結婚3周年の夫婦の会話劇

いずも

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想像力を働かせてご覧ください

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I love you.(やっと帰ったよ、ただいまハニー、愛してるよ)

I love you.(おかえりなさいあなた。愛してるわ。今日も遅かったのね)


I love you.(ちょっと最近仕事が立て込んでいるんだ……でもキミへの愛情が薄れたりした日は一日もないよ。神に誓うさ)

I love you.(ええ、あなたのことは信じているわ。でも、仕事が忙しいあまりに明日の約束も忘れちゃったりしてないかしら? 私心配で)


I love you.(えっ明日の約束ってなんd――あ、ああ、ああ! ああ、覚えているとも。ああそうさ、本当さ。明日だったっけ、しまったぁ……)

I love you.(その反応、本当にちゃんと覚えているの? 何の約束したか、言ってくださる?)


I love you.(えっ、とぉ……。…………ジョージの家にお呼ばれしたんだっけ?)

I love you.(ちょっと、それは再来週の日曜でしょ! まぁ、信じられない、本当に覚えていないなんて! あなたってば、いつだってそう。話半分でいい加減な返事ばかりするんだから!)


I love you.(いや本当にすまない。今は社運をかけたビッグプロジェクトを立ち上げているから、四六時中仕事のことしか考えていなかったんだ。……で、明日は何の約束をしたんだっけ?)

I love you.(もう、明日は食事に行く約束でしょう! 一ヶ月前から予約しないと行けない最近話題のお店に行こうって言ったじゃない!)


I love you.(ああ……ハニー、悪い知らせと、とても悪い知らせがある)

I love you.(なんですって!? 一体何だっていうの!)


I love you.(まず悪い知らせだ。約束してたことを言われるまで忘れてしまっていたよ。これは本当にすまないと思っている。そしてとても悪い知らせだが……ああ、これを口にするのは世界の終わりを告げる呪いの言葉を唱えるようなものだ)

I love you.(勿体つけてないで早く言って!)


I love you.(すまない、明日の約束は果たせそうにないんだ)

I love you.(なんですって!? どういうことなの!?)


I love you.(明日はプロジェクトのチームで絆を深めるための会合を予定しているんだ。部長どころか取締役も何人か参加するから、チームリーダーの僕が欠席するとは言える雰囲気じゃない)

I love you.(はあ!? 一ヶ月も前から予約を入れたのよ! もうこんなチャンス二度とこないかもしれないのよ! あなたはいつだって仕事仕事仕事! 何よ、そんなに仕事が大切なら仕事と結婚したら良かったじゃない!!)


I love you.(悪い、本当に悪かったと思っている。必ず別の日に埋め合わせはするから)

I love you.(明日じゃなきゃ意味がないじゃない! もしかして、明日が何の日か、本当に忘れてしまったの? うそ……)


I love you.(え、ちょっと待ってくれハニー、そんな軽蔑するような目はやめてくれ。ええっと、うん、うん……ん? 約束……明日って26日……あっ!)

I love you.(何よ、どうせ思い出した振りなんでしょ! もういい、もういいわ!)


I love you.(明日は僕たちが出会った日でもあり、結婚記念日だ!)

I love you.(……やっと思い出したのね。出会った日を結婚記念日にしたら忘れないだろうって言い出したのはどこの誰でしたっけ? ま、仕事が恋人の誰かさんには関係ないことでしょうけど)


I love you.(ああそうだ、なんてことだ。こんな大切な日を忘れていたなんてどうかしている! 明日は僕たちの結婚3周年の記念すべき日じゃないか! 会合? 馬鹿言うな、そんなものより愛すべきハニーとの約束が最優先に決まっているじゃないか!)

I love you.(何よそれ、そんな美辞麗句を並べたって、信じられないわ)


I love you.(本当だとも、なんだったら今すぐ断りの電話を入れてやってもいいさ。「てめえの国のトップが働き方改革だのワークライフバランスだの取り入れろっつってんだから文句は言わせねぇよ」ってね)

I love you.(本当に? 本当に明日の約束を優先してくれるの?)


I love you.(当たり前じゃないか、愛してるよハニー)

I love you.(まあ、嬉しい! 夢見たい。ああ、どうしようかしら。今とても幸せなの。幸せついでに伝えてしまおうかしら)


I love you.(どうしたんだいハニー、そんなに明日の食事が楽しみなのかい? 顔がほころんでいるよ)

I love you.(あのね、本当は明日食事しながら言おうと思ったんだけど……出来たみたい、なの)


I love you.(出来た? 一体何の話だい?)

I love you.(もう! 本当に鈍いわね! ……赤ちゃんに決まっているじゃない)


I love you.(え、ええ!? 本当かい? キミと、ボクの、子供が?)

I love you.(ええ、そうよ。正真正銘私とあなたの子よ)


I love you.(なんて日だ! 神よ、感謝いたします!)

I love you.(うふふ、夢みたい。本当にこんな日が来るなんて)


I love you.(本当に。愛してるよ、ハニー!)

I love you.(もちろん私も愛してるわ、あなた!)


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「……といった感じで、今回のオーディションは"I love you"のセリフで喜怒哀楽を表現していただきたいと思います。男性の方は夫、女性の方は妻役ですね」
「いやいや無理でしょこれ」
「もしくは『外国人に何を聞かれても「せやな」で乗り切る関西人』バージョンもありますが、どちらがよろしいですか?」
「……このままで良いです」
「ではよろしくお願いします。来週の14時、会場は今日と同じ、ここで」
「はい」
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