噂の補佐君

さっすん

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俺はパソコンの前に座って考える。

提案書なんて書くのは初めてで、一向に進まない。

にしても俺に丸投げなんて酷過ぎる。

黙々と作業を進めている皆さんを見て、はぁ、と心の中でため息をつき、副会長が淹れた紅茶を一口飲む。

……相変わらず美味しい。

性格は悪いのに紅茶淹れるのは上手ってなに?


……副会長に当たっても仕方がない。

とりあえず、どんな課題があったか書き出してみよう。

えーと、クイズしたな。

ひらめき系のやつ。

それから、写真に写っている場所がどこなのか探したり、缶を十数個積み上げたりもしたな。

あとは__


なんとかゲームの内容は全て書き出す事が出来た。

でも、これだけじゃ一、二時間で終わってしまうからいくつか足さないと。

俺は気合いを入れ直そうと、紅茶を飲む。

紅茶は淹れたてのように温かかった。

どうやら気付かない内に副会長が淹れ直してくれたらしい。

……優しいな。

ちら、とパソコンの画面に向かう副会長の顔を見る。

真剣な眼差しで画面を見て、キーボードをものすごい勢いで打っている。

にしてもタッチタイピング出来るなんてさすがだよな。

俺はそんな事を思いながら、自分のパソコンに目線を戻した。



「晴!」


突然バタン!と目の前のパソコンが閉じられ、俺はハッとする。

顔を上げると、眉間に皺を寄せてこちらを睨む会長がいた。


「ど、どうしたんですか?」


俺には会長が何故怒っているのか理解出来なかった。

何か会長の感に障るような事をした覚えはないからだ。


「さっきから何度呼んだと思っている!!」

「え、そうだったんですか!?」


全く気が付かなかった。

それだけ提案書作りに没頭していたという事なんだろう。

あたりを見回すと、いつの間にか生徒会室には俺と会長しかいなかった。

窓からはオレンジ色が差し込んでいる。


「俺はもう帰る」

「そ、そうですか。お疲れ様でした」


まだ苛立った様子の会長に、俺は引きつった笑顔を浮かべた。

そりゃ無視したら怒られるよね……。

あはは、と心の中で乾いた笑いをする。


「……あの、会長?」


気まずい沈黙が流れ、俺は思わず会長の顔を窺う。

会長は帰ると言ったのに一向に動かないのだ。

ただムスッとした顔をして俺を見ている。


「……お前は帰らないのか」

「俺ですか?
俺はもうちょっと残っておきます。
きりのいいところまで仕上げたいので」


会長はもしかして俺を心配してくれていたのか?

……まさかね。

俺は自分にツッコミつつ、強制的に閉ざされたパソコンを開く。

本当にあと少しで終わる。

自分が思うように提案書を書いているが、なかなかいい感じだと思う。


「……分かった。
だが、寮の門限までには帰れ」

「はい」


俺は頷いて見せる。

さすがにそこまでは遅くはならない。

会長はまだ何か言いたそうにしていたが、チッと舌打ちをしたかと思うと、足早に生徒会室を出ていった。

バタン!と扉が勢いよく閉まる。

どうしたんだ会長は。

不思議に思いながらも、俺はキーボードを打ち始めた。

会長が出ていってから三十分程が経過。

ようやく俺はきりのいいところまで仕上げた。

グーと座ったまま伸びをしたり、腕を回したりして体をほぐす。

提案書をファイルに保存させつつ帰り支度を整える。

チラリと腕時計を見て、最終下校時刻を過ぎている事に気付いた。

まぁでも生徒会の特権で、残っていてもいいのだけどね。

パソコンのすぐ横に置いてある冷めてしまった副会長の紅茶を一気に口に流し込む。

冷めても美味しい……。

ちょっと感動しながら、生徒会の給湯室に行ってカップを洗った。

とその時、コンコンコンとノックが聞こえた。


こんな時間に誰だ?

それに答えるかのように、ドアを隔てた奥から声が聞こえた。


「風紀だ。誰か残っているのか」


……間違いなく、敦先輩の声だ……。

そういえば風紀は下校時刻が過ぎた頃に二人一組で校内を見回りをするんだ。

ヤバい、怒られるかも。

どうしようどうしようと一人で慌てていると、ガチャ、と扉が開いた。


「晴……」

「こ、こんばんは」


驚いた表情の敦先輩にとりあえず挨拶をする。


「その声もしかして晴?」


ひょっこりと顔を覗かせたのは悠先輩だ。

相変わらず可愛いらしい顔つきだ。

どうやらこの二人で見回りをしていたらしい。


「もしかして一人?
まさか仕事押し付けられたとか?」


悠先輩が俺を心配そうに見る。


「違いますよ。
俺が勝手に残ってるだけです」


肯定しても良かったが、これ以上生徒会と風紀の仲がこじれるのはごめんだ。

そう、とまだ心配そうな悠先輩。


「こんなに遅くまで何をしていたんだ?」


敦先輩は怪訝そうな顔をする。


「新歓の提案書を書いてました。
まだ完成はしてないですけど、あともう少しで終わると思います。

あ、そうだ。良かったら明日途中ですけどお二人に提案書見ていただけませんか?」


我ながら良い安心てだと思う。

会長という大きな大きな砦に向かう前に、一度誰かに見せておきたい。

ヒントをもらっておきたい。


「僕は全然いいよ。
晴に頼られるなんて嬉しいな」


無邪気に笑う悠先輩に俺の心が和む。


「俺も構わない」


敦先輩からも了承を得た。


「いつ頃なら都合がつきそうですか?」

「最近はあんまりする事ないんだよ。
だから早速明日でも構わないよ」


ね?と悠先輩は敦先輩に同調を求める。

それに敦先輩は頷く。


「では、明日の放課後、風紀室に伺います」


そう言うと、悠先輩は待ってるね、と微笑んだ。
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