巨大生物現出災害事案

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傷跡

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 ((・・・現場からの中継が繋がりました。橋口さん!・・・(はい!謎の巨大生物上陸から一夜明けたここ平塚市では自衛隊による救助活動が懸命に行われています。巨大生物が通過した地域の一部では、火災が発生しており地元消防が消火にあたっています。また避難所の開設に伴い、各地で炊き出しが始まりました!尚、日本赤十字社によりますと被災者の治療に使用する血液が不足しているとのことで全国で献血を呼び掛けています。そして・・・))


((杉山官房長官の会見が始まった模様です!・・・(昨夜、神奈川県平塚市に上陸した巨大生物の動向についてですが、自衛隊監視の下、午前5時46分。相模湾に潜航しました。同57分。護衛艦及び潜水艦のソナーから巨大生物は姿を消しました。政府としましては、自衛隊に害獣駆除命令を引き続き下令。捜索及び上陸阻止、可能であれば殺処分を行うよう、先程、厳命致しました。尚、神奈川県の災害復興についてですが、本日午後3時をもちまして、臨時の、巨大生物に係る災害復興特別支援法を施行致します。この支援法におきまして・・・))


 飯山はそこで携帯のワンセグ機能を切った。中村も画面を凝視していたが切ったのを見、視線を車窓に移す。彼らは官邸に呼ばれていたが状況が変わり、行き先を武山駐屯地に変更されていた。そして、着くなりそれぞれの迷彩服とブーツ。その他装具を支給され、自分の身は自分で守れと言わんばかりに64式小銃と、実弾入りの弾倉を渡された。


その後、正門近くに待機していた特殊武器防護隊の面々と共に平塚市の海岸線に向かっていた。二人とも軽装甲機動者の後部座席に座り、外の光景に息を呑んでいた。装甲車等5台で構成された車列は無論、被害地域を避け、交通規制が敷かれた幹線道路を走っていた。しかし数キロ横は瓦礫の街と化しており、飯山は初級幹部時代に経験した災害派遣時の記憶がよみがえってきていた。


幹部候補生学校を卒業し2年。まだ部隊で新米同然だった頃、豪雨による災害派遣に駆り出された。土砂崩れにより全壊した住宅からの人命救助任務。一人が取り残されたとの情報から、飯山は小隊を指揮し懸命に土砂をかき分けた。だが止むことのない滝のような雨に何度も捜索中止を余儀なくされ、開始から3日半。誰しもが奇跡の生還を望んだ。しかし、泣き崩れる家族の横に腐敗が進んだ亡骸を届けるという形で、任務は終了した。

飯山は悔し涙を流しつつ現場から撤収。その過去がフラッシュバックし、首を軽く横に振った。


中村は一瞬その行動に首を傾げる。彼は戦闘機パイロットだったため、災害派遣を経験したことがなかったのだ。震度3以上の地震が起きた場合、自衛隊は直ちに付近の情報収集を開始する。その際中村は何度か、被害が予測される地域の上空を飛んだことはあったが、間近で現場を見るのはこれが初めてだった。


「中村。何を感じる?」


エンジン音が響く車内で飯山が唐突に問い掛けてきた。その内容に前の席に座っていた自衛官が少し振りむいたがすぐ視線を戻す。中村は彼らと少し目を合わせ、ずらしつつ、


「理不尽だと感じました。」


ありきたりな答えだなと自分を責めたが、その言葉しか出てこなかった。


「ただ、そこに平和に過ごしているだけなのに。自然というか、その摂理って、残酷ですね。抗えない。」


中村はそう続けた。車内に沈黙が広がる。


「いつもはな。地震だとか、豪雨だとか。その怒りをあてる所がない。それしか経験してないんだよな。しかし今回は違う。当たるべき元凶がいる。これが戦争の源だと考えるとすげぇ怖いけどな。」


飯山は外を見つつ口を開く。それを聞き運転している陸曹が小さく何度も頷いていた。


「奴が何者で、どうすれば倒せるのか。命令元からは忙しいからか何も来てないが、この移動のさせかたを見ると明らかだ。やるしかない。」


飯山は続けるようにして、自分に言い聞かせる意味も含めて言った。それを聞き中村は静かに返事を返す。


(全車。こちら指揮車。間もなく調査該当地域に到着する。先遣分隊より現場は多量の放射能に汚染されてるとのこと。一時安全圏にて各人防護処置。確認後前進する。防護処置実施場所については後にて示す。終わり。)


その会話から少しして無線機から指示が飛んできた。今回の特殊武器防護隊を指揮する和山一佐の声に、助手席に座っていた士長が素早く返答をした。数分後、他の隊員から場所の指示を示す無線が届く。そして車列は指示されたコンビニの駐車場に停車。飯山と中村は防護服を手渡されそれぞれ着込み始めた。








「一体どういうことですか!全てお話しして頂きたい!」


巨大生物が去り一通りの作業を終えた岡山総理は執務室で、アメリカ大統領に電話で迫っていた。


「あの生物が放射能を帯びていることは知っていたんじゃないんですか?」


通訳が和やかに話すのをよそ目に、岡山は怒り狂っていた。


(まぁ落ち着きたまえ。私とて事を荒立てたくないから、日本海で全てを終わらそうとしたんだよ。それなのに君が早く島の使用許可を出さないから今回の惨事が起きた。違うかね?君は大人しく私に従ってればいいんだ。)


大統領の、終始落ち着きのある物言いに奥歯を噛みしめる。そして、返ってくる内容についても相変わらず自分勝手であった。しかし岡山はすぐに言い返すことが出来なかった。自分が早く無人島の使用許可を出していれば被る事のなかった被害だったと、ここで初めて気が付いたからだ。


(まぁ、済んだことを言っても始まらない。岡山。これからだよ。我々とて無害だったという訳ではない。厚木基地を攻撃された。これは当然我が国からしたら報復出来る権利が生じる。既に後任の在日米軍司令官をそちらに飛ばした。私の好きな狂犬タイプでね。一昨日までワシントンにいた優秀な人材だ。可愛がってくれ。)


そう言い残し、大統領は一方的に電話を切った。直後、岡山は卓上にあった灰皿をおもむろに持ち、勢いよく床に投げつける。同時に渾身の怒り声をあげた。何も言い返せなかった自分に1番腹がたっていた。通訳をしていた女性はそれを見、呆然としている。


少ししてノック音の後、杉田官房長官が部屋に入ってきた。それと入れ替わるように通訳の女性は足早に退室していく。


「凄い声がして、入るのに躊躇しましたけど、大丈夫・・ですか?」


恐る恐る杉田は問い掛けた。岡山は軽く返事を返す。そして、我に返り灰皿を拾った。


「大統領は、俺が無人島の使用許可を出さなかったから今回の被害が出たと言ってきた。」


再びこみ上げてくる怒りを抑えつつ、そう説明した。杉田はそれを聞き、返答に詰まった。


「で、後任の米軍司令官が来るってことだから奴ら、太平洋かどっかであの生物を何とかするみたいだぞ。」


自分を落ち着かせるように深い溜息をついた後、そう続けた。


「米軍が、あの生物を駆除してくれるんですか?」


「駆除までは分からんが、軍を使うってことはそういうことかもしれんな。俺にはもうあの国が何をしたいのか分からん。」


杉田の問いに呆れ交じりで返す。


「と、なれば自衛隊に後方支援を言ってくるということは?」


「それはないだろ。言うならさっき言ってるよ。アメリカだけの手柄にしたいんじゃないか?他国に手柄の分け前を渡したくない。あの大統領が考えそうなことだ。」


自分の椅子に座り、煙草に火をつけながら杉田の問いに返した。杉田は声にならない声で返答する。


「それで?なんか俺に用があったんじゃないのか?」


「はい。放射能に関してなんですが公表はどうしますか?」


今1番に頭を悩ませていた課題に岡山は思わず唸った。


「今現在は、危険物質がある恐れがあるためという事で、立ち入りを禁じています。しかし汚染地域は破壊された地域だけではなく、その周囲にまで及んでいるため、被害がなかった地域の住民が調査の終了を待って、規制線の所に居座っています。」


報告書を見ながら杉田は続けた。


「汚染濃度は直ちに人体に影響を及ぼすレベルなのか?」


少し考えた後、問うた。


「それが、濃い所と微量の所が混在しており、現在の規制を解除すると制限が難しくなるのが現状なので、今の状態を保つことが現場的にはベストかと。」


代替案を出すのは無理だった。今の状態が限界だと分かり、思わず下唇を噛んだ。


「分かった。俺が会見を開く。用意を頼む。」


数分悩んだ末、そう決断し立ち上がった。



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