待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第5章 抗争

第百五十六話

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「な、な、なななななにを言っている!?命乞いか!?」

 めちゃくちゃ激しく動揺しているコロパチーノは、なにやら見当違いなことを口走っている。

「いえ違います。ルビーさんとの結婚を許してほしいだけです」

 土下座の体勢のまま顔を上げて堂々と口にするゼル。
 ま、まあある意味命乞いだよね…(半笑)

「お願いパパ!」

 ルビーさんもゼルの隣に並び、土下座をした。

「る、ルルルルルビィ!?顔を上げなさい!お前の綺麗な顔が土に塗れてしまう」
「嫌です!許してくれるまで顔を上げません!」

 地面に額を擦り付けたまま言うルビーさん。
 膝をつきどうしたらいいかわからずオロオロパニクるコロパチーノ。

「ぷっ…!」

 振り向けばフィールさんが口を押さえて笑いを押し殺していた。
 たしかにマフィアのボスのようにいかついおっさんが泣きそうな顔でパニクる姿が超ウケるけどさ、そんなにツボったのか?と思うくらいウケている感じだ。
 ていうかコロパチーノも普通にルビーさん抱え上げればいいじゃん。
 よくよく見ていると、触れたら壊れるみたいな感じでルビーさんに触れられずにオロオロするコロパチーノの姿は笑いを誘ってるとしか思えない。

「お義父さん!ルビーさんを絶対に幸せにしてみせます!ですから、どうか結婚を認めてください!お願いします!」
「お願いしますパパ!結婚式で私達に祝福の言葉を送って!」

 土下座したままの状態で必死に嘆願するゼルとルビーさん。

「だ、ダメだ!ルビーにまだ結婚は早い!そんなことより貴様ぁ!」

 コロパチーノがゼルを引きずり起こして胸ぐらを掴んだ。

「ルビーを捕らえただけじゃ飽き足らず、洗脳紛いの陵辱を施したなあ!わかってるのか!この世界はR15推奨で、決してR18じゃねえんだよ!」

 な、なんかメタなこと口走ってるよ…あの人NPCだよね?

「安心してくださいお義父さん。ルビーとはまだ肉体関係はありません!」
「そうよパパ!私達は清く正しい交際を得て結婚に踏み切ったのよ!」
「む…そ、そうなのか?」
「そうよ!そんなふしだらをことを考えつくパパのほうが不純で不潔よ!」
「ふ、不潔…!」

  娘に不潔と言われてショックを受ける父親…:-(
 あまりのショックに掴んでいたゼルを手放していた。
 ゼルは再び土下座の体勢をとる。

「許してくれるまで何度でも言います。お義父さん、娘さんを俺にください!」
「つうか貴様にお義父さんと言われる筋合いはないわああああああ!!」
「なに言ってるのパパ。ゼル様は義理の息子になるのよ。義父ちちと呼んでも別にいいじゃない」
「よくなああああああい!!」

 ていうかルビーさん、コロパチーノと話すときは砕けた口調で話してるね。
 それだけ仲が良い親子なんだろうけど、コロパチーノとしては複雑だろうなあ。

 敵の男に敗れた娘。
 娘は捕らわれ酷い目に遭わされ無理矢理従わされてるかと思い、復讐に怒り狂っていたらそんな事実はなく、その男と恋仲になっていたという事実。
 そして娘とともに土下座して結婚を許してほしいと懇願する。
 きっとコロパチーノの胸中は僕のような子供には理解できないほど複雑なんだろう。
 ていうか普通の父親でも気に入らない男が娘さんをくださいってきたら父親としては受け入れられないよね:-/
 僕の父さんも昔、妹が彼氏できただけで発狂してストーカー紛いのことしてたし。
 まあすぐに別れたから元に戻ったけど。

「だ、第一こんな男のどこが良いんだ!?元盗賊崩れの冒険者だぞ?その日暮らしの安定しない生活なうえに、依頼でいつ命を落とすかわからん輩に大事な娘を任せるわけにはいかん!」
「その点は安心してくださいお義父さん。一生遊んで暮らせるほどの蓄えはありますし、たとえ依頼で死んでも仲間に蘇生魔法が使えるヤツがいるから、ルビーを置いて冥界に旅立つことはありません」
「ふざけるな!その蓄えた金はどこから奪ったああああ!儂の組織からだろうがあああ!」
「パパ、それは敵対していた時の話でしょ?今はもう味方だから良いじゃない」
「いやいや、ルビー?普通に考えて良くないだろう?もし味方になったのなら奪った金を返せ」
「返したらルビーとの結婚を許してくれますか?」
「誰が許すか!ふざけるな小僧!」
「じゃあ返しません」
「なんだとおおおお!貴様ぁ、そこへなおれ!叩き斬ってやる!」
「パパ!ゼル様を殺したら、私も後を追って死ぬわよ!」
「お義父さん、諦めてルビーとの結婚を許してくれませんかね?」
「おい小僧…!貴様段々調子に乗ってないか?」
「まあまあお義父さん、まずは落ち着いて冷静になって話し合いましょう」
「そうよパパ。ただでさえ高血圧なんだから、そんなに怒鳴ってたら血管切れちゃうよ」
「俺は嫌ですよ。結婚式より先にお義父さんの葬式なんて」
「縁起でもないこと言うなああああああ!!」

 ねえコレ、いつまで続くの?
 緊張の糸が切れた僕は、とりあえずする事がないのでマジックバックから杭剣を取り出し、衝撃槍に装填していく。
 ぶっちゃけグダグダな展開になったけど、なにが起こるかわからないからね。準備だけはしっかりしておこう。
 あ、マリアさんにつねられたときに減ったHPも一応手持ちの薬草で回復しておこうっと。
 一応【ヒール】は使えるけどMPを少しでも節約しておきたいし、ちょっと小腹が減ったから薬草でも食べて誤魔化すことにした(笑)
 
 どうでもいいプチ情報だけど、薬草といえば苦い、青臭い味で、なんか雑草食べてるようなイメージがある(僕の独断と偏見)
 でもこのゲーム、アトランティスの薬草は何故かレタスのような味と食感がする。
 食材を取り扱っている店にはちゃんとしたレタスが置いてあるのにも関わらず何故かレタス味だ。

 ちなみにアトランティスは現実リアルと同じように調理すると普通の料理ができる。
 他にもバフ効果の付く料理があって、それは【料理人】の職業に就いて【調理スキル】のレベルを上げないと作れない仕様だ。
【料理人】になるには料理学校に通わなければなれない。
 攻略サイトや掲示板によると、いくらかのお金と数日の期間が必要になるから、ガチで店を開きたい生産系のPCプレイヤーくらいしか【料理人】になっていなかった。
 しかし【流離のコック】なるNPCが色んな街に潜んでいて、そのコックから【秘伝のレシピ】を入手すると、とんでもない効果が付与される料理が作れるようになるという噂が流れてからは、迷宮攻略などをしているガチ勢ギルドから結構な人数のPCが【料理人】になるために料理学校に通っているらしい。
 僕も【秘伝のレシピ】には興味があるので、今度暇ができたら行ってみようと思っている。

「…ファントム」

 そんなことを考えながらゼル達の戦い?を見守っていたら、フィールさんが声をかけてきた。
 笑いをこらえていたせいかフィールさんの目元が赤い。
 そんなに面白かったんですか?ぶっちゃけ僕はもう飽きましたwww

 あれ?またフィールさんの肩に小鳥がとまってる。

「…もうじきヴァイスたちが戻ってくる」

 周りに聞こえないように僕に身を寄せて囁くように言うフィールさん。
 あ、あの、ちょっと近くないですかね…!?
 うぅ…フィールさんの温もりを感じる///
 
「あ、あの、なんでヴァイス達が来るってわかるんですか?」

 そっと距離を置いて訊ねる僕。

「…スネークが教えてくれた」
「スネーク?」
「この子のこと」

 肩にとまっている小鳥を指差すフィールさん。
 ていうか鳥なのに名前がスネークって………

「…この子は私の使い魔。主に空からの斥候が得意。発見されそうになると魔法の段ボールを召喚して隠れることができる。とても優秀な子」
「スネークってそっちかよ!」

 スネークの思わぬ特技に、僕はついツッコミを入れてしまった。
 それにしても使い魔か…便利そうだな。

「ちなみに使い魔はどうやって入手するんですか?」
「………使い魔専門の店か、適正のある魔物のテイム。でも【魔物使い】の使役系のスキルを習得しないと無理」

 なるほど。まずは【魔物使い】になって使役スキルを習得しないと使い魔は使えないのか。

「…話は終わり。私の【索敵】にも引っかかった」

 フィールさんが林のある方向に振り向いた。
 僕もつられて同じ方向を向くけど、黒スーツ達が邪魔で林そのものが見えない。
 だけど、林のある方角が騒がしくなってきた。

「ボ、ボスゥ!大変です!」

 黒スーツの一人が仲間をかき分けるようにコロパチーノの元へ転がるように駆け寄ってきた。

「なんだ馬鹿野郎!今取り込み中だ!」
「たたたた大変なんですよ!」
「こっちも大変なんだよ馬鹿野郎!さっさと要件を言え!」
「は、林から魔物の群れが…」
「んなもんさっさとぶっ殺せ!」
「た、対処はしてるんですが、次から次へと魔物が出てきやがって、手に負えねえんですわ」
「なんだとぉ!」

 コロパチーノは林の方角に目を向ける。
 遠くから人の怒号や獣の鳴き声が聞こえてくる。
 恐らくヴァイス達がトレインしてきた魔物と黒スーツ達が交戦しているんだろう。

 数で圧倒的に劣る僕達は敢えて人手を割いた。
 その理由はこれだ。
【魔物使い】であるヴァイスのスキル【誘引の灯火】を使い、辺りの魔物を引き連れて来る。
【誘引の灯火】とは魔物を引き寄せる効果のあるスキルで、そのスキルを使った状態のヴァイスに林の中をまわってもらった。
 ヴァイスだけでは心許ないので護衛としてアーチェさん。もしもの時の回復役としてルーネを同行させた。
 もし魔物のタゲが外れたらアーチェさんの弓でタゲを取り直してほしいと頼んだし、ルーネにも安全第一で多めに回復系アイテムを持たせた。

 できるだけ多くの魔物をトレインしてきてと頼んだから、結構な数の魔物が来たと思う。

「ボス大変です!アーマーベアの群れが出てきました!」
「単体でも厄介な魔物が群れでだとぉ!?チッ、お前らじゃ手に負えんな…。カーン!お前の組で対処にあたれ!」
「承知した」

 コロパチーノの指示を受け、カーンが人波の中に消えていった。
 よしっ!と心の中でガッツポーズする僕。

「ボスゥ!今度はキルホーネットの群れが来ました!」
「即死の針を持つ魔物が群れ単位でか!?よし、マルティーノ!お前の組で駆除してこい!」
「親父、いいのか?」

 マルティーノはチラリと土下座しているゼルとルビーさんを見て、そして僕達のほうに視線を向ける。
 なんかしたら殺すぞコラみたいな表情でこちらを睨みつけている。
 僕は視線を下に逸らし目が合わないようにした。

「なんだアイツ?っちまうか?」
「カイに賛成。ちょうどあいつにムカついてたしやろうか」
「カイさんアルさん、助太刀します。総員抜剣!」
「「「はっ!!!」」」
「え~?めんどいっす」
「ていうかみんな、目を合わせちゃダメ!あんなの無視して行かせてあげよう。ねっ?」
「チッ…ファントムがそう言うならしゃあねえな」
「命拾いしたね。生きて帰ってきたらの俺が相手してあげるよ」
「ここはファントムさんに免じて剣をひきましょう。鉄壁のマルティーノ。ファントムさんの慈悲の心に感謝なさい」

 みんな一応僕の言うことを聞いてくれたけど、どうしてこうみんな好戦的なんだろう?
 珍しくアルもキレてたし………

「なにしてる?いいから早く行け。部下を死なすなよ。死なせても生き返らせろ」
「………。わかった。じゃあ行ってくる」

 マルティーノは僕達を気にしながらも魔物の対処に向かっていった。

「ボス!キングトレントを先頭にトレントの群れが現れた!」
「ボス!あっちから人喰いトカゲがやってきました!数はおよそ100!」
「シュレンはトレント!カザールはトカゲを潰してこい!」
「はいよ!」
「了解」

 シュレンとカザールは直属の部下を率いてこの場を去っていった。

「さて、話の続きをしましょうか?お義父さん」
「だああああああ!!もう貴様と話すことなんぞないわ!いい加減諦めろ!」
「いいや!俺は諦めない!ルビーと結婚して幸せな家庭を築くんだ!」
「ゼル様…。私も同じ想いですわ!」
「ルビー…」
「おいコラアアアアアア!儂の目の前でイチャイチャするなああああああ!」

 絶叫するコロパチーノを目にした僕はこのままじゃ平行線だねと苦笑した。
 ていうか二人とも土下座したまま手を重ねてイチャついてるよ………爆発しろや:-<
 
「あ…ていうかこの隙にゼル達連れて逃げたほうがよくない?」
「「「「「「ええええええええええええ!?」」」」」」
「あ、それは名案っす」
「…却下。まだ早い」

 僕の提案を聞いてみんな不満の声を上げた。
 いや、レイアさんだけは僕の提案に賛成だったけど。

「なに日和ったこと言ってんだよ。いまこの場にはコロパチーノしか敵はいないんだぜ!るなら今だろ!」
「カイの言う通りだよファントム」
「ファントムさん、こんなチャンスは滅多にありません!ここは首魁であるコロパチーノの首を取るべきです!」
「そうですぞ!」
「我らの力を束ねれば、コロパチーノなど恐れるに足りぬわ!」
「好機です!」
「え~、めんどいから帰りましょうよ~」

 うーん………。
 たしかに、今ならコロパチーノを倒せるかも。
 多くの黒スーツ達がまだ周りにいるけど、何人か黒スーツ達にまわして足止めさせておけばなんとかいけるかな?
 例えば白い三連星が黒スーツ達の足止め。
 タンクは僕。アタッカーにカイ、マリアさん、フィールさん。ヒーラーにアルとレイアさん。
 ルビーさんは置いといてゼルもアタッカーに加わればコロパチーノ一人くらいならなんとか倒せるか。

「…やめておいたほうがいい」

 その気になりかけていた僕に水を差したのはフィールさんの一言だった。

「コロちゃんは元Aランクのヒヒイロカネ冒険者。Eランクのダマスカスや、教会騎士の小隊長が何人いたところで、勝てはしない」
「フィールさんがいてもですか?」
「…私を戦力に数えても勝てない」

 マジですか…:-()
 ぶっちゃけフィールさんは僕が今まで出会った人達(PC、NPC)の中で一番強いと思っている。
 それよりも強いコロパチーノってガチでバケモノじゃん!

「…戦略的撤退を勧めるけど、それはまだ早い」
「早いって言われても………。じゃあいつになったら逃げていいんですか?」
「…さっきスネークを偵察に出した。もう少し待って」

 偵察って言われてもなにを偵察しにいったんだろう?と疑問に思った。
 もう魔物は来てる。
 予想以上の多さにちょっと引くくらいだ。
 あれ…?なにか忘れているような………

 その時、黒スーツ達を轢きながら一頭の馬が現れた。
 馬に騎乗していたのはヴァイス達。
 ヴァイスは後ろにアーチェさん。そしてアーチェさんにしがみつくようにルーネが乗っているという三ケツで登場した。
 ああそうだ。ヴァイス達のこと忘れてたよw
 ヴァイス達は馬に乗ったままこちらに並足でやってくる。
 近くまで来るとルーネとアーチェさんが飛び降り、なんと僕に抱きついてきた!!?
 
 な、なななななんじゃこりゃああああああ!!??
 もしや僕にもきたのか!モテ期とやらが!

「ふえぇぇぇん!ファントムさぁぁぁん」
「怖かった怖かった怖かった…」

 僕の胸に顔を埋めて泣きじゃくるルーネと僕の腕にしがみついたまま震えているアーチェさん。
 その様子を見て一瞬で僕は冷静になった。
 うん、これはモテ期じゃないと(血涙)

「え、えーと?ふ、二人ともどうしたんですか?」
「ひっく…ぐすっ…ファントムさぁん、ヴァイスさんがぁ…ひっく、ふえええぇぇぇん!」
「聞いてよ!あいつ無茶苦茶よ!頭おかしい狂ってるわ!」

 ガン泣きするルーネの鳴き声をBGMに、アーチェさんが語り出した。





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