ここからはじまる ”こ”のつく アレのはなし

くさの

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私と彼の話

図書室にいるその人

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 初めて出会ったのは私が高校1年の時だ。
 入学したばかりではなく、ようやく高校の生活(主に勉強面)に慣れはじめて、いろんなものが習慣に変わりはじめた頃だった。

 放課後、図書室に行くとその人は大抵いた。そうして時間一杯そこにいるのだ。
 時間一杯、というのも彼は図書室の鍵を任されているらしい。戸締りを任されるほどとは、噂話に聞くほど悪くない人なのだろうかと、考える。
 ただ、いつから、いやもしかしたら授業を抜けてまでここにいるのかと言うほど、ほぼ毎日同じ席に居た。だからおそらくは指定席扱いなのだろうと勝手に予想する。噂話のなかに、七不思議のようなものもあって、その内のひとつに彼を示している内容もあった。
 周りなんて気にしない様子で、部屋の奥にある6人掛けテーブルを丸々ひとつ陣取って――いるようにみえて――いた。
 他の生徒も噂にはするが近寄ろうとしている人は誰もいなかった。
 何せその人、噂話に聞く人を遠巻きにしてしまう理由が半端なく、その上真偽不明で、みんながみんな、さわらぬ神に祟りなしといった風なのだ。
 おまけに座り方が変だ。背もたれに背をもたせ掛けず、何故か片腕をかけて斜めに座っている。足は組んでいて、ぱっと見偉そうである。
 表情もいつも険しくて、校内でガラの悪い学生たちでも従えていそうだ。
 ネクタイの色とカッターシャツの胸ポケットに施された校章の刺繍糸の色が緑色で――1~3年生はそれぞれ臙脂・緑・紺と色が決まっていて、3年生の卒業後は次に入学する1年生がその3年生のカラーを身につける形で順繰りしている――自分よりも年上なのだと解ると偉そうなのは当然だと納得できた。
 いや、従えそうということではなく、偉そう、という点にだけだ。会話した事もないのに人間像はその像のようにある姿だけだ。


 私も調べものをしたり読書をしたりと図書室をよく利用していたから、その席が視界の端に入る位置を選んで、勉強に息詰まれば彼の存在を確かめたりどんな本を読んでいるのか盗み見たりと、一方的な顔なじみになった。
 確かに目は細まっているし眉間にはしわが寄っていていつも難しい顔付きをしているから、声は掛け辛い。周囲も囁きはするが、彼の事は目に入れないように細心の注意を払っているようだった。視界に入れば射殺される噂もある。少女漫画ならそれは恋に落ちたということではないのだろうか。
 時たま彼を探しに来る琥珀色の縁眼鏡をかけたテンションが少し高めの先輩――名前は知らないので眼鏡先輩と心の中で呼ぶことにした――は何の気無しに話しかけて、図書室だから静かにしろと注意されて、を繰り返している。
 別に一匹オオカミを気取っているわけでもないようで、慕われてもいるらしい姿をみると、図書室ではあるもののクスリと笑いそうになった。
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