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プロローグ
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人がまばらに乗った終電間近の電車に揺られ、駅からポツポツと灯る街灯を頼りに歩くこと十分。そこに見えてきた小綺麗な白い五階建てのマンションの三階左角部屋が、高見宗二が今年の三月から借りている部屋だ。
カバンから鍵を取り出し、ドアを開ける。
しんと静まり返った部屋は冷蔵庫のように冷たく、人の気配は一切ない。むしろ、一人暮らしの部屋に人の気配がする方がおかしいが。
靴を脱いで玄関に上がると廊下とリビングの電気がいきなりついた。
もちろんセンサー付きというわけではない。本来なら着くはずのない電気だ。だが、宗二はいつものこととばかりにそのままリビングに向かう。
この程度なら驚きもしない。
リビングのドアを開けると中二ぐらいの少年が仁王立っていた。
中性的な顔立ちに線の細い体躯。身長は165cm あるかないかぐらい。絹のような白い艶髪を背中まで伸ばし、こちらを琥珀色の瞳がじっと睨む。
そのしっかりと組まれた腕を見れば、これより先に宗二が進むことを完全に拒否していることがわかる。
通せんぼの理由を聞くより早く、少年・リョウはリビングの壁掛け時計を顎でしゃくった。 示された時計に視線を流せば、二時を少し過ぎようという頃。正直に言えばベッドに飛び込んで寝てしまいたい時間帯だった。
「遅い 」
「大学で調べ物してたら飲みに行く流れになっちゃってね」
「そういう時は連絡してって言ってるでしょ? こっちにだって君を取り殺すための準備ってものがあるんだからさ、もう少しちゃんとしてくれないと!」
「ごめんごめん」
これは謝るべきことなのだろうかと疑問に思いつつも、約束を守らなかったという点だけ きっちり謝った。するとリョウは口を尖らせ、恨みがましい目をする。
「せっかく血染めのお風呂を沸かしておいたのに、血液入りじゃあ二度炊きできないから仕方なく掃除する羽目になったし! 他にも鍋から生首が飛び出るようにしておいたのに、あまりにも遅いから待ち比べれてどこかに遊びに行っちゃったよ!」
リョウの怒りに呼応するように、あちこちからバチバチとラップ音が鳴り響く。それをなだめながら宗二は彼をすり抜けてリビングに入った。
コンビニで買ってきたものをテーブルの上に広げ、ソファーに腰掛ける。
「君ねぇ…」
「ごめん、箸取って」
お小言が始まるのを遮ってお願いすれば、箸がキッチンから目を狙って飛んできた。それをナイフよりは楽勝とキャッチし、礼を言って弁当の蓋を開ける。
「あのね、僕は君に出て行って欲しいの。何、ポルターガイストを便利使いしてくれてるのさ」
なんてぷんすか怒りながらも、冷蔵庫を開けて麦茶をコップに注いで飛ばしてくれるのだから優しい子だ。
「いい、僕はもう五人も取り殺してるベテランなんだからね? 君もそうやっていられるのは今のうちだけなんだから!」
「はいはい」
ポンポンと感触のない頭の部分を撫で、子供扱いすんな!という苦情を聞き流しながら、ちくわの磯辺揚げを蓋に乗せてあげた。
カバンから鍵を取り出し、ドアを開ける。
しんと静まり返った部屋は冷蔵庫のように冷たく、人の気配は一切ない。むしろ、一人暮らしの部屋に人の気配がする方がおかしいが。
靴を脱いで玄関に上がると廊下とリビングの電気がいきなりついた。
もちろんセンサー付きというわけではない。本来なら着くはずのない電気だ。だが、宗二はいつものこととばかりにそのままリビングに向かう。
この程度なら驚きもしない。
リビングのドアを開けると中二ぐらいの少年が仁王立っていた。
中性的な顔立ちに線の細い体躯。身長は165cm あるかないかぐらい。絹のような白い艶髪を背中まで伸ばし、こちらを琥珀色の瞳がじっと睨む。
そのしっかりと組まれた腕を見れば、これより先に宗二が進むことを完全に拒否していることがわかる。
通せんぼの理由を聞くより早く、少年・リョウはリビングの壁掛け時計を顎でしゃくった。 示された時計に視線を流せば、二時を少し過ぎようという頃。正直に言えばベッドに飛び込んで寝てしまいたい時間帯だった。
「遅い 」
「大学で調べ物してたら飲みに行く流れになっちゃってね」
「そういう時は連絡してって言ってるでしょ? こっちにだって君を取り殺すための準備ってものがあるんだからさ、もう少しちゃんとしてくれないと!」
「ごめんごめん」
これは謝るべきことなのだろうかと疑問に思いつつも、約束を守らなかったという点だけ きっちり謝った。するとリョウは口を尖らせ、恨みがましい目をする。
「せっかく血染めのお風呂を沸かしておいたのに、血液入りじゃあ二度炊きできないから仕方なく掃除する羽目になったし! 他にも鍋から生首が飛び出るようにしておいたのに、あまりにも遅いから待ち比べれてどこかに遊びに行っちゃったよ!」
リョウの怒りに呼応するように、あちこちからバチバチとラップ音が鳴り響く。それをなだめながら宗二は彼をすり抜けてリビングに入った。
コンビニで買ってきたものをテーブルの上に広げ、ソファーに腰掛ける。
「君ねぇ…」
「ごめん、箸取って」
お小言が始まるのを遮ってお願いすれば、箸がキッチンから目を狙って飛んできた。それをナイフよりは楽勝とキャッチし、礼を言って弁当の蓋を開ける。
「あのね、僕は君に出て行って欲しいの。何、ポルターガイストを便利使いしてくれてるのさ」
なんてぷんすか怒りながらも、冷蔵庫を開けて麦茶をコップに注いで飛ばしてくれるのだから優しい子だ。
「いい、僕はもう五人も取り殺してるベテランなんだからね? 君もそうやっていられるのは今のうちだけなんだから!」
「はいはい」
ポンポンと感触のない頭の部分を撫で、子供扱いすんな!という苦情を聞き流しながら、ちくわの磯辺揚げを蓋に乗せてあげた。
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