泣いた魔女と呪われた白鬼

大澤明菜

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魔女が生まれた日

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かつては、西洋では魔女や吸血鬼、日本には鬼やもののけが。

時代が進むにつれて、風習や文化、生活までもが変わると、人びとの記憶からはそういった存在が消えつつある。

むしろ、存在したのかさえ疑う時代になっていた。

確かに人外の存在は人々の恐怖心や信仰で生まれたものも多い。



では一一一一一ここで、時代を遡ってみるとしよう。










16世紀から17世紀にかけて、ドイツでは盛んに魔女狩りが行われていた。


特に貧困層や友達が少ない人、医者のようなことをしていた者達が魔女と疑われた。




今だから言えるが、当時は社会的に不安定で一一一少領邦の支配者による精神的耐性がなかったため、より激化したそうだ。


つまり、不安定すぎる社会に耐えられる精神があまりにも脆かった。



そんな中で悲しくも、魔女の疑いをかけられた女がいた。




彼女の身分は下でもない、だからといって上でもない。

店に行っても客として扱われ、平等に接してくれる、所謂、普通の人間であった。


仕事もちゃんとしていたし、毎日なんとか食べていけるくらいの稼ぎだった。


髪の毛も、しっかりとした毛質だし、きっちり結って油を塗れば艶もでる。古くはなっているがきちんとドレスも着ていた。

フリルや装飾は少ないのは、致し方ないが。



そんな彼女の仕事は、助産師だった。

若い女性には珍しい仕事ではあったが、祖母が産婆で、薬草にも詳しく、幼いころから知識があったからだ。


魔女狩りが頻繁に行われ、村中が魔女について過敏になっていた。


魔女は比較的、産婆や老女が多かったため、家族からも心配されていたのだ。


産婆をしていた祖母は人柄も良く、多少自分が損をしても他人に対して優しくしたいたため、人望は厚かった。

早い内に産婆も辞め、畑仕事で家にいた。


彼女も、村の魔女狩りが激しくなってきたため、そろそろ助産師を辞めようと考えていたのだ。

誰かが「あいつは魔女だ!」と言ってしまえば魔女狩り、そして魔女裁判まで行われる時代だ。




不幸な事に、彼女が最後の赤ん坊を取り上げた家で事件が起きてしまった。





赤ん坊の母体である女が急死してしまった。






一一一原因は、毒殺。





産後で悲鳴を上げていた母体は一一一韮白キュウハク(ニラの葉)に似た、水仙を誤食したことにより食中毒や接触皮膚炎を起こしたのだ。



なぜドイツの田舎にニラが?




助産師である彼女は、町で露店を広げた商人から外国産の珍しい薬草を譲ってもらった。

産後の女へ強壮作用のあるものを食べさせたかったのだ。


しかし、なぜ誤食したのか一一一?

見た目が韮白と水仙は似ているため、あまり目にしない商人は有毒植物である水仙を韮白として彼女に売ってしまったのだ。



水仙の入ったスープを飲んだ女は、わが子を産んでから一一一たった1時間で毒が巡り、そのまま死んでしまったのだ。



しかし、まだドイツには水仙が猛毒という認識がなく、この時代では水仙が原因とはわからなかった。








そして幸せの絶頂であった家の主人は妻の死を、助産師である彼女のせいにした。






極悪非道、人殺し、悪魔一一一一魔女!!!






怒り狂った主人は彼女を魔女として訴えた。


当然、証拠はないが彼女の町は貧困層であるため、自分達の身を守る方を優先する。





芽は、早い内に摘んでしまおう一一一。






彼女に下された判決はもちろん、









有罪。








火炙りの刑に処され、彼女の人生はおわってしまった...
















はずだった。





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