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Tutorial

チュートリアルなのに銀狼が現れました

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 体感的には、一時間ぐらいだろうか。
 スラリアといっしょに魔物たちと戦いを続けていると。

「ウオオォォォォ――ォォォン………」

 私たちの近くから、狼の遠吠えのような声が聞こえた。
 いや、ここは現実世界ではないのだから、おそらく本当に狼がいるのだろう。
 ゲームにはボスというものがいることぐらい、私でも知っている。

「恐ろしい狼じゃなくて可愛いもふもふ柴犬でしたー、とかだったらいいんだけど……」

「ぷにゅにゅう……」

 遠吠えが聞こえる方向に、森をがさがさと進む。
 すると、少し開けたところが目の前に現れた。

「いや、可愛いじゃん」

 油断してはいけないと思いつつも、つい私はつぶやいてしまう。
 短い草が生い茂る広場の真ん中、そこに私の想像よりは小さな狼がぽつんとお座りしていた。
 まだ距離があるから正確ではないけれど、私の膝下ぐらいの体高かな。
 遠目からでも銀色の体毛が美しいことがわかる、小狼だった。

「グルルゥ」

 私のつぶやきが聞こえたのか、それとも匂いで気付いたのか。
 小狼はお尻を浮かせて、こちらに向かって威嚇するように唸り声を上げる。

「おー、ちょっと恐いかも?」

「ぷにゅっ」

 私を守るように、小狼との間にスラリアが立ちふさがる。
 いや、立つことはできないから、ぷにふさがるが正解か。
 ちょっと頼もしい。

「よし、戦おうか」

「ぷにゅにゅっ!」

 小狼に向かって、私たちは歩を進める。
 威嚇を続ける小狼の、銀色の毛が逆立っていることがわかるぐらい近くで。

「ガルァ!」

「ぷにゅっ!」

 小狼が飛びかかってきて、スラリアが迎え撃つ。

「にゅにゅっ!?」

 しかし、威力で負けたのか、スラリアは小狼に吹っ飛ばされる。
 かなりの勢いで、一直線に私の胸に飛び込んできた。

「ぅぐっ……!」

 スラリアを抱きとめた私は、勢いを殺しきれずに後退あとずさる。
 さすがはボス、ということだろうか。
 スラリアの体当たりに打ち勝つなんて、いままでの魔物とは違うようだ。

「ガルルァッ!」

「あぶなっ――!」

 スラリアを抱いたまま、私は小狼の飛びかかりを横っ飛びで回避。
 そして、すぐに体勢を整えて小狼の動作を睨みつけた。
 すると、再び飛びかかろうとしていたように見えた小狼が、その動作を中断する。

「……ワンちゃんのわりには、頭が良いみたいね」

「グルルル」

 飛びかかってきたら、蹴り飛ばしてやろうと思ったのに。

「ぷにゅににっ」

「ん? あっ、そういえば、スキルがあったね」

「ぷにゅ!」

 私の腕の中でスラリアが、そいつを使いなっ、と言っているように揺れる。
 美少女NPCのリリアが最初にくれた、スライム強化のスキル。
 まだ使ったことがない……というか、どう使えばいいのだろうか。

「えっと……スライム強化!」

「ぷにゅにゅにゅっ!」

 とりあえず叫んでみたのだが、どうやら正解だったようだ。
 スラリアが一回りだけ大きく、さらに淡く光を発するようになる。
 その代わりに、私の中からなにかが抜ける感覚がした。
 たぶん、魔力が使われたのだと思われる。
 ちょっとだけ、脱力感がきもちわるい感じ。

「ぷにぃ」

「うん、頑張ってね」

 私がスラリアを抱いていた手を離すと、スラリアは、一度地面にぽよんとしてから。

「ガラァッ!?」

 弾丸のような速度で、小狼に向かっていった。
 突然に速くなったことに対処できなかったのか、小狼はスラリアの体当たりを避けることができなかったようだ。
 ぶつかった勢いで宙を舞い、地面に着地。
 さらに、土埃を巻き上げながらまだ滑っていく。
 最後に、淡い光になって消えていった。

「すごいっ、スラリア、すごい!」

 スラリアの大活躍に、思わず私は歓声を上げながら駆け寄る。

「ぷにゅにゅー」

「えへへっ、私のパートナーは、こんなに強い子だったんだねー」

「ぷにぷにゅー」

 嬉しくなっちゃって、スラリアをわしわし――ぷにぷに?――と撫で回す。
 スラリアも、なんだか嬉しそうに自分からぷにぷにしている。

「ふふっ、これで――」

 終わりかな、そう言おうとしたとき。
 私の視界の端を、銀色の影が微かに過ぎった。

 それが、まだ他にいた小狼だと気付いたときには、もう遅くて。

「ぷににゅっ!」

「スラリアっ!?」

 私をかばって跳び上がったスラリアが、小狼に噛みつかれる。
 その鋭い牙は、スラリアのぷにぷにボディに深く食い込んでいた。

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【名前】リリア
【レベル】2
【ジョブ】テイマー
【使用武器】スライム:習熟度2

【ステータス】
物理攻撃:5 物理防御:20 
魔力:15 敏捷:5 幸運:15
【スキル】スライム強化、なつき度強化
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