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第3章 ソロプレイヤー
第六十五話
しおりを挟む『【心眼】が発動されました』
『ファントムのDEXが50%上昇しました』
『ファントムのAGIが50%上昇しました』
飛び出したと同時に発動させた【心眼】のおかげか、masatoの動きが手に取るように見える。
masatoの剣をかいくぐり僕は【シールドバニッシュ】を発動。
masatoの顔面めがけて繰り出された迫り来る盾。
masatoの目に驚きの色が見えた。
まさか盾役の僕が開幕早々向かってくるとは思わなかったんだろう。
ましてや自分の攻撃を躱されてカウンターを受けるなんて想像もしていなかったんだろうな。
僕は構わず全力で盾を振り抜いた。
エフェクトを撒き散らしながらmasatoの顔面にめり込むと、確かな手応えと衝撃とともにmasatoは大きく後ろへ吹っ飛んでいった。
「がはっ!」
二、三度バウンドしながら土煙を上げて転がっていくmasato。
コンマ一秒で技後硬直の解けた僕はすぐに追撃に移った。
最速で…!最短で…!真っ直ぐ一直線に…!
「ぶちかます…!」
僕はそう呟きながら、腰だめに構えて槍を突き出すように飛び出した。
続いて発動した槍の攻撃スキル【突撃】
狙いは離れた場所で倒れるmasato。
masatoのHPゲージが二割ほど減っているのを目にした僕は、よろよろと立ち上がるmasatoの腹部に向かって容赦なく槍を突き刺した。
衝撃槍はミスリルの鎧を簡単に貫き、masatoの腹部に刃が突き刺さった。
「っ!?」
突き刺されたmasatoは驚愕の目を見張る。
さらにmasatoのHPゲージが三割ほど削れた。
【突撃】を発動した際に起きる技後硬直は一秒。余裕で次の行動に移れる。
(喰らえ…!)
僕は槍の鍔元にあるトリガーを引いた。
バンッ!とシリンダー状の鍔が回り、刀身に撃ち込まれる激しい音が鳴り響くと同時に刃から短剣のような杭が飛び出した。
腹に突き刺した状態で衝撃槍に装填した杭剣を撃つと、masatoの身体は再び吹っ飛んだ。
まるで車に撥ねられたような勢いで吹っ飛ぶmasato。
masatoHPゲージがさらに一割ほど削れた。
僕はそこで追撃をやめてmasatoの様子を伺うことにした。
「クソッタレ…!んだコレ…!」
刺された腹を押さえて立ち上がるmasato。
頭上のHPゲージが裂傷のアイコンが浮かび、徐々にゲージが減少していた。
masatoは自分の状態異常に気づいたのか手をかざしてメニューを出した。
隙だらけで今ならやりたい放題だけどあえて放置する僕。
槍を肩に担いでmasatoを見つめていた。
masatoはポーションのような瓶を取り出すと自分の腹部に振りかけた。
あれは裂傷を回復させるアイテムなのかな?
「無駄だと思うけど…」
「なんだよコレ!?回復しねーだと!?」
僕の呟きをかき消すような大声でmasatoが叫んだ。
普通の裂傷は回復アイテム使えば治ると思うけど、僕が与えた裂傷は普通の裂傷じゃない。
僕が撃ち込んだ杭剣はmasatoの腹に深く突き刺さり埋め込まれている。
杭剣を抜かない限りその持続ダメージは続く。
仮想体とはいえ自分の身体に手を突っ込んで埋め込まれた杭剣を抜くことは心理的に難しいと思う。
「大体1秒あたり2~3ダメージくらいかな?」
masatoのHPゲージの減り具合を見ながら呟く僕。
「テメーふざけん…」
なにかmasatoが言っていたけど、僕は構わず近づいて槍を振り下ろした。
「なっ!」
振り下ろした槍がmasatoの頭に当たる。
「いって~…!」
うずくまり両手で頭を押さえるmasato。
衝撃と振動だけで痛みはないのに痛いって…(苦笑)
僕も経験あるけど反射的に痛いってつい口にしてしまうよね。
そんなことを思いながら僕はmasatoに向かって槍を振り上げ振り下ろす。
「なっ!がっ!ぐっ!や、やめっ!ろっ!」
何度も何度も何度も僕はmasatoに向かって槍を振り下ろし続けた。
怒りの衝動に身を任せて身体を丸めて縮こまるmasatoに僕は容赦なく槍を振り下ろした。
杭剣の持続ダメージも加わってmasatoのHPゲージがみるみるうちに減っていく。
やがてmasatoのHPゲージがゼロになり、masatoの身体が光のカケラとなって四散した。
『you win!』
『ファントムは対人戦に勝利しました!』
『戦歴1戦1勝0敗0分け』
『ファントムはEXPを300獲得しました!』
『ファントムのLVが13から15に上がりました!』
『SPを29獲得しました!』
『【タチバナ流槍術】の熟練度が20上がりました!』
その後のシステムメッセージには【ミスリルの鎧+5】とか【エクスポーション】などのドロップ品が記載された。
レベルは二つも一気に上がったけどスキルは大して上がらなかったな…
まあ、盾はCSしてるしタチバナ流は必要熟練度が多いし仕方ないか…
(それにしても、こんな簡単に倒せるとは思わなかった…)
塀の中で読書とか作業とか運動してステータス上げてたとはいえレベル三十のPC相手に圧勝できるとは思わなかった。
いい勝負するとは思ってたけど、まさかこんなに力の差があるなんて想像もしていなかったよ。
【心眼】の効果が大きかったか?
DEXとAGI五十%上昇だもんね。
DEXはともかくAGIは素でレベル三十近かったしそれが五十パー増しになったらレベル三十のステータス超えてるしね。
いやいや、それを差し引いてももっといい勝負できたと思うし…やっぱりmasatoが油断してたから楽に勝てたんだろうな。
そんなに強くなったって感覚ないし、きっとmasatoが見下して油断してたから僕がこんな簡単に勝てたんだ。うんきっとそうだろう。僕みたいなコミュ障のクズ相手に舐めプーしたからmasatoは負けたんだ。
(やれやれ…舐めプーしてるから瞬殺されるんだよ)
死亡マーカーと成り果てたmasatoを見下ろしながらうんうんと納得しているとスカーレットさんが僕の元に駆け寄ってきた。
「すごいじゃん!」
そう言って僕に抱きついてきたスカーレットさん!
「くぁwせdrttgyふじこlp」
僕はびっくりして変な声を出してしまった。
「ウソみたい!ただの戦士だよね?レベル10くらいしかないよね?どうしてなんであんなに強いの?マジすごいんですけど!」
抱きついてきたスカーレットさんはすぐに僕から離れるとペシペシと僕の肩を叩く。
「その槍のせい?ううん、違う。アイツのスピードに余裕でついてこれてたつうか、上回ってた。マジパネエじゃん!」
目をキラキラさせて尊敬の眼差し?を僕に向けるスカーレットさん。
…なんだろう。昔、小さい頃に妹が向けていた眼差しによく似てる…?
あの頃の妹は僕に懐いてて可愛かったな…(しみじみ)
今は僕に絶対零度の視線しか向けない…(泣)
「いや、大したことないから」
悲しくなってきた僕は、スカーレットさんの視線を避けるとゼルの死亡マーカーに向かった。
(ゼル。仇は討ったよ。安らかに眠れ…)
胸の内でそう呟く僕。
まあ、どっちみち教会で復活するだろうけどね(笑)
ていうか今気づいたけど、死亡マーカーの上に【45:29】って表示されてるけどコレなに?
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「…?復活しないわよ。NPCは時間内に蘇生魔法かアイテム使わないと消えちゃうんですけど」
「ウソッ!?」
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