゃんは何度も研究所に連絡を入れた。
あれは祖母にとって本当に大切なものだからどうか返して欲しいと何度も何度も伝えた。
何度目かの連絡のあと、そんなに言うなら約束したという証拠を持ってこい。出来ないならもう連絡してくるな。これ以上付きまとうなら名誉毀損で訴える、と告げられたそうだ。
どうすることも出来ず、ロボットはそのまま返らぬものとなった。
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