ミイラランドエゾ

いずも

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インカアウェイキング EZO

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「わ、我らの王の眠りを妨げるのは、だ、誰だ……」
「我らの眠りを妨げるのは……誰だ……」
「ちっがーーーーーうしょや!!!」
 バシンッ!
 プロデューサーがバサシの頭をメガホンで叩きつける。
「痛ったーーー!? あおたん出来たらどうするさ!」
「お前らはすでに死んどるんだからどーーーっでも良いしょや!!」
「……それがアイドルに対する仕打ちかいね」
 ポンシュが吐き捨てるように呟く。

 そんなこと気にも留めずにプロデューサーは続ける。
「いいかーー? お前らはーーー、死んだんですぅぅーーー!! それをこの俺がアイドルとしてぇ、再び蘇らせてこの世で羽ばたかせようとしとるんしょや!!」
 ツバを吹きかけるくらいの勢いで、プロデューサーは一人ひとりの顔を見ながら怒鳴り散らす。
「あんたが掴みのネタが有った方が良いっていうから必死で考えたのに、なしてさ?」
 ミネラルが食い下がる。
 彼は納得いかないことに対してはプロデューサーであろうと意見する。
 その後ろでミネラルと同意見と言わんばかりに、インディゴが無言で頷く。
「なしてもなんも、お前らがやってるそれはライバルの真似事になっとるっしょや!! それは太平洋だか大西洋だかを隔てた向こうの国でやっとる、ピラミッドの地下アイドルと被っとるっしょや!」
 そう言いながらプロデューサーは腕を振り上げその場で踊りだす。
 あ、スリラーだこれ。
 そう思ったが誰も突っ込めなかった。

 インカ帝国系アイドル『マチュピチュチュ』。
 現世に蘇った七人の男たちは、自分たちがミイラであることを隠しながらアイドル活動を行っているのだ。

 記憶喪失だが一番アイドル活動を頑張っているバサシ。
 名前の由来は馬刺しを食べているときに蘇ったから。

 次に元ヤンの香りがプンプン漂うポンシュ。
 名前の由来はバサシと同じく、日本酒を飲んでいるときに蘇ったから。

 そしてプロデューサーに忌憚なく意見したのがミネラル。
 由来は同じくミネラルウォーターを飲んでいるときに以下略。

 そしてちょっと引っ込み思案のおどおど系アイドルのインディゴ。
 由来は色の濃い作務衣を着ていたから。食べ物どこいった。

「それなら『お前らを眠りから覚ますのは、我々だー!』ってのは、どう?」
 無邪気な声でぼっさんが提案する。
 見た目は子供だが、一番ミイラ歴は長い。
 最初はりぼんちゃんと呼ばれていたが、みんなが敬意を込めてぼっさんと呼ぶようになってしまった。本人は少し複雑な気分である。

「へえ、それはおもろかろう」
 ぼっさんの後ろから長身の男性が音もなく近づく。
 彼はタムタム。可愛らしい名前に似合わず、見た目は年長者で格好もいかつい。
 名前の由来は中国映画を見ているときに蘇ったから。タムタムというのは銅鑼のような打楽器である。

「いいね、それ!」
「ちょべっとベタ過ぎる気もするが、まあ良いんでないかいね。釘バット担いで決闘に向かうイメージかい?」
「い、いやいやポンシュ、血生臭すぎるよ……」
「そうそう、ミイラなんだから干からびてるもんね!」
「出た、ぼっさんのオヤジギャグ……」
「ワシは関羽の登場シーンのように銅鑼を鳴らしながら現れる演出でも構わんじゃけん」
「どこのアイドルが銅鑼鳴らしながら登場するのさ!」

「そうだ、善晴はどうかな!?」
 バサシがくるりと振り返り、善晴と呼んだ男を見る。
「……ボガネェェ!!!」
 善晴は奇声を上げながら暴れだす。
 他の六人と違って、不完全なミイラとして蘇ったのが善晴である。
 由来は某料理番組を見ているときに以下略。


 彼ら七人のアイドルはこの暴力プロデューサーの元、世界へ羽ばたこうとしている。

「いいかえ!? キミたちはあぁぁ! そんじょそこらのアイドルとはひと味もふた味も違う輝きを持っている! ぼかぁねぇ、そう思ってるんですよぉぉおお!!!」
「……誰のものまね?」
「さあ? ワケワカメ」
「死語を、いや私語をつつしめぇぇ!!」
「ひいぃ、ごめんなさいぃ!」
「バサシィィ!!」
「は、はいっ!?」
「お前アイドルになりたいんしょや!? インカを世界に広めたいんしょや!? やったらミイラとかそんなこと関係ないんと違うんかい!」
「誰もミイラがどうとかそんなことは……」
「シャーーーーーラップ!!」
「ええぇ……」
 このプロデューサーは割と人の話を聞かない。


「えー、そんな皆様のためにぃ、仕事を取ってきましたぁ!!」
 プロデューサーが拳を突き上げながら叫ぶ。
「えぇ!?」
「すげぇ、意外とやるっさ……」
「いいかお前ら! ここからが本当の勝負だ! マチュピチュチュとしての初仕事、ここでお前らの今後が決まるっしょや! 時には嫌な仕事もあるさ、苦労に見合わないと思うかもしれないさ。でも、どんな小さな仕事でも、嫌な顔ひとつせずにこなすのがアイドルっちゅうもんっしょ!! 気張っていってこんかい!」
「行くこと前提なんだ」
「仕事内容くらい教えてくれてもいいさ」
「知らん。現場で聞け」
 このプロデューサーは割といい加減だ。

「そだね、プロデューサーの言うことも一理あるかも」
「バサシ? お前素直すぎるべ?」
「これはチャンスだよ! 僕たちのアイドルとしての第一歩なんだ。一度死んでしまった人生なんだから、もう何も恐れるものなんてないさ。これは神様がくれたチャンスさ!」
「死ぬ気でやるしかないさ……もう死んでるけどさ」
「ま、それもありじゃ。面白くなってきたわい。腕が鳴るのぅ」
 タムタムが右手で左手で作った拳を握りしめるように気合を入れる。衝撃波が周囲を襲う。
「さ、さぁ、お前ら! マチュピチュチュとして第二の人生始まりっしょや!! 新たに目覚めたお前らの最高の勇姿、世界に見せてこいやぁぁああ!!!」
 高田延彦の声真似をしながら送り出したプロデューサーだったが、あまり似ていなかった。

 ~♪
「北の大地が育んだ!」
「ホクホク食感」
「噛めば噛むほど甘みが増してく」
「濃厚な味わいです♪」
「小っちゃいけれど、しっかり者の」
「ボガァ……」
「ええと、栄養満点、みんなで食べよう!」
『インカのめざめ、最高!!!』

 ――ホクレン農業協同組合連合会の提供でお送りしました。


「いやインカ関係ないじゃん!! 北海道のご当地アイドルじゃんこれ!!!」
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