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第4章 NPC
第百二十五話
しおりを挟む「ゼル!」
そちらに向かっている僕を目にしたセルは、小さく頷くとゴブリンロードの方へ向きを変えた。
すでに【ホーリーレイン】は止んでいる。
僕は走る勢いに任せてゴブリンジェネラルに斬りかかった。
斧槍で受け止めるゴブリンジェネラル。
「カイ、一気にいくぞ!」
「わかってるよ!」
カイと合流したゼルはゴブリンロードに二人がかりで向かっていくのが見えた。
よし。一応これで作戦通り。
残りのゴブリン達はアル達に任せて、僕はこいつに専念しよう。
ゴブリンジェネラルと鍔迫り合いをしながら僕はそう考えた。
ていうか、けっこう力強いな…!?
ジリジリと押し負けていく僕。
僕は右足を押し出すように前蹴りを放った。
固い衝撃が蹴った足に響いた。
固っ!?
蹴ってもビクともしない。
蹴ったせいでバランスを崩した僕は転がるようにゴブリンジェネラルから距離をとった。
「ギャッギャッギャッギャッギャーwww」
なんか笑われた!
みっともない避け方をしたせいかゴブリンジェネラルに笑われてしまった。
イラッとした僕は、起き上がると盾を前面に構えて身構えた。
落ち着け…冷静になるんだと自分に言い聞かせながらゴブリンジェネラルを見据える。
全身鎧姿のでかいゴブリン。
僕より頭ひとつふたつ大きい。
ていうかこのサイズはもうゴブリンじゃないでしょ?(苦笑)
手には二メートルくらいある斧槍。
リーチが長いな…なんとか懐に潜り込みたいところだ。
と分析していたその時、ゴブリンジェネラルが動いた。
斧槍を突き出してきた。
速っ!
大きく後ろに跳んで間合いから離れる僕。
つい大げさに躱してしまった…【心眼】はまだ発動中なのにゴブリンジェネラルの放った斧槍を目で捉えきれなかった。
力も強いうえに速いって反則じゃない?こいつだけレベルが違うんですけど…(汗)
胸の内で愚痴る僕。
まあいい。別に倒さなくてもいいんだ。
ゼルとカイがゴブリンロードを倒すまで食い止めればいいだけだし。
「オオオォォォ!」
その時、ゴブリンロードが吠えた。
特殊能力か!?
「【突・一閃】!」
「剣気解放!【雪月花】!」
吠えた隙をついてゼルとカイの攻撃スキルがゴブリンロードに直撃した。
ゴブリンロードのHPが大幅に減少したのが見えた。
いい感じだ。
2人ともその調子で戦っていけばゴブリンロードは倒せると思うけど………
対峙するゴブリンジェネラル。
そして、新手のゴブリン達。
ゴブリン、ゴブリンライダー、ゴブリンシャーマン、ホブゴブリンの集団がアル達を囲むように取り囲んだ。
「ここが正念場だね」
前衛に立ったアルが小太刀と盾を構えてゴブリン達を見据えている。
アルの左右にヴァイスが召喚した三体のデュラハンが騎乗したまま佇んでいた。
中衛にヴァイスとルーネ。
後衛にアーチェさんといった具合に陣形をとった。
なんとか持ちこたえて欲しいところだけど、ぶっちゃけ不利な状況だ。
「でも、やるしかないよ…ね!」
僕はゴブリンジェネラルに向かって跳んだ。
剣を上段に振り上げると、刃が赤く輝きはじめた。
【斬撃】
モーションからのスキル発動で、ゴブリンジェネラルに斬りかかった。
一閃!
光に包まれたゴブリンジェネラルは、僕の斬撃を斧槍で楽々と受け止めた。
マジか…
ゴブリンロードの特殊能力で強化されたゴブリンジェネラルマジTUEEE………:-(
「ギャガア!」
そのまま押し返された僕は身を低くして突っ込んだ。
狙いは足。
「っ!?」
とてつもない衝撃が僕の全身を駆け抜けた。
床を滑るように吹き飛ぶ僕。
視界に映るHPゲージが四割近くまで減っていく。
一体なにが?
ゴブリンジェネラルを見ると斧槍を振り払った姿勢でいるのが見えた。
柄で殴られたのか?反応速すぎでしょ………
なんとか起き上がる僕。
ヤバい…勝てる気がしない。
勝てるどころか食い止めることすらできなそうなんですけど…
ゴブリンジェネラルがこちらに向かってきた!
僕は迎撃の体勢をとる。
斧槍を突き出してきた。
反射的に盾を出してなんとか受け止めた。
盾から伝わる衝撃。
手が痺れそうな感覚。
左手に持つ盾を取り落とさないように握りしめた僕は、右手の剣を振るった。
斜めに振り下ろした剣がゴブリンジェネラルの腕にヒット。
カーン!と音を立てて剣が折れた。
「はぁ!?」
ウソでしょと思った瞬間、ゴブリンジェネラルの斧槍が僕を襲った。
再び吹き飛ばされる僕。
ああ、HPがヤバい。赤く点滅して瀕死の状態だ。
【外気功】スキルで少しずつ回復していってるけど、瀕死からはまだ抜け出せない。
ヤバいピンチだ。
ゴブリンジェネラルが斧槍を構えて、のしのしとこちらへ歩いてくる。
早く、立ち上がらないと………!
瀕死の状態のせいか身体にうまく力が入らない。
足がガクガクしてる。
まるで生まれたての子鹿のようだ。
誰か回復を!と叫びたいけど、うまく声が出ない。
本当にヤバい。
ゴブリンジェネラルがすぐそこまできている。
動け動け動け!
ゴブリンジェネラルが斧槍を振り上げた。
「く、そ………」
斧槍が振り下ろされるのを見た僕は、思わず目をつぶってしまった。
頭に強い衝撃を受けた瞬間、目の前が黒く染まった………
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