噂の補佐君

さっすん

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side風紀委員長


「うん、このくらいでいいかな。
はい、聴取はこれで終わり。お疲れ様」


国見の言葉に晴はホッと息をつく。

そして、緑茶を口に含み、幸せそうに笑った。


「やっぱり悠先輩のお茶は落ち着きます。
というか茶葉替えました?」

「あ、晴には分かる?
ふふっ、ちょっと奮発して買った高級茶葉なんだ。
苦味が強いけど、美味しいでしょ?」

「はい!すごく」


嬉しそうに笑う晴と国見。

そういえば、副会長はもっぱら紅茶派だったな。


「あ、淹れ直してくるからちょっと待ってて」


晴の湯呑みが空になった事に気付いた国見は、遠慮する晴に大丈夫、と微笑み、湯呑みと急須を持って部屋の奥に消えた。

取り残された俺と晴。

晴は気まずそうに俯いたり、周りをキョロキョロ見たりと落ち着かない様子だった。


「最近、生徒会はどうだ」


晴はえ、と顔を上げ、キョトンとした目で俺を見る。

俺の質問の意図は理解していないだろうが、そうですね……と少し考え始める。


「皆さん、とても優しくて、すごく良くしてもらっています」

「そうか……」


俺は落胆してしまった。

……落胆?

何故?

晴が生徒会の奴等と仲良くしているのは良い事ではないか。

なのに、明らかにショックを受けている自分に驚き、困惑する。


「よく、副会長に紅茶を淹れてもらうんですけど、舌が肥えちゃって。
市販の紅茶じゃ満足出来なくなってしまったんですよね」


困ったように笑う晴。

俺はただ、そうか、と頷く事しか出来なかった。


「この前は会長が」
「もういい」


突然話を遮った俺を、晴は不思議そうな顔をして見つめた。

その目には心配の色を浮かべていて、敦先輩?と気遣う声で俺の名前を呼んだ。


……どうしたんだ、俺は。

いつもなら人の話を無理矢理中断させたりしない。

晴なら尚更だ。

なんだか、イライラするんだ。

晴が生徒会の奴等の話をするのは。

確かに元来生徒会と風紀の仲は良くない。

でも今は、それとは何か違う苛立ちを感じる。


そもそも晴は風紀委員の補佐になるはずだったんだ。

それなのに、生徒会が横取りして……。



……そうか、俺は晴が、生徒会に取られたような気がして、嫌だったんだ。

楽しそうに晴が生徒会の話をするから、嫉妬したんだ。


「晴」

「は、はい」


名前を呼べば、晴は顔を上げ、緊張した面持ちで俺を見る。


「俺は、お前が生徒会とばかり仲良くしているのは気に食わない」

「え?」

「俺の元にも来て、俺とも、話してほしい」


随分と間抜けな面をして、呆気にとられる晴。

無防備に開いた唇。

それに吸い寄せられるように、俺は体を前のめりに乗り出し、晴の唇と自分のそれをくっつけた。


「な……」


ゆっくり離れると、ほんのり顔を赤くして、信じられない、とでも言うように口を引き結んだ晴の姿があった。


……しまった。

俺は何をしているんだ。


「す、すまない」


自分の顔が熱くなるのが分かる。

己が晴に何をしたか自覚した途端に羞恥心が押し寄せる。


「ごめん、お待たせ」


呑気な国見の声がして、その瞬間、晴は勢いよく立ち上がり、失礼します!と言って脱兎のごとく風紀室を出ていった。

開け放たれたままのドアを驚いた様子で見つめ、国見は首を傾げた。


「晴、どうしたの?」


十中八九俺が何かしたんだろう、と国見は俺の方を見て、鋭い声で言った。


「………」


しばらく黙り込んで国見が諦めるのを待とうと思ったが効果は無く、ただただ鋭い視線を向けられ続けるだけだった。

この男もそれなりに晴を大事に思い、執着している為、いつもよりしぶといのだ。

きっと、俺が白状するまでこの空気は続く。


「晴の唇に、口付けた」

「なんて事してるの?」


怒気を含んだ声。

いつもの穏やかさは微塵も感じらない。

俺も、国見がここまで怒っているのは初めて見た。


「古賀が怒ってたのは僕も気付いてたよ。
晴も、怒っているのは感じていたみたいだけど、原因が分かっていなさそうだったから、二人きりにして話しやすい環境を作ったのに……。

まさかそんな事をしでかすなんて思ってなかったよ」


国見は怒らせると威圧感が半端ないな……。


俺はその日、延々と国見の説教を受けるはめになった。
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