待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

文字の大きさ
61 / 186
第3章 ソロプレイヤー

第五十七話

しおりを挟む
 改めてPTを組んだ僕らは転移門から西にある【アイゼン村】へ転移した。
 顔見知りに会いたくないからできるだけ【アトラス】から離れたかったというのもあるけど本当の目的はべつにある。
 塀の中で作れるようになった武器の作成をするための素材を取りにここへ来た。 
【龍住まう山脈】は様々な鉱石の素材が獲れる。
 目当ての素材は【鉄鉱石】でこれはすっかり手付かずで進めていない特殊ユニーク連続クエスト【鍛治師の挑戦】に必要な素材でもあるし、一石二鳥というわけだ。

 来て早々引き返すことになった【アイゼン村】にはPCプレイヤーが結構いた。
 僕が最初にここに辿り着いた時はPCの影も形もなかったけど、今は普通にPCが歩いていた。
 こうしてみると数ヶ月分の遅れを肌で実感するなあ…。
 って、しみじみしている場合じゃないな。

「とりあえずしばらくはここを拠点に活動するから宿をとっておこう」
「了解です」
「…了解」

 ていうか宿とれるかな?
 結構なPCひとの多さに僕は不安を覚えながらも僕らはひとまず宿屋へ向かった。

 小さな村に相応しいこじんまりとした宿屋に向かうと普通に部屋をとれてしまった。
 部屋数は二桁もないはずなのにおかしい…?
 ここに来たPCは宿をとらないのかな?それとも転移門ですぐに他の街へ行けるから宿をとる必要がないのかわからないけど、とにかくとれて良かった。
 一人一泊5G。三人で一泊15Gと安いのにね。
 とりあえず三日分の部屋代を払った僕は、早速ゼルとヴァイスを連れて外に出かけることにした。

 目的地は【龍住まう山脈】
 その麓にある入り口らへんに目的の【鉄鉱石】があるみたいだ。
 ここまで来たらそんなに遠くはないだろうけど、ここらへんの魔物との戦闘をこなしてみないと話にならない。
 塀の中では囚人NPCと一対一の模擬戦をしたり鈍重なゴーレムナイトと集団戦くらいしかまともに戦ってなかったから、久し振りのガチの戦闘となると多少の不安がある。
 先生自ら模擬戦形式で色々なスキルを教えてもらったからそう簡単にやられたりはしないだろうけど、を取り戻すことと二人との連携を確かめるために何回か戦闘をしてみて調整してみようと思った。
 PTメニューを開いてゼルとヴァイスのステータスを閲覧してみたけど、何気に二人ともレベル的には僕より高い。
 装備に若干の不安があるけど、それは僕も同じだし金銭的に余裕もない。
 こうなったら大量に【鉄鉱石】をゲットしてみんなの装備を新調するか。
 
「あ!」
「どうしました?」
「…?」

 いきなり立ち止まった僕にゼルとヴァイスは首を傾げている。

「ごめん。雑貨屋に寄っていい?ツルハシ買うの忘れてた」

 鉱石を採掘するには【ツルハシ】というアイテムが必要だ。
 一応武器扱いになっているけど、ツルハシは職業に関係なく誰でも使える代物だ。
 武器のランク、レアリティによって獲れる鉱石が変わるらしいけど【鉄鉱石】はランクが低いので市販されてる普通のツルハシで充分だ。
 ただのツルハシは耐久力がそんなに高くないからいくつか買っておこう。
 僕達はこの村で唯一の雑貨屋へ行き、一番安いツルハシ(ひとつ100G)を五つほど購入してから村を出た。


 アイゼン村から西の山脈方面へ歩を進めていくと魔物とエンカウントした。
 石ころみたいな魔物、ロックスライムとハゲタカみたいな鳥の魔物デスホーク。
 久し振りの魔物との戦闘に気を引き締めて、僕は右手に十文字槍+1を、左手にミスリルの盾を構えた。
 魔物の頭上に浮かぶHPゲージと名前を素早く見てとった僕はゼルとヴァイスに指示を送る。

「戦闘陣形1!構えて!」
「「了解!」」

 僕から少し距離を置いた右隣にゼル。
 僕とゼルの間の後方にヴァイス。
 二等辺三角形のような陣形を組んで魔物を迎え撃つ。
 予め指示しといたフォーメーションをすぐに築けた僕達は魔物の迎撃に入った。
 開幕からの【咆哮】は今回なしでいくつもりだ。
 空を飛んでるデスホークがいるから【咆哮】で引きつけたいところだけど、とりあえず様子見で。
 ていうかハゲタカみたいな格好なのにデスって…(苦笑)

「ピキキー!」

 そんなことを考えている間にロックスライムが僕に向かって飛びかかって来た。
 もただの石ころにしか見えないんだけどスライムなのか…。
 僕は跳んできたロックスライムをしっかりと見据える。
 
『【心眼】が発動されました』
『ファントムのDEXが50%上昇しました』
『ファントムのAGIが50%上昇しました』

 塀の剣術授業で習得した任意発動アクティブスキル【心眼】のおかげかロックスライムの動きが
 僕は跳んできたロックスライムに向けてミスリルの盾を繰り出した。
 盾スキル【シールドバニッシュ】
 カウンター気味に放った盾スキルが宙空のロックスライムに当たった。
 当たった瞬間、ロックスライムのHPゲージが一気になくなりポリゴンの粒子、光のカケラとなって砕け散った。

「へ?」

 あまりの弱さに拍子抜けした声を出してしまった。
 もう一体のロックスライムがゼルに向かって飛びかかっていくのが見えた。

「【スラッシュ】!」

 焦らずに繰り出したゼルの短剣スキルが煌めきロックスライムのHPゲージを一気に削る。
 吹き飛ばされながら砕け散るロックスライム。
 さすがゼル。
 レベルもそれなりに高いけど短剣スキルもレベル10とCSカンストしてるのは伊達じゃないな。
 さて残るはデスホーク二体。
 上を見上げるとデスホークが旋回している。
 何回か旋回したあとデスホーク二体が僕に向かって急降下してくるのが
 僕は右手に持った十文字槍+1を気持ち引くように構えた。
 槍の刃が赤く光り輝く。
 僕は時間差で降りてくるデスホーク目掛けて槍を突き出すように放った。

 槍スキル【疾風突き】

【心眼】の効果も合わさった【疾風突き】は先に急降下したデスホークの眉間に突き刺さるとすぐに槍を引き抜き、次に降りてきた二体目のデスホークの眉間に突き刺さった。
 確かな手応え。

 「よし!」

 狙い通りの箇所に命中ヒットしたことに喜ぶ僕。
 二体のデスホークは地に落ちる前にポリゴンのカケラとなって消え去っていった。

『魔物の群れを倒した!』
『パーティーメンバーそれぞれにEXPを20獲得しました!』
『ファントムの槍熟練度が1上がりました』
『ファントムの盾熟練度が1上がりました』
『【魔核(小)】を獲得しました』
『死喰鳥の羽を2獲得しました』

 戦闘終了。
 システムメッセージが流れる。

「弱っ…」

 あまりの弱さに思わず呟いてしまった。
 まあ、序盤って言えば序盤の魔物てきだしこんなものかな?
 塀の中に入る前の僕だったらかなり苦戦していた相手だと思うけど…。
 レベルは変わってないけどスキルは結構充実している。
 レベル制のMMOはレベルが上がれば上がるほどアホみたいに強くなれる。
 でもこのゲーム、アトランティスはレベルよりスキルが上がるほど強くなれる傾向が強いのかも。

「やりましたね兄貴!」
「…つまらない」

 喜ぶゼルと対照的に面白くなさそうなヴァイス。
 ヴァイスは後衛の回復職ヒーラーだしね、僕とゼルの前衛の攻撃職アタッカーのHPが減ったり状態異常にならないと出番がない。

「フォーメーション変えてヴァイスも参加する?」
「…いいの?」
「大した敵いないしヴァイスも前衛に入っても大丈夫だと思うよ?」

 ヴァイスは【白魔導士】だけど近接戦闘系のスキルも持っている。
 手に持つ樫の杖で繰り出せる【杖術】スキルの他に、剣士系の【剣術士】も習得してる。
 もし敵が懐に入っても対処できるように鍛えてもいいかもしれない。
 次からの戦闘はヴァイスも前衛に入ることにして、危なくなったらヴァイスは後衛に下がってフォーメーション1に戻るという指示を二人に出した。

「このまま目的地まで進もうか?」
「了解です」
「…了解」

 この調子で何回か擦り合わせも兼ねて戦闘を繰り返せばも取り戻すだろう。
 僕らは【龍住まう山脈】へこのまま進むことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...