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メルナキアちゃんからアンバルワーク信仰国について教えてもらいました。
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『おい。いまの話、もうすこし詳しく聞け』
リリアベルさんから要望が飛んでくる。しゃあねぇなぁ……。
「メルナキア。信仰国では今、精霊と人種が直接やり合っているってことか……?」
「はい。特定の精霊が数多くの精霊をまとめあげ、領土の一部を占領していると聞きます」
まじか……。
これまでの旅で精霊の数はすくないとわかっていた。だが精霊化が多い地だと、徒党も組みやすいのだろう。
それに俺自身、似たようなことに思い当たりがある。キルヴィス大森林でリュインと出会ったときのことだ。
(あの時は位の高い骸骨精霊が、他の精霊を従えていた。狙いはリュインだったが、一緒にいる俺たちもターゲットになっていたな……)
あれをもっと規模を大きくした感じの争いが行われているのだろう。しかし領土まで占領するとは……すげぇな。
「聖地ってのはなんなんだ? アンバルワーク信仰国には聖地があるって言っていたけど……」
「最初の精霊、地水火風の四大精霊が誕生した地を指します」
「え……! それじゃ……信仰国のある大陸で、四大精霊が生まれたってことか……!?」
「そういわれていますね。ただ……本当に聖地で四大精霊が生まれたのか。それを実証するものはなにもありません」
メルナキアの話によると、あくまで口伝などでそう言い伝えられているだけらしい。学術的に聖地で四大精霊が生まれたと証明されたわけではないとのことだ。
一方で信仰国では今も精霊化現状がよく見られており、精霊と縁が深い地なのだろうと考えられているらしい。
そんな地だからこそ、四大精霊信仰が生まれ、またそれぞれを奉る神殿なんかもできたんだろうな。
「つかリュイン。お前、風の聖地で生まれたんだろ? 〈フェルン〉というのは、全員アンバルワーク信仰国出身なのか?」
「えー? そうなんじゃないー?」
「なんで適当な感じなんだ……」
「わたしはたしかにそのシンコー国で自意識が芽生えたけどぉ。他の大陸で自意識が芽生える〈フェルン〉も珍しくはないもの」
また〈フェルン〉の謎が増えた……。つかお前、信仰国にいたことがあんのかよ……。
「わたしはアンバルワーク信仰国に行ったことはありませんが。いつか行ってみたいとは考えていました」
「そうなの?」
「はい。古の精霊時代とおそらく関係が深い地は2つ。1つは魔獣大陸ですが、もう1つがアンバルワーク信仰国なんです」
精霊と共にあった時代だ。当然、聖地があるアンバルワーク信仰国も栄えていただろうと予想ができる。
だがあの地では、魔獣大陸ほど遺跡が見つかっていないらしい。
しかしこれまで研究者たちが積極的に寄り付かなかったという事情もある。まだまだ調査が足りていないのだ。
「精霊との戦争が終われば、この国もいくらか研究者を派遣すると思うのですが……」
「今はやっていない、と」
「はい。お金がないのと、信仰国ととくに友好関係が強いというわけでもないからです」
国が紛争地帯に人を送るとなれば、護衛に騎士をつける。だが信仰国から見て、他国の戦力を自国内にいれるというのは、かなり壁が高い問題だ。
それに限定的に送り込めたとしても、その維持のために金がかかる。
では学者が個人的に護衛を雇って信仰国へ行く場合はどうか。
この場合は問題はない……が。護衛を雇う費用や維持費は個人負担となる。この国の研究者でそこまで余裕のある者はそうそういないだろう。
また魔獣大陸における条約が交わされるまで、大国は魔獣資源を取り合い、奪い合う関係でもあった。
六賢国はそうしたいさかいからは距離を置いていたものの、まったく無関係だったわけでもない。ときに特定の国に港を貸してきた歴史もあるそうだ。
「大国同士で関係は微妙というわけか……」
「魔獣大陸での協定以降、壊滅的というわけでもないのですが。仲良しという表現はむずかしいでしょうね」
信仰国というのが、おおよそどういう国なのか見えてきたな。
砂漠にある国で、精霊が多い。人と精霊は絶賛戦争中。そして聖地があり、四大精霊信仰も行われている……と。
「…………ん? まてよ……。もしかしてだけど。精霊と契約をしている人も多かったりする?」
「え……? ど、どうなんでしょう……。でも精霊を宿す貴石も多く産出される土地ですから。契約者も多いかもしれませんね」
「へぇ……」
以前にリリアベルが話していたことを思い出す。たしか契約を交わした精霊は、貴石に宿るという話だった。
だが精霊との相性次第では、必ずしも用意した貴石に力を宿せるとは限らないらしい。
つまり契約を進めるのにあたり、対象となる精霊と相性がいい貴石を別途用意する必要があるのだ。
精霊が多く生まれる信仰国では、貴石自体も多く産出されている……つまり契約者が生まれやすい土壌はあるのだろう。
(しかも契約できるのは、自然現象系統の精霊だけという話だった。なるほど……これは……)
いよいよ俺が、最強の精霊使いとしてデビューできるか……!?
なんとなく次は信仰国に行ってみるのもいいのではと思えてきた。
それに貴石の類を集めるというのは、目的の1つでもある。その貴石が多く産出されるというのなら、一度行ってみるしかないだろう。
「それで……そ、その。さっきの話なんですが……わたしも。マグナさんたちについて行ってもいいですか……?」
そういやその話をしていたんだった。古の精霊時代からずいぶんと話が飛んでしまっていた……。
どうするかね……と思っていたが、アハトさんからご意見が飛んできた。
「メルナキア。あなたはこのアカデミーで3級修士にあり、自分の研究室も持っています。わたしたちの旅についてくる場合、その立場に影響が出てくるのではないですか?」
「あ……え、と……」
まぁもっともな意見だ。アカデミーの研究室をほっとらかしにして、長期間ぶらついていいのかとなる。
「そ、そうですね……幸い研究室にはわたししかいませんし。アカデミーには長期出張の申請を出して、学会での発表を継続できれば。今すぐになくなる……ということはないかと思います」
なんとかなるんかいっ! どうやらもともと1人で研究をしていたので、このままフィールドワークに出かけることは問題ないらしい。
これが規模の大きな研究室だと、管理費用も含めてややこしい話になるそうだ。
また研究室としての義務……学会での発表を継続できるのであれば、1人しかいない研究室でもなんとかなるかも……とのことだった。
「でも俺たちについてくると、ずっと研究ができるとも限らないぜ? 学会発表用の資料を作成している時間もとれねぇかもよ?」
「は……はい。もしもの場合は……アカデミーから籍を抜こうと思います」
「え!?」
「マグナさんたちについていけば、アカデミーにいれば出会えないような発見があると思うんです。たぶんお父さんは、そうやって地下の巨人など、歴史の神秘に触れられるようになったんだと思います」
ああ……なるほど。エンブレストのやらかしたことが、ある意味きっかけになっているわけだ。
アカデミーを出たからこそ、より歴史の真実に近づけたのではないか……と。
『ふむ……まぁいいのではないか。現地人の同行者はリュインだけだったし。メルナキアであれば、教育すればわたしの助手も務まるだろう』
おや……リリアベルは問題ないようだ。同じ研究者肌同士、なにか思うところでもあったのかね。
『ただしせっかくアカデミーでわるくないポジションに就いているんだ。これはなるべく維持させるように伝えろ』
「へいへい……。あー、メルナキア。俺たちについてくること自体は構わないんだが……」
「…………! 本当ですか!?」
「あ、ああ。でもここでの立場もあるだろ? 俺たちのせいで修士がなくなっても申し訳ないし……なんとか両立できる方向でがんばってくんね? もちろんなにか手助けできることがあれば、積極的に協力するしよ」
まぁメルナキアにはこの国に来たときからいろいろ世話になったしな。
それにこの世界についての知識も豊富だ。俺たちにとっていいアドバイザーにもなれるだろう。
「そ、それなら……来年の学会に向けて、いくつかアイデアがあるので……。あらかじめまとめておけば、次の学会でもいい発表ができるかもしれません。その準備をしつつ、アカデミーに届け出を出して……だいたい3ヶ月もあれば、ひと段落するでしょうか……」
「ならまたそのころに迎えにくるよ」
「え……」
「その間、俺たちはまた別の場所に行く」
シグニールや俺たちの正体を明かすイベントは、そのときにとっておこう。
「どこに……いかれるのでしょうか?」
「アンバルワーク信仰国! ここしかねぇなぁ! 話を聞いているうちに、行ってみたくて仕方がなくなったぜ!」
リリアベルさんから要望が飛んでくる。しゃあねぇなぁ……。
「メルナキア。信仰国では今、精霊と人種が直接やり合っているってことか……?」
「はい。特定の精霊が数多くの精霊をまとめあげ、領土の一部を占領していると聞きます」
まじか……。
これまでの旅で精霊の数はすくないとわかっていた。だが精霊化が多い地だと、徒党も組みやすいのだろう。
それに俺自身、似たようなことに思い当たりがある。キルヴィス大森林でリュインと出会ったときのことだ。
(あの時は位の高い骸骨精霊が、他の精霊を従えていた。狙いはリュインだったが、一緒にいる俺たちもターゲットになっていたな……)
あれをもっと規模を大きくした感じの争いが行われているのだろう。しかし領土まで占領するとは……すげぇな。
「聖地ってのはなんなんだ? アンバルワーク信仰国には聖地があるって言っていたけど……」
「最初の精霊、地水火風の四大精霊が誕生した地を指します」
「え……! それじゃ……信仰国のある大陸で、四大精霊が生まれたってことか……!?」
「そういわれていますね。ただ……本当に聖地で四大精霊が生まれたのか。それを実証するものはなにもありません」
メルナキアの話によると、あくまで口伝などでそう言い伝えられているだけらしい。学術的に聖地で四大精霊が生まれたと証明されたわけではないとのことだ。
一方で信仰国では今も精霊化現状がよく見られており、精霊と縁が深い地なのだろうと考えられているらしい。
そんな地だからこそ、四大精霊信仰が生まれ、またそれぞれを奉る神殿なんかもできたんだろうな。
「つかリュイン。お前、風の聖地で生まれたんだろ? 〈フェルン〉というのは、全員アンバルワーク信仰国出身なのか?」
「えー? そうなんじゃないー?」
「なんで適当な感じなんだ……」
「わたしはたしかにそのシンコー国で自意識が芽生えたけどぉ。他の大陸で自意識が芽生える〈フェルン〉も珍しくはないもの」
また〈フェルン〉の謎が増えた……。つかお前、信仰国にいたことがあんのかよ……。
「わたしはアンバルワーク信仰国に行ったことはありませんが。いつか行ってみたいとは考えていました」
「そうなの?」
「はい。古の精霊時代とおそらく関係が深い地は2つ。1つは魔獣大陸ですが、もう1つがアンバルワーク信仰国なんです」
精霊と共にあった時代だ。当然、聖地があるアンバルワーク信仰国も栄えていただろうと予想ができる。
だがあの地では、魔獣大陸ほど遺跡が見つかっていないらしい。
しかしこれまで研究者たちが積極的に寄り付かなかったという事情もある。まだまだ調査が足りていないのだ。
「精霊との戦争が終われば、この国もいくらか研究者を派遣すると思うのですが……」
「今はやっていない、と」
「はい。お金がないのと、信仰国ととくに友好関係が強いというわけでもないからです」
国が紛争地帯に人を送るとなれば、護衛に騎士をつける。だが信仰国から見て、他国の戦力を自国内にいれるというのは、かなり壁が高い問題だ。
それに限定的に送り込めたとしても、その維持のために金がかかる。
では学者が個人的に護衛を雇って信仰国へ行く場合はどうか。
この場合は問題はない……が。護衛を雇う費用や維持費は個人負担となる。この国の研究者でそこまで余裕のある者はそうそういないだろう。
また魔獣大陸における条約が交わされるまで、大国は魔獣資源を取り合い、奪い合う関係でもあった。
六賢国はそうしたいさかいからは距離を置いていたものの、まったく無関係だったわけでもない。ときに特定の国に港を貸してきた歴史もあるそうだ。
「大国同士で関係は微妙というわけか……」
「魔獣大陸での協定以降、壊滅的というわけでもないのですが。仲良しという表現はむずかしいでしょうね」
信仰国というのが、おおよそどういう国なのか見えてきたな。
砂漠にある国で、精霊が多い。人と精霊は絶賛戦争中。そして聖地があり、四大精霊信仰も行われている……と。
「…………ん? まてよ……。もしかしてだけど。精霊と契約をしている人も多かったりする?」
「え……? ど、どうなんでしょう……。でも精霊を宿す貴石も多く産出される土地ですから。契約者も多いかもしれませんね」
「へぇ……」
以前にリリアベルが話していたことを思い出す。たしか契約を交わした精霊は、貴石に宿るという話だった。
だが精霊との相性次第では、必ずしも用意した貴石に力を宿せるとは限らないらしい。
つまり契約を進めるのにあたり、対象となる精霊と相性がいい貴石を別途用意する必要があるのだ。
精霊が多く生まれる信仰国では、貴石自体も多く産出されている……つまり契約者が生まれやすい土壌はあるのだろう。
(しかも契約できるのは、自然現象系統の精霊だけという話だった。なるほど……これは……)
いよいよ俺が、最強の精霊使いとしてデビューできるか……!?
なんとなく次は信仰国に行ってみるのもいいのではと思えてきた。
それに貴石の類を集めるというのは、目的の1つでもある。その貴石が多く産出されるというのなら、一度行ってみるしかないだろう。
「それで……そ、その。さっきの話なんですが……わたしも。マグナさんたちについて行ってもいいですか……?」
そういやその話をしていたんだった。古の精霊時代からずいぶんと話が飛んでしまっていた……。
どうするかね……と思っていたが、アハトさんからご意見が飛んできた。
「メルナキア。あなたはこのアカデミーで3級修士にあり、自分の研究室も持っています。わたしたちの旅についてくる場合、その立場に影響が出てくるのではないですか?」
「あ……え、と……」
まぁもっともな意見だ。アカデミーの研究室をほっとらかしにして、長期間ぶらついていいのかとなる。
「そ、そうですね……幸い研究室にはわたししかいませんし。アカデミーには長期出張の申請を出して、学会での発表を継続できれば。今すぐになくなる……ということはないかと思います」
なんとかなるんかいっ! どうやらもともと1人で研究をしていたので、このままフィールドワークに出かけることは問題ないらしい。
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また研究室としての義務……学会での発表を継続できるのであれば、1人しかいない研究室でもなんとかなるかも……とのことだった。
「でも俺たちについてくると、ずっと研究ができるとも限らないぜ? 学会発表用の資料を作成している時間もとれねぇかもよ?」
「は……はい。もしもの場合は……アカデミーから籍を抜こうと思います」
「え!?」
「マグナさんたちについていけば、アカデミーにいれば出会えないような発見があると思うんです。たぶんお父さんは、そうやって地下の巨人など、歴史の神秘に触れられるようになったんだと思います」
ああ……なるほど。エンブレストのやらかしたことが、ある意味きっかけになっているわけだ。
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おや……リリアベルは問題ないようだ。同じ研究者肌同士、なにか思うところでもあったのかね。
『ただしせっかくアカデミーでわるくないポジションに就いているんだ。これはなるべく維持させるように伝えろ』
「へいへい……。あー、メルナキア。俺たちについてくること自体は構わないんだが……」
「…………! 本当ですか!?」
「あ、ああ。でもここでの立場もあるだろ? 俺たちのせいで修士がなくなっても申し訳ないし……なんとか両立できる方向でがんばってくんね? もちろんなにか手助けできることがあれば、積極的に協力するしよ」
まぁメルナキアにはこの国に来たときからいろいろ世話になったしな。
それにこの世界についての知識も豊富だ。俺たちにとっていいアドバイザーにもなれるだろう。
「そ、それなら……来年の学会に向けて、いくつかアイデアがあるので……。あらかじめまとめておけば、次の学会でもいい発表ができるかもしれません。その準備をしつつ、アカデミーに届け出を出して……だいたい3ヶ月もあれば、ひと段落するでしょうか……」
「ならまたそのころに迎えにくるよ」
「え……」
「その間、俺たちはまた別の場所に行く」
シグニールや俺たちの正体を明かすイベントは、そのときにとっておこう。
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