待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第1章 ギルド入会

第十九話

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 ログインした先は広場の【転移門】だった。
 良かった…。回線抜かれておちたからどこに出るかと思ったけど、普通に【転移門】からインできた。
 視界の片隅に表示された時計の時刻は23:07。
 横暴な妹に回線抜かれて強制ログアウトされた僕は、すぐにスコルさんにメールを送った。
 事情を聞いたスコルさんは「それは御愁傷様です:-(」と言って許してくれた。
 
 それにしても……。
 広場を見回すと、ものすごい人でごった返していた。
 視界に表示されているMAPの光点が青で埋め尽くされているほどのPCの数。
 イベントのある渋谷の交差点並みに人が多い。
 
「これだけ多いとMAPが見えづらいな…」

 僕はメニューを開いて視界MAPの設定をタップ。
 PC非表示に設定を変えた。
 するとMAP内に映る青い光点が一瞬にして消えて、NPCを示す緑の光点と主要施設と自動マッピングで更新解放された施設の名が印されるだけになった。

「よし」と僕は満足気に頷く。

 周りは今も変わらず人で溢れているけど、こうするとMAPが見えやすくなる。
 ちなみにパーティーメンバーとフレは任意操作でMAPに映るようにできる。
 なかなか使い勝手のいい設定だな。

「さてさんはどこだ?」

 僕はメニューを操作しアドレス帳を開いた。
 スコルさん改め、アーノルドさんのアカウントにメールを送った。

『ファントムです。いま広場にいます。いまどこにいますか?』

 簡潔にメールを送った僕は、アーノルドさんの返信を待った。
 ああ~!なんか緊張してきた…!もう心臓バクバクいってるよ。
 そういえば今更ながらに僕は気づいてしまった…!
 アーノルドさんとメールとかのやりとりはしたことはあるけど、一度も会話をしたことがない…。もちろん会ったこともないし、どうしよう…。
 ヤバい逃げたくなってきた…(泣)
 
 実は【アトランティス】のメニュー画面は現実リアルで使用しているPCパソコン又はスマホ、タブレット等のデータを共有することができる。
 通話やSNS等が使えるし、カメラ機能も付いている。
 余談だけど妹の友達がこのゲームをやっていて、仮想現実この世界の風景やキャラなどをスクショしてインスタとかにアップしているみたいだ。
 ちなみにカメラは仮想体アバターの目。
 メニュー画面がシャッターで、レンズの役目を果たすのがアバターの目だ。
 自分の視線というか視点で撮れるから、慣れれば扱いやすいと掲示板に書かれていた。
 まあ、僕はインスタとかやってないからやらないけどね(笑)
 僕は緊張を紛らわすために周りにいるPCの人間観察をしていると、メニュー画面を片手に写真を撮っているPCがけっこういた。





「ファントムさんですか?」
「あ、はいそうですけど、もしかしてアーノルドさんですか?」
「どうも。スコルことアーノルドです。こうして会って話すのは初めてですね?」
「そうですね。あ、はじめまして。ファントムです」

 初めて会って話すアーノルドさんは【剣士】職のター○ネーター○-800だったw
 聞けばスコルさんは、チュートリアルで勧められたデフォルトキャラクター【シュワちゃん】を気に入り、自分の仮想体アバターに決めたそうだ。
 そのときついでに名前も変えたとのこと。
 ターミ○ーターを演じたアーノルド・シュ○ルツェ○ッガーからとったようだ(笑)
 
 アーノルドさんは見た目が殺人兵器でも物腰が柔らかく安心できる雰囲気をまとっていた。
 外見だけで人を判断するなという良い見本だ(笑)
 人見知りのコミュ障な僕が初対面でもう緊張せずに話せるということは、かなり対人スキルが高いということだ。伊達に社会人歴が長いだけじゃないな。
 メールやチャットのやりとりでいい人だというのはわかっていたけど、想像以上にいい人だった。





 僕とアーノルドさんは広場のベンチに腰掛けて、屋台で買ったモーモービーフの串焼きを食べながら情報交換をしていた。
 お互いこなしたクエストの情報を、自分の推測と感想を交えて交換していくと、同じクエストでもが生じていることに気がついた。
 例えば【迷子の捜索】

「へえ、じゃあアーノルドさんの相棒は神父だったんですね」
「そうなんですよ。個人的にはシスターが良かったんですけどね…」
「僕はシスターと一緒に下水道ダンジョン行きましたけど、ほぼシスター無双でしたよ(笑)」
「ああ、そっちもですか!こちらの神父も無双してましたよ大剣担いで」
「きっとあそこの教会は脳筋物理の神父とシスターしかいないんですよ」
「前衛職は普通に【魔法職】の相棒が良かったですけどね…」
「たしかに(苦笑)下水道狭かったから二人並んで戦えませんし、バフ使える後衛が良かったかも」
「それに他のプレイヤーが同じクエストをやってたら、狭くて戦いになりませんでしたよ。一応インスタンスダンジョンだったから他のプレイヤーと遭遇しませんでしたけど」
「最下位ランクのインスタンスダンジョンで大体1~2時間でクリアとなると、高ランクのインスタンスダンジョンは何十時間かかるんですかね?」
「長時間拘束は本当に勘弁してほしいです…。疲労とストレスで倒れますよ…」
「ところでボスのエルダーリッチはどうでした?序盤の最下位ランクのボスにしてはしぶとくなかったですか?」
「そうですね…。魔法攻撃にさえ気をつければ楽に倒せる相手でしたけど、相棒の神父がいなかったら、レベル1や2で倒すのは難しいかと」
「ソロだったら死んでましたね…」
「同じレベルの相棒でも勝つのは厳しいと思います。だからこその物理寄りの相棒だったのかもしれません」

 などと話し合う僕達。
 話題はやがてプレイヤーの話になった。
 
「アーノルドさん、あそこ見てください!名前が『キリト』でアバターが【よろず屋】ですよ」
「せめて【ぽっちゃり双剣士】で名乗ってほしかったですね、残念です。ファントムさんあちらのプレイヤーを見てください」

 アーノルドさんがそっと指差した先には、【セクシー水着】姿の女性がいた…!

「ウソだろ…!?アレを課金して装備するプレイヤーがいたのか…!?」

 グラビアアイドルのようなスタイルのいい女性プレイヤーは、周囲の男性プレイヤーの視線を奪っている。
 タイトル通り、視線を釘付けするセクシー水着だった!

「なにを驚いているんですかファントムさん」
「だ、だってあんなエロいの課金してまで装備する人の気が知れませんよ!きっとあの人ビッチかネカマですよきっと」
「ふふ…。わかっていませんねファントムさん。それはきっと間違った考えです」

 ふとももに肘をつき、祈るように合わせた両手を口元に添えて、アーノルドさんはしみじみと諭すように言った。
 水着プレイヤーを見つめるアーノルドさんの瞳は、美しいモノを愛でる紳士の表情かおになっていた。

「このゲームはキャラの姿形を自在に変えられます。きっとあの姿は彼女が望んだ姿…。ファントムさん、彼女の顔を見てください。自信に満ち溢れた顔をしているじゃないですか。きっと現実リアルではああいう水着を着る自信がなかった。しかし仮想体アバターを自分の思い通りに変えられることで、理想のに生まれ変わることができた。自分に自信が持てるようになったからこそ、あの水着を堂々と着ているんですよ」

 な、なん、だと…!?
 アーノルドさんの言葉に僕はショックを受けた…!
 …確かにそう言われるとそんな気がする。
 
「さすがアーノルドさん。そこまで考えつきませんでした」
「ふっ…。ファントムさんならその内理解わかるようになりますよ」

 さすが社会人、子供の僕とは発想が違う大人の風格を感じた。
 心の中で『兄貴』と呼ばせてもらおう…。
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