32 / 35
第4章 囚われの姫
32. 発掘屋
しおりを挟む
大学構内の広場。魔法陣の淡い光に照らされながら、銀髪のエルフ――リリエルは無力な姿で結界に囚われたままだった。
光り輝く魔法の鎖が、彼女の身体を縛り付けている。
気を失うリリエルに向かって、一人の男がゆっくりと歩み寄っていた。無骨なブーツの足音が、静かに周囲に響く。
「こういうのは趣味じゃないが、俺たちも仕事じゃんよ。……悪く思うな。」
男が低い声で言い放ちながら、リリエルを囲っている結界に手を伸ばす。その指先が光の壁に触れようとした、その瞬間のことだ。
「“理の介さず綴る筆・拘束する鎖”!!」
突然、どこからともなく飛んできたインクの鎖が、男の腕に絡みつく。腕を縛られた男は、一瞬動きを止めた。
「お前が“発掘屋”の長男、ライムント・モールだな。」
冷静な黒薙の声が響き渡ると、ライムントはゆっくりと彼女の方へと振り返った。
その顔立ちはニクラスやカスパーに似ているが、その肩には人間離れした大きさの棍棒――いや、“ドリル”が担がれていた。
鈍い回転刃が、重く光を反射している。
「……足止めしとけって言ったのに、あいつら、しくじってるじゃんよ。」
ライムントはため息交じりに呟くと、その視線を黒薙に向けた。その目には、明らかな殺意に満ちていた。
「ま、特に支障はないか。」
その言葉とともに、ライムントは獣のような勢いで黒薙に飛びかかる。
ドリルが低く唸りを上げながら激しく回転を始めると、黒薙のインクの鎖を容易く引きちぎった。
地面を抉りながら回転するドリルが、黒薙へと迫る。
『水よ、我を包む壁となれ、“流水の防壁”!!』
叩きつけられたドリルは、寸前で黒薙の前面に現れた水流によって衝撃を受け流された。そのまま地面に深い傷跡を残して逸れていく。
「ちっ……!」
ライムントが苛立ちを漏らす間、黒薙は素早く後方へと下がる。そこにはフェリエッタが、杖を構えて控えていた。
「黒薙さん!大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。しかし――」
黒薙の声に、緊張が滲む。
ドリルを地面から引き抜いたライムントは、素早く付着した水滴を払うようにドリルを薙ぎ払うと、その回転は再び加速し始めた。
「やるじゃんよ、お前さんたち。」
ライムントは薄く笑みを浮かべると、まるで獲物を狩る猛獣のように身を屈めた。
「でも、次で終わらせるじゃんよ。」
しかし、その言葉が言い終わる前に、ライムントの行く手を阻むように一枚の札が飛んできた。
「……くそっ。今度はなにじゃんよ?」
即座に反応したライムントは、煩わしそうにドリルで札を弾く。
「まさか……!」
突然飛んできた札に驚いたフェリエッタたちが顔を向けると、そこにはこちらに駆け寄ってくる笹平の姿があった。
「さ、笹平さん!」
「待たせたな、フェリエッタ、黒薙。協力して奴を止めるぞ!」
奥からやってきた笹平が、彼女たちの隣に並び立つ。その様子を、ライムントは忌々しそうに見ていたのだった。
「全く、あの光の壁も壊さないといけないってのに、これ以上増えても面倒だけじゃんよ。……仕方ないが、コレ、使うか。」
ライムントはドリルを肩に担ぎ直すと、よれよれのシャツのポケットから複雑な紋様が刻まれた透明な翠緑色の球を取り出す。
翆緑色の球を地面に落とすと、ライムントはブーツの踵で踏みつぶした。
パリンッ――
粉々に砕け散った球の破片が、近くにある地面やコンクリートを吸収しながら再生していく。やがて、それは隆起するように巨大な人型へ姿を変えた。
――ゴゴゴゴゴ……!!
地中から湧き上がるような轟音と共に、緑の目を光らせる岩石の巨人が姿を現す。
「ゴーレムだ。……ま、せいぜい頑張りなじゃんよ。」
ライムントは冷たく笑みを浮かべると、一歩後ろへと下がった。
彼がリリエルの方へと向かいだしたのを見て、黒薙は慌ててその後を追いかけようと大きく足を踏み出す。
「待て、ライムント・モール!!」
だが、彼女の行く手を阻むように、ゴーレムの腕が振り上げられた。
――ドゴォォォン!
地響きが鳴り響き、巨大な拳が地面を激しく叩きつける。
間一髪でゴーレムの攻撃を避けた黒薙は、素早く起き上がると手に持っていた万年筆をゴーレムに向けた。
「“拘束する鎖”!」
万年筆のペン先から放たれたインクの鎖は、拳を地面に打ち付けたままのゴーレムに瞬時に巻き付くと、その身体を強力に縛りつけた。
黒薙が後ろにいる笹平に振り返る。
「笹平さん!」
「任せろ、黒薙!!」
笹平が、懐から一枚の札を取り出す。そして、勢いよくゴーレムへと投げつけると、札はゴーレムの胴体部分にピタリと貼りついた。
「押捺『氷』!」
印を結ぶ笹平の声に呼応するように、札に刻まれていた文字が青白く光り始めた。次第にゴーレムの体表に氷が広がり、その全身を覆っていく。
冷たい結晶が成長すると、ついには巨人の動きを封じ込める。
「わ、私が追いかけます!」
その隙を突いて、フェリエッタは駆け出した。
「フェリエッタさん、駄目です!あなたの力では……!」
焦った黒薙の声が周囲に響く。しかし、その言葉はゴーレムの身体から発せられた不穏な音によってかき消されてしまった。
――バリバリッ!
ゴーレムを覆っていた氷に無数の亀裂が走り、その断片が砕け散る。ゴーレムは再びその巨体を動かし始め、黒薙と笹平の前に立ちはだかった。
「こいつ、思った以上にしぶといな……!」
笹平が苦々しく呟きながら身を構えると、黒薙も手にした万年筆を握り直しながらゴーレムと対峙する。
その目の前で、フェリエッタの姿は徐々に遠ざかっていたのだった。
結界に囚われているリリエルの前に立ったライムントは、片手に担いでいた巨大なドリルと持ち上げるとゆっくりと結界に押し当てる。
その先端が結界の障壁に触れると、ドリルは赤く発熱しながら高速回転を始めた。
「や、やめて下さい!!」
後ろから聞こえた声に、ライムントは僅かに振り返る。そこには、追いついたフェリエッタが息を切らしながら立っていた
それを見たライムントは、面倒くさそうに眉をひそめる。
「はぁ、また俺の邪魔するじゃんよ。」
「そ、その人をどうするつもりなんですか……?」
フェリエッタの視線は、結界の中に力なく倒れているリリエルに向けられていた。その問いに、ライムントは口元を歪ませる。
「決まってるじゃんよ、売るんだ。事情は知らないが、こいつを高く買うって奴がいる。コレが手に入れれば、良い商売になるじゃんよ。」
ライムントの言葉はあまりにも軽々しく、無情だった。彼の無頓着の態度に、フェリエッタの表情はみるみる青ざめていく。
「売る……?そ、そんなこと間違ってます!誰かを売るなんて、そんな――」
「どうしてじゃんよ?」
ライムントはドリルを軽く肩に担ぐと、反論するフェリエッタを嘲笑するかのように問いかける。その飄々とした態度に、彼女は思わず唖然とした。
「……え?」
「俺たちは、ただの“発掘屋”だ。宝を掘り出して、価値をつけて、それを欲しがる奴に渡す。それだけのことじゃんよ。それの何か問題がある?」
「けど、あれは物じゃありません。そんなのが許されるはずが――」
「はっ、それは綺麗事じゃんよ。」
彼の鼻笑いが、フェリエッタの言葉を遮る。
「世界は、そうやっては回ってはいない。金が欲しい奴、力が欲しい奴、欲を満たしたい奴、そういう奴らがいる限り、俺たちは需要に応え続けるだけだ。」
そう語るライムントの眼には冷酷な光が宿り、その笑みに一切の躊躇は無い。
「それに、手前さんらもこいつらを道具とやらと呼んで、好き勝手してるじゃんよ。その行為と何が違う?」
「そ、それは……」
彼の一言に、フェリエッタは言葉を詰まらせた。その的を射ているようで、同時にねじ曲がった論理が彼女の心をかき乱す。
「……もし嫌なら、力づくで止めてみろじゃんよ。」
ライムントが口角を釣りあげながら低く言うと、ドリルを構えた。その先端の軌跡が、低い振動音とともに、フェリエッタに迫りくる。
『ロ、“流水の防壁”!!』
フェリエッタは反射的に杖を掲げると、水流が渦巻いて彼女を守る。その壁は、ドリルの一撃を横へと受け流すと、激しい水滴が辺りに拡散した。
「それは、さっき見たじゃんよ!」
彼は即座にドリルを逆回転させると、その勢いを利用して横薙ぎの一撃を繰り出した。水流の壁はその破壊力に打ち壊されてしまう。
「んぐっ……!」
ドリルの回転力による衝撃波が、フェリエッタの身体を容赦なく吹き飛ばす。地面に叩きつけられる彼女の姿を目にした黒薙が、遠くで思わず叫んだ。
「フェリエッタさん!!」
助けに走ろうとする黒薙だったが、前に立ち塞がったゴーレムが阻む。巨体を目の前に彼女は、フェリエッタの危機にただ見守るしかできなかった。
その間にも、フェリエッタは何とか杖を握り直し、立ち上がろうとしていた。
だが、ライムントはその動きを見逃さない。
「これで終わりじゃんよ。」
ライムントが再び巨大なドリルを振り上げると、最高潮に達した回転が激しい唸り声を上げながら彼女に迫る。
絶体絶命のピンチに、フェリエッタが身体を硬直させた――その時だった。
「”恙緋一閃”!」
緋色の閃光が、彼らの間に割って入る。鋭い一太刀の刃が、ライムントのドリルと激突すると、激しい火花をまき散らす。
「なっ……!」
「人にそんなものを振り回すなんて、変わらず無粋だな。……ライムント・モール。」
そこに立っていたのは、黒いスーツを身に纏った見覚えのない一人の青年だった。
光り輝く魔法の鎖が、彼女の身体を縛り付けている。
気を失うリリエルに向かって、一人の男がゆっくりと歩み寄っていた。無骨なブーツの足音が、静かに周囲に響く。
「こういうのは趣味じゃないが、俺たちも仕事じゃんよ。……悪く思うな。」
男が低い声で言い放ちながら、リリエルを囲っている結界に手を伸ばす。その指先が光の壁に触れようとした、その瞬間のことだ。
「“理の介さず綴る筆・拘束する鎖”!!」
突然、どこからともなく飛んできたインクの鎖が、男の腕に絡みつく。腕を縛られた男は、一瞬動きを止めた。
「お前が“発掘屋”の長男、ライムント・モールだな。」
冷静な黒薙の声が響き渡ると、ライムントはゆっくりと彼女の方へと振り返った。
その顔立ちはニクラスやカスパーに似ているが、その肩には人間離れした大きさの棍棒――いや、“ドリル”が担がれていた。
鈍い回転刃が、重く光を反射している。
「……足止めしとけって言ったのに、あいつら、しくじってるじゃんよ。」
ライムントはため息交じりに呟くと、その視線を黒薙に向けた。その目には、明らかな殺意に満ちていた。
「ま、特に支障はないか。」
その言葉とともに、ライムントは獣のような勢いで黒薙に飛びかかる。
ドリルが低く唸りを上げながら激しく回転を始めると、黒薙のインクの鎖を容易く引きちぎった。
地面を抉りながら回転するドリルが、黒薙へと迫る。
『水よ、我を包む壁となれ、“流水の防壁”!!』
叩きつけられたドリルは、寸前で黒薙の前面に現れた水流によって衝撃を受け流された。そのまま地面に深い傷跡を残して逸れていく。
「ちっ……!」
ライムントが苛立ちを漏らす間、黒薙は素早く後方へと下がる。そこにはフェリエッタが、杖を構えて控えていた。
「黒薙さん!大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。しかし――」
黒薙の声に、緊張が滲む。
ドリルを地面から引き抜いたライムントは、素早く付着した水滴を払うようにドリルを薙ぎ払うと、その回転は再び加速し始めた。
「やるじゃんよ、お前さんたち。」
ライムントは薄く笑みを浮かべると、まるで獲物を狩る猛獣のように身を屈めた。
「でも、次で終わらせるじゃんよ。」
しかし、その言葉が言い終わる前に、ライムントの行く手を阻むように一枚の札が飛んできた。
「……くそっ。今度はなにじゃんよ?」
即座に反応したライムントは、煩わしそうにドリルで札を弾く。
「まさか……!」
突然飛んできた札に驚いたフェリエッタたちが顔を向けると、そこにはこちらに駆け寄ってくる笹平の姿があった。
「さ、笹平さん!」
「待たせたな、フェリエッタ、黒薙。協力して奴を止めるぞ!」
奥からやってきた笹平が、彼女たちの隣に並び立つ。その様子を、ライムントは忌々しそうに見ていたのだった。
「全く、あの光の壁も壊さないといけないってのに、これ以上増えても面倒だけじゃんよ。……仕方ないが、コレ、使うか。」
ライムントはドリルを肩に担ぎ直すと、よれよれのシャツのポケットから複雑な紋様が刻まれた透明な翠緑色の球を取り出す。
翆緑色の球を地面に落とすと、ライムントはブーツの踵で踏みつぶした。
パリンッ――
粉々に砕け散った球の破片が、近くにある地面やコンクリートを吸収しながら再生していく。やがて、それは隆起するように巨大な人型へ姿を変えた。
――ゴゴゴゴゴ……!!
地中から湧き上がるような轟音と共に、緑の目を光らせる岩石の巨人が姿を現す。
「ゴーレムだ。……ま、せいぜい頑張りなじゃんよ。」
ライムントは冷たく笑みを浮かべると、一歩後ろへと下がった。
彼がリリエルの方へと向かいだしたのを見て、黒薙は慌ててその後を追いかけようと大きく足を踏み出す。
「待て、ライムント・モール!!」
だが、彼女の行く手を阻むように、ゴーレムの腕が振り上げられた。
――ドゴォォォン!
地響きが鳴り響き、巨大な拳が地面を激しく叩きつける。
間一髪でゴーレムの攻撃を避けた黒薙は、素早く起き上がると手に持っていた万年筆をゴーレムに向けた。
「“拘束する鎖”!」
万年筆のペン先から放たれたインクの鎖は、拳を地面に打ち付けたままのゴーレムに瞬時に巻き付くと、その身体を強力に縛りつけた。
黒薙が後ろにいる笹平に振り返る。
「笹平さん!」
「任せろ、黒薙!!」
笹平が、懐から一枚の札を取り出す。そして、勢いよくゴーレムへと投げつけると、札はゴーレムの胴体部分にピタリと貼りついた。
「押捺『氷』!」
印を結ぶ笹平の声に呼応するように、札に刻まれていた文字が青白く光り始めた。次第にゴーレムの体表に氷が広がり、その全身を覆っていく。
冷たい結晶が成長すると、ついには巨人の動きを封じ込める。
「わ、私が追いかけます!」
その隙を突いて、フェリエッタは駆け出した。
「フェリエッタさん、駄目です!あなたの力では……!」
焦った黒薙の声が周囲に響く。しかし、その言葉はゴーレムの身体から発せられた不穏な音によってかき消されてしまった。
――バリバリッ!
ゴーレムを覆っていた氷に無数の亀裂が走り、その断片が砕け散る。ゴーレムは再びその巨体を動かし始め、黒薙と笹平の前に立ちはだかった。
「こいつ、思った以上にしぶといな……!」
笹平が苦々しく呟きながら身を構えると、黒薙も手にした万年筆を握り直しながらゴーレムと対峙する。
その目の前で、フェリエッタの姿は徐々に遠ざかっていたのだった。
結界に囚われているリリエルの前に立ったライムントは、片手に担いでいた巨大なドリルと持ち上げるとゆっくりと結界に押し当てる。
その先端が結界の障壁に触れると、ドリルは赤く発熱しながら高速回転を始めた。
「や、やめて下さい!!」
後ろから聞こえた声に、ライムントは僅かに振り返る。そこには、追いついたフェリエッタが息を切らしながら立っていた
それを見たライムントは、面倒くさそうに眉をひそめる。
「はぁ、また俺の邪魔するじゃんよ。」
「そ、その人をどうするつもりなんですか……?」
フェリエッタの視線は、結界の中に力なく倒れているリリエルに向けられていた。その問いに、ライムントは口元を歪ませる。
「決まってるじゃんよ、売るんだ。事情は知らないが、こいつを高く買うって奴がいる。コレが手に入れれば、良い商売になるじゃんよ。」
ライムントの言葉はあまりにも軽々しく、無情だった。彼の無頓着の態度に、フェリエッタの表情はみるみる青ざめていく。
「売る……?そ、そんなこと間違ってます!誰かを売るなんて、そんな――」
「どうしてじゃんよ?」
ライムントはドリルを軽く肩に担ぐと、反論するフェリエッタを嘲笑するかのように問いかける。その飄々とした態度に、彼女は思わず唖然とした。
「……え?」
「俺たちは、ただの“発掘屋”だ。宝を掘り出して、価値をつけて、それを欲しがる奴に渡す。それだけのことじゃんよ。それの何か問題がある?」
「けど、あれは物じゃありません。そんなのが許されるはずが――」
「はっ、それは綺麗事じゃんよ。」
彼の鼻笑いが、フェリエッタの言葉を遮る。
「世界は、そうやっては回ってはいない。金が欲しい奴、力が欲しい奴、欲を満たしたい奴、そういう奴らがいる限り、俺たちは需要に応え続けるだけだ。」
そう語るライムントの眼には冷酷な光が宿り、その笑みに一切の躊躇は無い。
「それに、手前さんらもこいつらを道具とやらと呼んで、好き勝手してるじゃんよ。その行為と何が違う?」
「そ、それは……」
彼の一言に、フェリエッタは言葉を詰まらせた。その的を射ているようで、同時にねじ曲がった論理が彼女の心をかき乱す。
「……もし嫌なら、力づくで止めてみろじゃんよ。」
ライムントが口角を釣りあげながら低く言うと、ドリルを構えた。その先端の軌跡が、低い振動音とともに、フェリエッタに迫りくる。
『ロ、“流水の防壁”!!』
フェリエッタは反射的に杖を掲げると、水流が渦巻いて彼女を守る。その壁は、ドリルの一撃を横へと受け流すと、激しい水滴が辺りに拡散した。
「それは、さっき見たじゃんよ!」
彼は即座にドリルを逆回転させると、その勢いを利用して横薙ぎの一撃を繰り出した。水流の壁はその破壊力に打ち壊されてしまう。
「んぐっ……!」
ドリルの回転力による衝撃波が、フェリエッタの身体を容赦なく吹き飛ばす。地面に叩きつけられる彼女の姿を目にした黒薙が、遠くで思わず叫んだ。
「フェリエッタさん!!」
助けに走ろうとする黒薙だったが、前に立ち塞がったゴーレムが阻む。巨体を目の前に彼女は、フェリエッタの危機にただ見守るしかできなかった。
その間にも、フェリエッタは何とか杖を握り直し、立ち上がろうとしていた。
だが、ライムントはその動きを見逃さない。
「これで終わりじゃんよ。」
ライムントが再び巨大なドリルを振り上げると、最高潮に達した回転が激しい唸り声を上げながら彼女に迫る。
絶体絶命のピンチに、フェリエッタが身体を硬直させた――その時だった。
「”恙緋一閃”!」
緋色の閃光が、彼らの間に割って入る。鋭い一太刀の刃が、ライムントのドリルと激突すると、激しい火花をまき散らす。
「なっ……!」
「人にそんなものを振り回すなんて、変わらず無粋だな。……ライムント・モール。」
そこに立っていたのは、黒いスーツを身に纏った見覚えのない一人の青年だった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる