スウィ〜トな神様ご降臨! 〜おいしい甘味はいかが?〜

未来乃 みぃ

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第25ピース

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 ここからは、狼の上で跳ねる、スライムとの出会い。

 ◇ ◇ ◇

「大丈夫?」
『う、うむ。まさか我が驚きで意識を失う事になるとは思いもしなかったぞ? フェリアはこの世の理から外れすぎてはいないか? 普通に人の世で暮らしている神族と出会う事になろうとは、長生きもしてみるものだな! そういえば、我は何年生きているのだろうな。そう、我が生まれたのは……』

 どこか遠くを懐かしそうに見つめ始めるルーク。
 なんか、ものすごく面倒くさい自分語りが始まりそうな予感がするわ、これ。

「ルーク! あのさ、契約したら、何ができるようになるの?」
『む、フェリアはそんな事も知らないのか?』
「ウン! ソウダヨ!」
『そうかそうか、フェリアはまだ幼いようだしな! 知らなくて当然だ! 我が特別に教えよう!』

 よし、上手く自分語りは回避できた! こちとら契約の事なんてリリアがこれまで読み聞かせてくれた難しい本と、サティアさんに渡される分厚い本でとっくにマスターしてるんだから! ふぅ、嘘をつくのは心苦しいものだね!

『いいか、フェリア。お主は普通の契約の事は知っているようだし、神通契約、これは我が勝手に呼んでいるのだが、神に通ずる者同士の契約のことだ。それについて話そう』
「へ~、そうなんだ~、すごいね~……って、神通契約って何!? 普通の契約と何が違うの!? そもそも、私が契約について知っていることがなんでバレて!」

 フンッ、と鼻をならすルーク。

『そこが神通契約の特徴の1つだ。神に近い者達は、心をよむことができるが、神に近い者同士でそれは不可能だ。ただし、神通契約を交わすとそれは可能になる。だから我はフェリアの心をよむことができるというわけだ! でも、どうやらフェリアは特殊な神族らしいな』
「ちょ、ちょっと! 情報過多で頭が爆発しそうなんだけど? お願いだから、1個ずつ! 1個ずつ説明して!」
『うむ。なら、フェリアの特殊性からだな。まず、フェリアは──』
「キューーー!!!」
「『!?』」

 突然聞こえた甲高い鳴き声のようなもの。

『フェリア、後ろだ!』

 ルークの声で咄嗟に振り返ると、透明な何かが視界の端を横切った。

「速っ!? どこに……わっ!?」

 頭に重さと冷たさを感じる。多分、さっき私の視界を横切った何かだろう。敵意がないことは既にわかっていたため、恐る恐る頭に手を伸ばす。

「あ、何これ! 冷たい! やわらかい!」
『フェリア、得体の知れないものを安易に触るでない! もう少し警戒をだな!』
「いやいや、十分警戒はしてるし、敵意がないことは確認済みだよ」

 そう言うと、ルークは呆れた顔をする。

『敵意も何もなしで、ただただ遊びとして人を殺す輩もいるのだぞ?』
「え、なにそれ、怖」
『……まあ良い、フェリアの身は我が守ってやろう』
「わお、恥ずかしい事を」
『~っ! そ、それよりだな! その頭の上の奴は、スライムのようだじょ!?』

 今、噛んだな? まあいいや、無視しよう! これ以上はオーバーキルになりそうだし! というか、人以外の動物の感情がここまでわかりやすいとは……。

「え~と、スライム、なのね?」

 頭の中では全く別の事を考えながら、そっと頭の上の生き物を持ち上げる。

「わ! ほんとにスライムだ! しかもなんか、綺麗!」
「キュ~!」

 私の腕の中で、ぽよぽよと体を揺らすスライム。透き通っていて、光があたった部分は、淡い虹色に輝いている。例えるなら、シャボン玉!
 あと、幻覚かもしれない。幻覚かもしれないけど、このスライムに、短い手足と喜んでいる顔が見える。それは怖い。

「でもやっぱり綺麗~! 可愛い~!」
『我の時と反応が違いすぎやしないか?』
「あー、ルークの毛並みも綺麗だよー」
『無理して言われるぐらいなら、否定されたほうが良いのだが……』
「キュー!」

 また突然声を出したかと思えば、空から光の粒が舞い落ちてくる。

「こ、これ、見覚えあるんだけど? というか数分前に見たんだけど?」
『契約時の、神々からの祝福……だな……』

 ルークと顔を見合わせ、腕の中のスライムを見る。

「私、この子と契約したっけ?」
『していないな。そもそも、契約には両者の名前が必要だな』
「だよね? 契約してないよね???」
『したことになっているな』
『そうだよ~! ふぇりあ、けいやく~!』

 私もルークも頭に疑問符を浮かべ、困惑していると、頭に直接声が聞こえてきた。
 本当に情報過多で死ぬ。やめてほしい。

「え~っと、もしかしてだけど、スライムくん?」

 とにかく目の前の情報を整理しようと思い、頭がパンクしそうになりながら尋ねる。

『そ~! でも、ぼく、すらいむくん、ちがう~!』
「名前はスライムくんではないということね?」

 とは言っても、名前知らないしな~。どうしようか? いや、待てよ? 駄目だ、わかった。

「フアン、であってる?」
『せいかい~! ふらんおねぇちゃん、つけた~!』
「フラン!? って、フアンは何者!?」
『ぼく、すらいむ~!』

 う~ん、フランに直接聞いたほうが良さそうかな? また今度、教会で聞こう!

「よしっ! 一旦、フアンに関する件は放置! ルーク! 話の続きを!」

 と、ルークに話を振ろうとすると、ルークは頭がパンクしたのか、目は虚ろになって、生命活動をしているのかさえ怪しい状態だった。

「ルーック!」

 今日で3度目となる完全治癒パーフェクトヒールを使おうとした瞬間、周りが輝き出す。

「え、ちょっ! もー今日何なの!? 光も情報も気絶も多い!」
『ふらんおねぇちゃん!』
「……神様って、異世界転生後にも、こんなに関わる事になる存在だっけ?」

 私もルークみたいに気絶できたら楽かもしれない、と一瞬危険な考えが浮かんだがすぐに消し去った。そして、いつの間にか目の前に広がっていたのは、真っ白な空間、神スペースだった。
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