世話役転生 〜生きるためなら、魔王娘の世話役くらいなってやる〜

ゆざめ

文字の大きさ
45 / 48

43話 魔族階級

しおりを挟む
 俺が暮らしているここ、魔王城の3階には大広間がある。
 天井には長方形の照明が等間隔で設置され、床は1面畳張り、壁は全て襖。
 言うなれば、めっちゃ和な部屋である。
 今日は、そんな大広間でのお話……。

「我は、我は、我は、なんて大きな勘違いをしていたのだ……!」

 そう。
 今この瞬間、俺とシェルヴィ様を1週間もの間隔てていた、大きな誤解の壁が崩壊したのだ。

「いやいや、全ては俺の言葉足らずが原因です!
 本当に申し訳ございませんでした!」

 俺は畳にしっかりおでこを付け、シェルヴィ様に土下座した。

「むぅ、我が子供だったばかりに迷惑を……」

 シェルヴィ様はシェルヴィ様で、膝から崩れ落ちている。

「いやいや、本当に全て俺のせいですから!」

 土下座する俺と崩れ落ちるシェルヴィ様。
 2人から見れば、さぞカオスな光景だったことだろう。

 しかし、あろうことか2人の間でそれ以上にカオスな発言が飛び出したことで、俺とシェルヴィ様のカオスな光景は打ち消された。
 それは2人のこの会話である。

「シロ、あの2人をよく見ておくのにゃ」

「お姉さま、それはなぜですか……にゃ?」

「ふっふっふ。
 そんなの、シロだからに決まってるにゃ」

「・・・?」

 双子のシロさんですら理解出来ないクロさんの一言。
 若者言葉で言うところの、まじ意味不である。

 そんな訳で空気が終わりかけたその時、部屋前方にある襖がスゥーと開いた。

「やぁハースくん、今日は急な招集に応じてくれてありがとう」

「いえいえ、特に予定もありませんでしたのでお構いなく」

「それはよかった」

 パパさんはそう言うと、指パッチンを鳴らし、低い机1つと座椅子5つを同時に出現させた。

「さぁ、全員座って」

「はい」

 パパさんは短辺に、クロさんとシロさんは右辺に、俺とシェルヴィ様は左辺に座った。

「えー、今日ハースくんを呼んだのは他でもない、魔族階級に関する話さ」

「魔族階級……ですか?」

「そう。
 魔族階級を知らない魔族なんて、魔界にはまずいないからね」

 パパさんが手と手を向かい合わせパチンと音を鳴らすと、文字が書かれたホワイトボードのようなものが俺の前に現れた。

「ハースくん、それが魔族階級だよ」

「これが、魔族階級……」

 そこには、箇条書きでこう書かれていた。

『1、エモーラ 2、ネソト 3、ナトフ 4、ホコテ 5、ヒユレ 6、ユケノ』

「ハース、ちなみに我はヒユレなのだ」

「へ、へぇ……」

 そう言われても、俺には何が何だかさっぱり分からない。
 くそっ!
 シェルヴィ様の言葉を理解出来ないのが、こんなにも辛いなんて……。

「シェルヴィ、いきなりそんなことを伝えても、かえってハースくんを困らせてしまうだけだよ。
 でも一応、参考として僕はエモーラ」

 パパさんは両手のひらを上に向け、クロさんに差し出した。

「うちはナトフにゃ」

 続けて、シロさんに。

「私もナトフです……にゃ」

「へぇ」

 なるほど、少し分かった。

 まず、1に近いほど階級は高い。
 あと、これは多分だが、魔王軍幹部レベルになるとナトフ以上の階級、そしてパパさんと幹部の間には1階級分の差がある、と。

「じゃ、じゃあ、俺の魔族階級は何ですか?」

「うんうん、気になるよね。
 だから僕も、しっかり調査を依頼しておいたんだ」

 そう言って、パパさんはタキシードの内ポケットから茶封筒を取り出した。

「これがその調査結果さ」

 そこには、『ハース・シュベルト 魔族階級調査結果』と書かれている。

「えーっと、ハースくんの魔族階級はねぇ……」

 なんの躊躇いもなく、茶封筒から紙を取り出すパパさん。

 なんかこう、少しくらい溜めをつくって、盛り上げてくれてもいいのになぁ、なんて。

 しかしその直後、予想外の出来事が起こった。

「な、なんだって……!」

 なんと、あの常に冷静で朗らかなパパさんが、白目をむき、畳に倒れたのだ。

「ヘリガル様!」

「ヘリガル様……!」

 ただ、流石は魔王城に仕えるメイド。
 すぐさまクロさんが背中を支え、シロさんが温かいお茶を飲ませたことで、パパさんはすぐに起き上がった。

「はぁ、すまないね。
 つい年甲斐もなく驚いてしまったよ」

 常に冷静なパパさんの驚く顔。
 自然と全員の緊張が高まった。

「ど、どうだったんですか……ごくりっ」

 そして、その原因が今、明らかになる。

「ハースくんの魔族階級は……エモーラ、だって」

「はっ?」

 俺の頭は、当然のように真っ白になった。
 それはまるで、シェルヴィ様の声に導かれ、光に手を伸ばす前のように。

「パパ、今エモーラって言ったのだ……?」

「ヘリガル様、またまたご冗談を……あはは、あははー」

「エモーラ……にゃ」

 そして、俺の目の前に調査書類と茶封筒が置かれた。

「ハ、ハースくんも確認してみて……!」

 今の発言が嘘でないことを証明するため、パパさんが魔法で飛ばしてくれたのだ。

「エモーラ……」

 俺はボーッとしたまま茶封筒の中に手を入れた。
 すると……。

「あれ?
 何か入ってる……」

 そこには、調査書類とは別に、カラフルなポスターが入っていた。
 俺はそれを茶封筒から取り出し、書いてある文字を言葉にして読んだ。

「えーっと、なになに。
『魔界女子の夢第1位、エモーラの人と結婚する』
 それで、
『もし結婚するなら、付属のマモノーン婚姻届に記入を!』
 なるほどなるほど……って、ええええ!」

 えーっと待て待て、エモーラの人と結婚するのが魔界女子の夢第1位で、俺がそのエモーラ。
 つまり、俺と結婚したい女子がこの世界にはたくさんいるってこと!?

 やばい、これはまた面倒事の予感が……!

「なぁハース、うちはどうにゃ?」

「ハースさん、私じゃだめですか……にゃ?」

 ほらっ、言ったでしょ。

「いやいや、結婚なんてまだ考えられませんって!」

 俺の必死の言い訳に、その場は何とか丸く収まった。

「はぁ、セーフ」

 そして、俺はついに問題の調査書類を手に取った。
 すると、そこには太字でハッキリと『エモーラ』と書かれている。

「ちょっと……失礼します!」

 俺は逃げるように大広間を飛び出した。

「ハース、どこに行くのだ!」

「シェルヴィ様、少しの間1人になってきます!」

 そして、大広間を出てすぐ、自分の部屋に空間転移した。

「はぁ、とりあえず外でも歩こう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...