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百三話 VSアレス
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「今日の相手は俺だ。全力で来いよ?」今俺の目の前いいるのは戦の神アレスだ。昨日の晩御飯の際にどの曜日で誰が戦うのかの話し合いが行われた。今日はアレスで明日はナギサ。そのあとはテラーとツーフェイスのどちらかと戦うことになった。
「言われなくてもそうしますよ」腰から短剣を取り出して構える。二日酔いで手元がおぼつかないが向こうも同じだろう。
昨日は話し合いとは別に親睦会という名の飲み会が行われた。それは思い出したくない悲惨な出来事だ。だが一つ言えるのは誰かしらそこで尊厳を失くしたということだ。
「どうした?手が震えているじゃないか」かくいうアレスも足が震えているし、時折来る激しい頭痛に苦悶の表情を浮かべている。
昨日は樽を一人で二つも空にしたし、俺たちが飲んでいた酒よりも度数が高いものだったからな。それはそれは厳しいだろう。
「アレスさんも震えてますよ」短剣をぶん投げて先制を取る。今までの戦闘経験から分かることだが、神にはこの攻撃は効かない。それどころか意味がない。
でもそれは神界の話であって下界に降りたら有効な一撃になってくれるだろう。
ここは自分を高めるところ。自分が信じられることだけをがむしゃらにやればいい。
「気のせいだろ」アレスは軽々と飛んできた短剣を片手で地面に叩き落とした。そして落ちた短剣を魔法で浮かせ、俺に向かって射出した。
「神が酔うなんてあり得ないですよね」飛んできた短剣を餓狼で包んだ左手で受け止める。なんであんな芸当素手で出来るんだか。
「当たり前だろ」身を翻して左腕を突き出してきた。これは腕に仕込んだボウガンか魔法の可能性が高いってナギサが言ってたな。守りに徹底するのも悪くないが、ここは何があっても傷が付かない場所だ。喰らってもいいだろう。
ドヒュン!ボウガンに装填されていた矢が空気を切り裂いて向かってくる。俺でも視認できるくらいの速さだ。この程度なら避けられる,,,
「って、うおぉ!!」目の前で矢が爆散し、激しい閃光が視界を覆った。咄嗟に腕で目を守ったのが間違いだった。
「甘いな」そのことに気が付いていた時にはアレスは俺の目の前にいて、大剣を構えていた。
「そうかな?」餓狼を爆発させて後方に吹き飛ぶ。前までは自爆していたが、餓狼が無くなった瞬間に纏えばダメージが最小限に抑えられることが分かった。
「面白い動きだな。能力を爆発させているのか?ならこうするか」アレスはそういうと、手から小さな物を召喚した。
それは黒い檻で四方を囲んでいて上と下は魔方陣が刻まれている。読書をして知識を得ていたが、今回ばかりは何もわからない。ナギサの魔法は陣を見れば何を発動させるのかわかったんだが。
「ふっ!」バックステップを取って距離を取る。恐らくは能力封印か何かの類だろう。能力だったら心配ないが、スキル封じだったら負ける。俺の餓狼はスキルだし、最近使えるようになった索敵も同様だ。
「良い反応だな」笑いながら体を揺らし始める。右、左、ゆったりと動いていたそれは段々と速くなり残像を作りだした。
「くっ!」得体のしれない動きに俺はさらに距離を取る。後ろには壁があるからこれ以上は下がれない。だがアレスとの間合いは百メートル近くある。何か起きても対処は出来るはずだ。
右手に短剣をに、左手には小型の盾を構える。これは本を読んでいた時に見つけた攻守一体の構え。右からの攻撃は剣で対応し、左からの攻撃は縦で受け流すことができる。正面からは反応の速い方の手で捌く。
最もこれをやるには索敵スキルを習得していないといけない。それも範囲が五メートルは必要だ。だからこの構えを使うのは非効率だと戦闘の歴史の中で淘汰されていった。
それでも攻守の構えの基礎を学ぶという点では非常に優秀だ。どちらの方が反応が速いのか、力があるのかをすぐにわかる。
「その構え,,,俺を馬鹿にしているのか?」地面が爆発したかと思えば、目の前にアレスが迫ってきていた。片手には先程の檻が。もう片方は隠れていて見えない。暗器か魔法か、ボウガンなのか。
見当が付かないが捌けるように盾と剣を強く握り締める。
「それはもう死んだ」檻を地面に叩き落とした。檻はフェイク!本命はもう片方に隠している攻撃か。急いで盾を構えると同時に短剣を投擲する。右手がフリーになった今、カバーできるのは餓狼位だ。
「俺の手で殺すのは気が進まないな」左手から魔法が込められた矢が飛び出す。餓狼で軌道をずらして直撃を回避する。矢は俺の後ろにあった壁に突き刺さった。
バン!後ろから爆発音が聞こえる。さっきの矢は爆発の魔法が込められていたのか。今から盾で爆風を抑えるのは間に合わない。餓狼での回避も無理だ。ストックが無い。
「ガハッ!」爆風に巻き込まれて俺は全身に火傷を負うと同時に前方に吹き飛ばされる。地面の感触が痛いほどわかる。
「その構えは俺が考えた。お前も気が付いているんだろ?欠陥だらけだってことが」戦斧を上段に構える。その姿はまさに処刑人。罪を犯した人間を殺す斧。避けられない結末。
「その欠陥を俺が生かすんだよ!」確かにこの構えは大きな欠陥がある。一つはスキルが前提ということ。そして視覚の半分が盾で覆われてしまうこと。
だが、後者の欠陥は相手にも同じような効果を与えることができる。盾の裏で何をしていても悟られない。
「長々話してくれてありがとな!」~炎纏餓狼~
クールタイムが上がった餓狼に炎を纏わせてアレスに撃ちだす。向こうもこの攻撃は予想していなかったみたいだ。今までの経験と自身が編み出した構えに甘えていたな。
「!」驚いて態勢を崩したところを俺は逃さない。そのまま餓狼の火力で押し込んでいく。いくら戦の神といえど予想外、想定外の動きには硬直しざるを得ない。
短剣を餓狼で持ち上げ手に手繰り寄せる。隙が生まれないように時間差で餓狼を撃ち込んでいく。攻撃が当たってさえいれば餓狼は無限に発動させることができる。
剣を手繰り寄せることに成功した俺は剣に餓狼を纏わせて攻撃を強める。シールドバッシュで間合いを取り、生まれた距離を潰すように餓狼で仕掛ける。そして隙が生まれたところに短剣で攻撃をする。
今のところアレスは防戦一方。攻撃をしてくる気配がない。ジリジリと後方に下がっている。だが、何かがおかしい。カウンターを繰り出せる場面でもしない。魔法を使う様子もない。誘導されている様な気がしてたまらない。
「丁度発動するな」アレスがそう呟くと俺の周りが檻で囲まれていく。この黒い檻、、、さっき落とした小さな檻か。何かを封じ込めるのはほぼ百パーセント。スキルか、能力か。それとも他の何か。喰らうまでは分からない。違和感の正体はこれだったのか。
「次はもっと研鑽して挑むが良い」俺を囲っていた檻が赤く光輝く。余りの眩しさに目を瞑ってしまう。何が起こるんだ!?
ゆっくりと目を開けると目の前には巨大な水晶。乾ききった地面に突き刺さる無数の剣。そして今にも朽ちて崩れそうな看板が立っていた。
看板にはその水晶を剣で斬れというものと斬れなければ出れないという内容が書かれていた。水晶は見た感じ材質はガラスの様な物。恐らくは金剛石。この世界でも随一の硬さを誇る物質。これに傷をつけるには同等以上の硬さを誇る素材を用いらなければいけない。
アダマンタイトやオリハルコン。ベヒーモスの牙や金龍の爪等。でもここに刺さっている剣は鉄で作られた物しかない。自分の実力を上げるにはうってつけなのだろうが時間が分からないのは困るな。ナギサに怒られてしまう。
後は生理現象。魔法が封じられている以上は浄化魔法で消すことができない。空腹とか脱水とかも気になるな。
「ま、そうなる前に斬るしかないのか」地面に刺さっていた適当な剣を引き抜く。見た目は普通の剣。気になるところは錆が付いているってことくらいだ。
「はっ!」剣で水晶を斬ろうとするが傷一つ付かない。それどころか剣は耐久で負けてへし折れてしまった。これは先が長いな。
「剣も選んで行くか」錆付きの剣なんて使えたもんじゃない。あっちは金剛石で出来た塊だ。同等までとは言わないが、ある程度強度がある剣が欲しい。
「だけどこの剣の中から探すか,,,?」向こう百メートル先まである剣の群れから上等なのを選りすぐるのは文字通り日が暮れる。かといって低品質な剣を使えば無駄に体力を使ってしまう。
「ここ飛ばされたのは何か理由がありそうだな」アレスが意味もなくこんな空間に放り込むなんて考えられない。恐らくは剣の使い方を知ってほしいのだろう。俺が使った構えにも反応していたし。
だが、ここにあるのは俺がよく使う短剣じゃなくて大剣や太刀、レイピアとかだ。得意武器を増やすのも試練の内容だろうな。
「死ぬ前に脱出してやりますか」肩を回して剣を引き抜く。今回のは錆も無いし、光沢がある。
この空間に入って俺が出れたのは時間に換算して二時間。神界での時間の流れは遅く、この空間ではもっと遅く流れる。
「言われなくてもそうしますよ」腰から短剣を取り出して構える。二日酔いで手元がおぼつかないが向こうも同じだろう。
昨日は話し合いとは別に親睦会という名の飲み会が行われた。それは思い出したくない悲惨な出来事だ。だが一つ言えるのは誰かしらそこで尊厳を失くしたということだ。
「どうした?手が震えているじゃないか」かくいうアレスも足が震えているし、時折来る激しい頭痛に苦悶の表情を浮かべている。
昨日は樽を一人で二つも空にしたし、俺たちが飲んでいた酒よりも度数が高いものだったからな。それはそれは厳しいだろう。
「アレスさんも震えてますよ」短剣をぶん投げて先制を取る。今までの戦闘経験から分かることだが、神にはこの攻撃は効かない。それどころか意味がない。
でもそれは神界の話であって下界に降りたら有効な一撃になってくれるだろう。
ここは自分を高めるところ。自分が信じられることだけをがむしゃらにやればいい。
「気のせいだろ」アレスは軽々と飛んできた短剣を片手で地面に叩き落とした。そして落ちた短剣を魔法で浮かせ、俺に向かって射出した。
「神が酔うなんてあり得ないですよね」飛んできた短剣を餓狼で包んだ左手で受け止める。なんであんな芸当素手で出来るんだか。
「当たり前だろ」身を翻して左腕を突き出してきた。これは腕に仕込んだボウガンか魔法の可能性が高いってナギサが言ってたな。守りに徹底するのも悪くないが、ここは何があっても傷が付かない場所だ。喰らってもいいだろう。
ドヒュン!ボウガンに装填されていた矢が空気を切り裂いて向かってくる。俺でも視認できるくらいの速さだ。この程度なら避けられる,,,
「って、うおぉ!!」目の前で矢が爆散し、激しい閃光が視界を覆った。咄嗟に腕で目を守ったのが間違いだった。
「甘いな」そのことに気が付いていた時にはアレスは俺の目の前にいて、大剣を構えていた。
「そうかな?」餓狼を爆発させて後方に吹き飛ぶ。前までは自爆していたが、餓狼が無くなった瞬間に纏えばダメージが最小限に抑えられることが分かった。
「面白い動きだな。能力を爆発させているのか?ならこうするか」アレスはそういうと、手から小さな物を召喚した。
それは黒い檻で四方を囲んでいて上と下は魔方陣が刻まれている。読書をして知識を得ていたが、今回ばかりは何もわからない。ナギサの魔法は陣を見れば何を発動させるのかわかったんだが。
「ふっ!」バックステップを取って距離を取る。恐らくは能力封印か何かの類だろう。能力だったら心配ないが、スキル封じだったら負ける。俺の餓狼はスキルだし、最近使えるようになった索敵も同様だ。
「良い反応だな」笑いながら体を揺らし始める。右、左、ゆったりと動いていたそれは段々と速くなり残像を作りだした。
「くっ!」得体のしれない動きに俺はさらに距離を取る。後ろには壁があるからこれ以上は下がれない。だがアレスとの間合いは百メートル近くある。何か起きても対処は出来るはずだ。
右手に短剣をに、左手には小型の盾を構える。これは本を読んでいた時に見つけた攻守一体の構え。右からの攻撃は剣で対応し、左からの攻撃は縦で受け流すことができる。正面からは反応の速い方の手で捌く。
最もこれをやるには索敵スキルを習得していないといけない。それも範囲が五メートルは必要だ。だからこの構えを使うのは非効率だと戦闘の歴史の中で淘汰されていった。
それでも攻守の構えの基礎を学ぶという点では非常に優秀だ。どちらの方が反応が速いのか、力があるのかをすぐにわかる。
「その構え,,,俺を馬鹿にしているのか?」地面が爆発したかと思えば、目の前にアレスが迫ってきていた。片手には先程の檻が。もう片方は隠れていて見えない。暗器か魔法か、ボウガンなのか。
見当が付かないが捌けるように盾と剣を強く握り締める。
「それはもう死んだ」檻を地面に叩き落とした。檻はフェイク!本命はもう片方に隠している攻撃か。急いで盾を構えると同時に短剣を投擲する。右手がフリーになった今、カバーできるのは餓狼位だ。
「俺の手で殺すのは気が進まないな」左手から魔法が込められた矢が飛び出す。餓狼で軌道をずらして直撃を回避する。矢は俺の後ろにあった壁に突き刺さった。
バン!後ろから爆発音が聞こえる。さっきの矢は爆発の魔法が込められていたのか。今から盾で爆風を抑えるのは間に合わない。餓狼での回避も無理だ。ストックが無い。
「ガハッ!」爆風に巻き込まれて俺は全身に火傷を負うと同時に前方に吹き飛ばされる。地面の感触が痛いほどわかる。
「その構えは俺が考えた。お前も気が付いているんだろ?欠陥だらけだってことが」戦斧を上段に構える。その姿はまさに処刑人。罪を犯した人間を殺す斧。避けられない結末。
「その欠陥を俺が生かすんだよ!」確かにこの構えは大きな欠陥がある。一つはスキルが前提ということ。そして視覚の半分が盾で覆われてしまうこと。
だが、後者の欠陥は相手にも同じような効果を与えることができる。盾の裏で何をしていても悟られない。
「長々話してくれてありがとな!」~炎纏餓狼~
クールタイムが上がった餓狼に炎を纏わせてアレスに撃ちだす。向こうもこの攻撃は予想していなかったみたいだ。今までの経験と自身が編み出した構えに甘えていたな。
「!」驚いて態勢を崩したところを俺は逃さない。そのまま餓狼の火力で押し込んでいく。いくら戦の神といえど予想外、想定外の動きには硬直しざるを得ない。
短剣を餓狼で持ち上げ手に手繰り寄せる。隙が生まれないように時間差で餓狼を撃ち込んでいく。攻撃が当たってさえいれば餓狼は無限に発動させることができる。
剣を手繰り寄せることに成功した俺は剣に餓狼を纏わせて攻撃を強める。シールドバッシュで間合いを取り、生まれた距離を潰すように餓狼で仕掛ける。そして隙が生まれたところに短剣で攻撃をする。
今のところアレスは防戦一方。攻撃をしてくる気配がない。ジリジリと後方に下がっている。だが、何かがおかしい。カウンターを繰り出せる場面でもしない。魔法を使う様子もない。誘導されている様な気がしてたまらない。
「丁度発動するな」アレスがそう呟くと俺の周りが檻で囲まれていく。この黒い檻、、、さっき落とした小さな檻か。何かを封じ込めるのはほぼ百パーセント。スキルか、能力か。それとも他の何か。喰らうまでは分からない。違和感の正体はこれだったのか。
「次はもっと研鑽して挑むが良い」俺を囲っていた檻が赤く光輝く。余りの眩しさに目を瞑ってしまう。何が起こるんだ!?
ゆっくりと目を開けると目の前には巨大な水晶。乾ききった地面に突き刺さる無数の剣。そして今にも朽ちて崩れそうな看板が立っていた。
看板にはその水晶を剣で斬れというものと斬れなければ出れないという内容が書かれていた。水晶は見た感じ材質はガラスの様な物。恐らくは金剛石。この世界でも随一の硬さを誇る物質。これに傷をつけるには同等以上の硬さを誇る素材を用いらなければいけない。
アダマンタイトやオリハルコン。ベヒーモスの牙や金龍の爪等。でもここに刺さっている剣は鉄で作られた物しかない。自分の実力を上げるにはうってつけなのだろうが時間が分からないのは困るな。ナギサに怒られてしまう。
後は生理現象。魔法が封じられている以上は浄化魔法で消すことができない。空腹とか脱水とかも気になるな。
「ま、そうなる前に斬るしかないのか」地面に刺さっていた適当な剣を引き抜く。見た目は普通の剣。気になるところは錆が付いているってことくらいだ。
「はっ!」剣で水晶を斬ろうとするが傷一つ付かない。それどころか剣は耐久で負けてへし折れてしまった。これは先が長いな。
「剣も選んで行くか」錆付きの剣なんて使えたもんじゃない。あっちは金剛石で出来た塊だ。同等までとは言わないが、ある程度強度がある剣が欲しい。
「だけどこの剣の中から探すか,,,?」向こう百メートル先まである剣の群れから上等なのを選りすぐるのは文字通り日が暮れる。かといって低品質な剣を使えば無駄に体力を使ってしまう。
「ここ飛ばされたのは何か理由がありそうだな」アレスが意味もなくこんな空間に放り込むなんて考えられない。恐らくは剣の使い方を知ってほしいのだろう。俺が使った構えにも反応していたし。
だが、ここにあるのは俺がよく使う短剣じゃなくて大剣や太刀、レイピアとかだ。得意武器を増やすのも試練の内容だろうな。
「死ぬ前に脱出してやりますか」肩を回して剣を引き抜く。今回のは錆も無いし、光沢がある。
この空間に入って俺が出れたのは時間に換算して二時間。神界での時間の流れは遅く、この空間ではもっと遅く流れる。
応援ありがとうございます!
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