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帝国の地に来るもの
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クインシュバイン・ディグマイヤーはカルガーム領近郊で待機していた。
勅の内容は既に伝わっているし、皇帝の命を受けた急使も聖武国へ渡っている。しばらくは聖武国側で動きが見えるまでは、ここで動向を見守ることになるだろう。
「クインシュバイン殿」
「レックバルト殿か」
帝都から発った騎士団には多くの領軍が合流していた。ゼノヴァーム領の領軍もその1つだ。
レックバルトはグラスダームの推薦を受けて、この地に赴いていた。
「急使がガラム島に渡って何日か経ちますが。クインシュバイン殿はこの先の動きについて、どう見られていますか?」
「……確かなことは言えませんが。レックバルト殿も勅の内容はご存じですな?」
「はい」
「勅には皇帝陛下の威信がかかっている。その内容に偽りがあるとは考えていません。であれば、聖武国として取れる選択肢は2つ」
勅の内容には誰もが驚いた。何せウィックリン陛下はいつの間にか黒幕に行きついており、具体名を指して指摘しているのだ。
さらに誰もが探していたフランメリア王女も既に保護されているという。自分たちが意見を戦わせている裏で、別ベクトルから事態の解決に向けた行動をしていたのだ。
(……いや。兄さんが関与している可能性も高い)
クインシュバインの元には、リーンハルトが無事に帝都に帰還したという連絡もあった。詳細は記されていなかったが、帝都へは黒狼会最高幹部の1人、アックスも同行していたという。
そのタイミングで出されたウィックリンの勅。不思議と無関係とは思えなかった。
「その2つとは?」
「多くのリスクを抱えて帝国と事を構えるか。ブラハードを差し出して事を収めるかの2つです。そしてアーランディス国王のこれまでの行動を見る限り、後者の選択を取る可能性が高い」
「……仮に聖武国の貴族の多くが帝国と戦いたがっていたとしても、ですか?」
「国内事情をどう収めるのかは国王たる者の責務でしょう。もっとも、それは帝国とて同じことですが」
つまり貴族の暴走で帝国との戦端が開かれることになったとしても、それはアーランディスの責任であって帝国側の事情とは関係がないという事だ。
帝国側にも同様のリスクはあったが、勅が出された以上、暴走する貴族はまず出てこない。少なくとも皇帝の勅命に反する行動をとる者はこの場にはいない。クインシュバインはそう考えていた。
「なるほど。しかしこの新鋼歴の時代に魔法使いですか……。陛下の勅を疑う訳ではございませんが、魔法使いが存在していると思いますか?」
「どうでしょう。しかし過去に存在した大幻霊石を用い、帝都に混乱を起こした者たちもいたのです。それに近しい者がいたとしても、不思議とは思いませんが」
そう答えながらクインシュバインは胸中で苦笑していた。何せ自分の身近なところに本物の魔法使いたちがいるのだから。
レックバルトはクインシュバインの言葉を受けて、神妙な表情を見せる。
「……どうかされたのかな?」
「いえ。ヴィンチェスターの反乱時、クインシュバイン殿も前線に立っていたからご覧になられたでしょう。ウィックリン陛下の秘密部隊……仮面の者たちを」
レックバルトの言葉に、クインシュバインは彼が何を言いたいのかをおおよそ察する。
「あの者たちは私の目の前で不可思議な現象を巻き起こしていました。そして文字通り、一騎当千の活躍を見せつけた。今思えば、あれは魔法だったのでは。そしてそんな魔法使いたちを、秘密裏に抱えていたウィックリン陛下の深謀遠慮は計り知れないと。そう思ったのです」
事情を知っているクインシュバインからすれば、なんと答えたものか少し迷った。だが自分の口から真実を告げる事はできない。
「……確かに相当な実力者揃いでしたが。彼らが魔法使いである根拠は何もありませんよ。陛下の深謀遠慮については、帝国を率いる立場を考えると頼もしいものではないかと」
「……そうですね。私の様な立場の者が噂に振り回されていては、下に示しがつきません。今のはお忘れください」
魔法使いや陛下の秘密部隊について、上の立場のものが不確定な噂で妙な話をするものではない。
何がきっかけとなり、尾ひれ背びれを付けた噂が広まることになるか分からないのだ。
レックバルトも優秀な若者ではあるが、事態の移り変わりに頭がついていけていないのだろう。そう理解し、クインシュバインは年長者として何かアドバイスできないかと思案する。
「……レックバルト殿。あなたは……」
「ここにおられましたか! クインシュバイン様、レックバルト様! グラスダーム殿下がお呼びです!」
口を開きかけたクインシュバインであったが、途中で兵士が声をかけてくる。クインシュバインはレックバルトと視線を合わせると、そのままグラスダームの待つ簡易幕舎へと向かった。
■
「おお、レックバルトにクインシュバイン殿! 忙しいところすまぬな!」
「いえ。どうかされましたか?」
幕舎にはグラスダームの他、数人の仕えが待機しているのみであった。
クインシュバインは、てっきり責任者を集めて何か話したい事でもあるのだろうと考えていたため、少し面食らう。
「実は貴公らに相談したいことがあるのだ」
「伺いましょう」
「陛下の勅を持った急使がガラム島に渡ったのは既に知るところであるが。未だに何の反応もないのが気にかかる。ここは少人数でカルガーム領に赴き、情報を集めるべきだと思うのだが。どう思う?」
騎士団はカルガーム領へは入っておらず、現状最低限の人数のみでカルガーム領領都とやり取りを行っている。
だがいつまで経っても進展が見えないので、せっかちなグラスダームは自分から何かアクションを起こすべきかと考えていた。
「陛下。私もガラム島の地理に詳しい訳ではありませんが。もしかしたら港から王都まで少し距離がある可能性もあります。まだ1ヶ月も経過していないのです。陛下の勅がある以上、私は今しばらくこの場で様子を見るべきかと思いますが……」
「ううむ……。歴戦の騎士、クインシュバイン殿がそう言うのであれば考慮に値するが……。レックバルトはどうだ?」
話を振られたレックバルトは一瞬考える素振りを見せる。だが結論は出ていた。
「今の段階では私もここで様子を見るべきかと思います。ただ、殿下のお気持ちも理解できます。殿下だけではなく、聖武国の返答を待っているのは誰もが同じなのですから。……クインシュバイン殿。よろしければ1ヶ月の根拠をお伺いしても?」
クインシュバインは構わないと頷きを返す。
「ここからカルガーム領領都への往復距離。そして港からガラム島との往復距離から、おおよその目安に考えたものです。ただし先ほど言った通り、私はガラム島の地理に精通している訳ではありません。あくまで目安の域を超えませんし、最終的な判断は殿下にお任せいたします」
ただし、領都に向かわせるのであれば少人数でかつ非武装。これは付け加えておく。
こちらの行動が相手にどの様なメッセージとして伝わるのか、予想できないのだ。今は薄氷の上で綱渡りしている様なものだし、どれだけ慎重な態度をとっても、やり過ぎという事はない。
「そうか……。いやすまぬ。どうにも気が逸っていた様だ。何せ陛下が勅を出されたばかりか、内容が内容だったからなぁ……」
「無理もありません。陛下の勅は我らばかりか、今後の二国間における関係まで決定するものです。しかし上手く事が運べば、両国が争うことはないでしょう」
「うむ。改めて陛下の……父上は何と大きな皇帝かと思ったのだ。貴族たちの中には、次期皇帝位を継ぐ者を気にしておる者もおるだろうが。私ではとても務まらんだろうな」
「殿下……」
クインシュバインはグラスダームが次期皇帝位に意欲を示しているという話を聞いた事がない。皇位継承権は第二位であり、高い位にいるのは事実だ。
しかしこうして国の窮地においては前線に出向く行動力を持っているし、人によってはそこは評価する者もいれば、評価しない者もいるだろうなと考えた。
「戦乱の世から離れ、安定期に入った帝国にはアールイド兄上こそ相応しいのだろうが……。いや、忘れてくれ。私が言うことでもないな」
前皇帝は強烈な拡大路線の思考をしており、実際に帝国は大きくその領土を広げた。
だがこれほど大きくなった帝国に対し、今や正面からやり合おうという国は少ない。それに隣国に緊張を強いると、結託される恐れもある。
戦乱の世には戦乱の世に相応しい皇帝が。国外よりも国内に注視しなければならない時には、それに相応しい皇帝がそれぞれ帝国の舵を切るのだろう。
クインシュバインはぼんやりとそう考えていた。
(今がどちらなのかは私が判断することではないが。少なくともウィックリン陛下は、前皇帝陛下が広げた領土を上手くまとめられている。弱腰と陰口を叩く者もいるが、その手腕は確かだろう)
自分は領地を運営する貴族ではない。だがウィックリンの治世であれば、領主貴族としてもいくらか安心して領地運営ができるのではないか。
ウィックリンという人となりを知っているからこそ、クインシュバインはそう考えた。
「……アールイド殿下は確か他領で療養中でしたな。私は直接話した事はないのですが……」
「私ももう何年か会っていないな。元気でいてくれる事を祈っているが。うむ、今度久しぶりに手紙を出すとしよう」
どうやら兄弟仲は悪くない様だ。クインシュバインはグラスダームの態度からそう捉えた。
話は終わりか。そう思った時、外から大きな喧噪が聞こえる。
「む?」
「外が騒がしいですな。何かあったのでしょうか」
気のせいか、大気が振るえている様にも感じる。戦場でもあまり感じた事のない類のものだ。クインシュバインは無意識のうちに警戒を強める。
「で、でで、殿下ぁ!!」
そこに大慌てで兵士が入ってきた。その表情を見るに、ただごとではない報告があるのだと察する。
「どうしたのだ! これは何の騒ぎであるか!?」
「そそ、外を……! 物体が黒い、空を飛び……!」
兵士も焦り過ぎて何を言っているのか分からない。
3人は埒が明かないと考え、そのまま幕舎の外へと出る。そして目に入った光景の情報に脳が追い付けなかった。
「………………。……。」
「……んは?」
前方には巨大な黒い塊が浮いており、ゆっくりとこちらに向かって来ていた。
勅の内容は既に伝わっているし、皇帝の命を受けた急使も聖武国へ渡っている。しばらくは聖武国側で動きが見えるまでは、ここで動向を見守ることになるだろう。
「クインシュバイン殿」
「レックバルト殿か」
帝都から発った騎士団には多くの領軍が合流していた。ゼノヴァーム領の領軍もその1つだ。
レックバルトはグラスダームの推薦を受けて、この地に赴いていた。
「急使がガラム島に渡って何日か経ちますが。クインシュバイン殿はこの先の動きについて、どう見られていますか?」
「……確かなことは言えませんが。レックバルト殿も勅の内容はご存じですな?」
「はい」
「勅には皇帝陛下の威信がかかっている。その内容に偽りがあるとは考えていません。であれば、聖武国として取れる選択肢は2つ」
勅の内容には誰もが驚いた。何せウィックリン陛下はいつの間にか黒幕に行きついており、具体名を指して指摘しているのだ。
さらに誰もが探していたフランメリア王女も既に保護されているという。自分たちが意見を戦わせている裏で、別ベクトルから事態の解決に向けた行動をしていたのだ。
(……いや。兄さんが関与している可能性も高い)
クインシュバインの元には、リーンハルトが無事に帝都に帰還したという連絡もあった。詳細は記されていなかったが、帝都へは黒狼会最高幹部の1人、アックスも同行していたという。
そのタイミングで出されたウィックリンの勅。不思議と無関係とは思えなかった。
「その2つとは?」
「多くのリスクを抱えて帝国と事を構えるか。ブラハードを差し出して事を収めるかの2つです。そしてアーランディス国王のこれまでの行動を見る限り、後者の選択を取る可能性が高い」
「……仮に聖武国の貴族の多くが帝国と戦いたがっていたとしても、ですか?」
「国内事情をどう収めるのかは国王たる者の責務でしょう。もっとも、それは帝国とて同じことですが」
つまり貴族の暴走で帝国との戦端が開かれることになったとしても、それはアーランディスの責任であって帝国側の事情とは関係がないという事だ。
帝国側にも同様のリスクはあったが、勅が出された以上、暴走する貴族はまず出てこない。少なくとも皇帝の勅命に反する行動をとる者はこの場にはいない。クインシュバインはそう考えていた。
「なるほど。しかしこの新鋼歴の時代に魔法使いですか……。陛下の勅を疑う訳ではございませんが、魔法使いが存在していると思いますか?」
「どうでしょう。しかし過去に存在した大幻霊石を用い、帝都に混乱を起こした者たちもいたのです。それに近しい者がいたとしても、不思議とは思いませんが」
そう答えながらクインシュバインは胸中で苦笑していた。何せ自分の身近なところに本物の魔法使いたちがいるのだから。
レックバルトはクインシュバインの言葉を受けて、神妙な表情を見せる。
「……どうかされたのかな?」
「いえ。ヴィンチェスターの反乱時、クインシュバイン殿も前線に立っていたからご覧になられたでしょう。ウィックリン陛下の秘密部隊……仮面の者たちを」
レックバルトの言葉に、クインシュバインは彼が何を言いたいのかをおおよそ察する。
「あの者たちは私の目の前で不可思議な現象を巻き起こしていました。そして文字通り、一騎当千の活躍を見せつけた。今思えば、あれは魔法だったのでは。そしてそんな魔法使いたちを、秘密裏に抱えていたウィックリン陛下の深謀遠慮は計り知れないと。そう思ったのです」
事情を知っているクインシュバインからすれば、なんと答えたものか少し迷った。だが自分の口から真実を告げる事はできない。
「……確かに相当な実力者揃いでしたが。彼らが魔法使いである根拠は何もありませんよ。陛下の深謀遠慮については、帝国を率いる立場を考えると頼もしいものではないかと」
「……そうですね。私の様な立場の者が噂に振り回されていては、下に示しがつきません。今のはお忘れください」
魔法使いや陛下の秘密部隊について、上の立場のものが不確定な噂で妙な話をするものではない。
何がきっかけとなり、尾ひれ背びれを付けた噂が広まることになるか分からないのだ。
レックバルトも優秀な若者ではあるが、事態の移り変わりに頭がついていけていないのだろう。そう理解し、クインシュバインは年長者として何かアドバイスできないかと思案する。
「……レックバルト殿。あなたは……」
「ここにおられましたか! クインシュバイン様、レックバルト様! グラスダーム殿下がお呼びです!」
口を開きかけたクインシュバインであったが、途中で兵士が声をかけてくる。クインシュバインはレックバルトと視線を合わせると、そのままグラスダームの待つ簡易幕舎へと向かった。
■
「おお、レックバルトにクインシュバイン殿! 忙しいところすまぬな!」
「いえ。どうかされましたか?」
幕舎にはグラスダームの他、数人の仕えが待機しているのみであった。
クインシュバインは、てっきり責任者を集めて何か話したい事でもあるのだろうと考えていたため、少し面食らう。
「実は貴公らに相談したいことがあるのだ」
「伺いましょう」
「陛下の勅を持った急使がガラム島に渡ったのは既に知るところであるが。未だに何の反応もないのが気にかかる。ここは少人数でカルガーム領に赴き、情報を集めるべきだと思うのだが。どう思う?」
騎士団はカルガーム領へは入っておらず、現状最低限の人数のみでカルガーム領領都とやり取りを行っている。
だがいつまで経っても進展が見えないので、せっかちなグラスダームは自分から何かアクションを起こすべきかと考えていた。
「陛下。私もガラム島の地理に詳しい訳ではありませんが。もしかしたら港から王都まで少し距離がある可能性もあります。まだ1ヶ月も経過していないのです。陛下の勅がある以上、私は今しばらくこの場で様子を見るべきかと思いますが……」
「ううむ……。歴戦の騎士、クインシュバイン殿がそう言うのであれば考慮に値するが……。レックバルトはどうだ?」
話を振られたレックバルトは一瞬考える素振りを見せる。だが結論は出ていた。
「今の段階では私もここで様子を見るべきかと思います。ただ、殿下のお気持ちも理解できます。殿下だけではなく、聖武国の返答を待っているのは誰もが同じなのですから。……クインシュバイン殿。よろしければ1ヶ月の根拠をお伺いしても?」
クインシュバインは構わないと頷きを返す。
「ここからカルガーム領領都への往復距離。そして港からガラム島との往復距離から、おおよその目安に考えたものです。ただし先ほど言った通り、私はガラム島の地理に精通している訳ではありません。あくまで目安の域を超えませんし、最終的な判断は殿下にお任せいたします」
ただし、領都に向かわせるのであれば少人数でかつ非武装。これは付け加えておく。
こちらの行動が相手にどの様なメッセージとして伝わるのか、予想できないのだ。今は薄氷の上で綱渡りしている様なものだし、どれだけ慎重な態度をとっても、やり過ぎという事はない。
「そうか……。いやすまぬ。どうにも気が逸っていた様だ。何せ陛下が勅を出されたばかりか、内容が内容だったからなぁ……」
「無理もありません。陛下の勅は我らばかりか、今後の二国間における関係まで決定するものです。しかし上手く事が運べば、両国が争うことはないでしょう」
「うむ。改めて陛下の……父上は何と大きな皇帝かと思ったのだ。貴族たちの中には、次期皇帝位を継ぐ者を気にしておる者もおるだろうが。私ではとても務まらんだろうな」
「殿下……」
クインシュバインはグラスダームが次期皇帝位に意欲を示しているという話を聞いた事がない。皇位継承権は第二位であり、高い位にいるのは事実だ。
しかしこうして国の窮地においては前線に出向く行動力を持っているし、人によってはそこは評価する者もいれば、評価しない者もいるだろうなと考えた。
「戦乱の世から離れ、安定期に入った帝国にはアールイド兄上こそ相応しいのだろうが……。いや、忘れてくれ。私が言うことでもないな」
前皇帝は強烈な拡大路線の思考をしており、実際に帝国は大きくその領土を広げた。
だがこれほど大きくなった帝国に対し、今や正面からやり合おうという国は少ない。それに隣国に緊張を強いると、結託される恐れもある。
戦乱の世には戦乱の世に相応しい皇帝が。国外よりも国内に注視しなければならない時には、それに相応しい皇帝がそれぞれ帝国の舵を切るのだろう。
クインシュバインはぼんやりとそう考えていた。
(今がどちらなのかは私が判断することではないが。少なくともウィックリン陛下は、前皇帝陛下が広げた領土を上手くまとめられている。弱腰と陰口を叩く者もいるが、その手腕は確かだろう)
自分は領地を運営する貴族ではない。だがウィックリンの治世であれば、領主貴族としてもいくらか安心して領地運営ができるのではないか。
ウィックリンという人となりを知っているからこそ、クインシュバインはそう考えた。
「……アールイド殿下は確か他領で療養中でしたな。私は直接話した事はないのですが……」
「私ももう何年か会っていないな。元気でいてくれる事を祈っているが。うむ、今度久しぶりに手紙を出すとしよう」
どうやら兄弟仲は悪くない様だ。クインシュバインはグラスダームの態度からそう捉えた。
話は終わりか。そう思った時、外から大きな喧噪が聞こえる。
「む?」
「外が騒がしいですな。何かあったのでしょうか」
気のせいか、大気が振るえている様にも感じる。戦場でもあまり感じた事のない類のものだ。クインシュバインは無意識のうちに警戒を強める。
「で、でで、殿下ぁ!!」
そこに大慌てで兵士が入ってきた。その表情を見るに、ただごとではない報告があるのだと察する。
「どうしたのだ! これは何の騒ぎであるか!?」
「そそ、外を……! 物体が黒い、空を飛び……!」
兵士も焦り過ぎて何を言っているのか分からない。
3人は埒が明かないと考え、そのまま幕舎の外へと出る。そして目に入った光景の情報に脳が追い付けなかった。
「………………。……。」
「……んは?」
前方には巨大な黒い塊が浮いており、ゆっくりとこちらに向かって来ていた。
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